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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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38.絶対譲りたくない順番。

佐助にウッドデッキの上にクーラーボックスを置いてもらい肉を取り出した。


「最初は、塩タンが食べたいです。絶対食べたいです、お願いします」


準備万端の炭と網、椅子。テーブルに一人分ずつの皿と箸を用意する才蔵と、テーブルの紙コップにお茶を注いでいた佐助。手際の良い2人に感心しつつ頭を下げた。


「物凄く楽しみなのね。どうぞ」


燐の言葉に苦笑しながら答える佐助と同意するように頷く才蔵を見て燐は肉を網に乗せた。


「ふふふ」


油が落ちると炭が小さく爆ぜる。網の上の塩タンを見ながら小さく声が漏れている燐を忍2人は静かに見守る。


≪なんていうか、良かったな≫


幸せそうな燐の様子をする事の無くなった二人は何と無しに見ていた。


≪此程に喜ばれるとは≫


よし、火は通った。焼き加減は人それぞれだけどこの位で私は食べたい。


「もう良いと思うんだ、ガッツリ焼きたい派の人いますか?」


特に何も言わない2人。燐はトングで肉を挟むと最初は功労者からだろうと黒を見た。


「はい、どうぞー」


「いえ俺は」


忍を自分と同じく扱う燐の行動に未だ慣れない才蔵は戸惑いながら断る。


「この中で一番アンタが食べたいんだから食べなよ」


戸惑う才蔵に苦笑しながら佐助が燐に答えると同意なのか才蔵も頷く。


「そういう訳には行かないよ。肉ゲットした功労者が先。ちゃんと3人分焼いてるから、はい」


3人分あるからと手を伸ばしたままの燐に才蔵は皿を出した。


「はい、次」


「アンタがどうぞ」


次は佐助と肉を差し出すも佐助は素っ気無く返して来る。


「重い物持ってくれたんだから、功労者でしょ。ほら皿出しなよ」


さっさと出せと佐助の方へ肉を差し出すも、佐助は皿を手元から動かさずに顔を顰める。


「何で俺の名は呼んでくんないのさ」


「え?あ、佐助様。お皿寄越してください」


拗ねたような口調で眉を寄せている姿に、そう言えばさっき言われたわと名を呼ぶ。


「佐助」


赤は気に入らなかったのか皿を出さず「佐助」と再度言いながらこちらを見る。


「はいはい、佐助。これで良い?」


「投げやり」


炭の上で手を伸ばしていれば、徐々に腕も熱くなって来たと燐は顔を顰めた。


「だって私の肉、焦げちゃうもん。ほら皿出してよ佐助」


焦げると顔を顰めていた燐から渡された肉を受けとると、燐は満面の笑みで自分の分を皿に移した。


「いただきます。…うっま」


手を合わせた燐に倣って軽く頭を下げた二人は、心からの燐の呟きに頷いた。


「ん。旨い」


同意しつつ佐助は無言の才蔵が忍び如きがと駄々洩らす気配に苦笑した。


「美味しい才蔵さん、ほんと美味しいです。ありがとうございます」


美味しいと何度も繰り返し満面の笑みで才蔵を拝む燐。


「いえ、その、其程までに礼を言われずとも」


困惑し動揺を隠し切れない才蔵の嫌そうな様子に、佐助はこんな面白いもんは無いのにと何故か楽しめない自分に眉を下げた。


「でさ、この物凄く旨い肉が才蔵のお陰ってのはどういう事?」


佐助は手持無沙汰で肉とトングを持ち、気になっていた事を問い掛けた。


「言いたくなきゃ言わなくてもいーけど。次、どれ焼く?これで良い?」


チラと才蔵を見る姫様の不安気な視線。買いもんの話も随分と楽しそうだったし、言いたくなきゃ聞かなくても良いや。と佐助は視線を落とす。


「あ、私やるよ?」


あれ?話してなかったの?と黒を見ると、不機嫌そうな赤。取り敢えず肉のパックを受け取ろうと両手を差し出した。


「いーよ、俺が食べたいの焼くついでだしさ」


あんな旨そうに肉を頬張って美味しいと笑みを浮かべられたら、焼きがいがあるってもんじゃない?誰が焼いても旨いんだろうけど。


「肉の重さを当てる催しで頂戴した」


佐助の言葉に肉を調達した経路を知りたいのかと思い答えたが、佐助の困惑は更に広がる。


「そうそう!ぴったりだったんだよ!凄いよね」


事の始まりから話すべきかと才蔵は今朝の事を思い出しつつ口を開いた。


「熊避けの音を鳴らすため、暫く離れるよう通達あらば」


「熊?」


急に熊の話題を出された佐助は、熊?と首を傾げる。2人の様子に何も言ってないのかと燐は口を開いた。


「うん。なんか今年熊が多いんだって。で、週末人が沢山来る前に熊対策したいからって言われて」


「で、何で熊で肉なのさ?」


「話すと長くなるから、まず飲もうか。はい、かんぱーい」


不思議そうに問い掛ける赤と、黙っている黒に取り敢えずビールを渡した燐は、缶に残っていたビールをそのまま飲んだ。


「此れは」


「あ、黒ビールです。気になって買ったやつ。好き嫌いがあるから少しが良いかと思って」


訝しげに紙コップの中身を見る黒に答えながら、燐は朝風呂に行った後からの今日の一日を思い出した。

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