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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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32/216

32.熊狩りの修業とは誠奇なり。

夕暮れが迫る刻。周りから徐々に人が減る。此処では敵襲に怯える事も無く、幼子が自由に外で遊び大人は山にも拘らず警戒する事無く酒を飲む。


「随分と凄い所に来ちまったもんだよな」


ぽそりと呟く佐助。才蔵は何故山の中に集まるも他の物とは特に交流も無く飲み食いし、同じ刻限に山を下りて行く様子に顔を顰めた。


「だが解せぬ」


何の意図があり危険な山に来たのだろうと考えるも答えが出ない。


「分かったのは、此処にゃ戦が無い、商売人が惜し気も無く追加の品を施す位食いもんが豊富、敵襲も無し、危険がほぼ無いって事」


本当に。皆腑抜けた顔をして、憂い事と言えば帰宅後の片付け、明日からの仕事等、命が無くなる様な明日を生きるための悲壮感等なかった。


「ほら帰るからいつまでも遊んでないでー」


「はーい」


近くで遊んでいた子供等が声の方へ走る。人が大分少なくなると、佐助は椅子から立ち上がる。


「けどまぁ、金子を稼ぐ当ても出来たし」


佐助はテントの中に椅子をしまうと燃えている薪の根元を一つをひょいと掴んだ。


「そんじゃちょいと行って来るわ」


燃える薪を片手に持ち、消えた佐助。才蔵は火の番をしつつ管理棟から持って来たペンと紙にぎこちなく使い、昨日から見て来た地形や物を書き込んで行った。


「あ、やっぱりテントここだったんですね」


辺りが薄暗くなると、替わりに照明が点灯する。明るさに慣れないのか顔を顰めていた才蔵は近付く気配に、紙をしまう。


「如何しました?」


周りがしていた様に薪を火にくべ、声が掛かると気が付いた風に顔を上げた。


「近くで熊出たって聞いて知らせに」


山だし元は動物のテリトリーと知ってはいたが、あまり意識した事は無かった。けれど実際に目撃情報を聞くと怖くなる。


「もしかしたら夜でも緊急時はサイレン鳴るらしいです」


何も知らずに夜中にサイレンとか万が一の遭遇とか怖いだろうと、黒を見付け注意喚起に寄った事を告げた。


「あ、けどキャンプ場の周りに有刺鉄線と電気柵もあるし、ここまで来た事は無いって管理棟で聞いて来ました」


「熊、ですか」


考える様な素振りの黒。あまり驚かない様子に無謀チャレンジで新聞沙汰とか絶対嫌だと念の為、釘を刺す事にした。


「あの、一応念のためですが。修行内容に熊退治とかあるなら絶対やめてくださいね?危ないから」


「修行…その様な物は有りませぬが」


何となく知り合いになってしまったし、まだ数日滞在予定。事件が起こるのは嫌だと言えば、首を振り否定する黒に安心する。


「そう言えば、スマホ見付かりました?夜間の緊急連絡が来る事もあるらしいですけど」


「いえ、まだです」


相変わらず無口な黒。スマホが無い絶望感を思うと、夜間の緊急連絡が来たら教えてあげようと思った。


「じゃ、熊とか何か緊急事態の時はクラクション鳴らしますから。そしたら自力で何とかして下さい」


最低限の身の安全確保を考えると、ここまで生身で来るのは怖い。他に人も居ないし非常事態なら有りだろうと車内から危険を伝える提案をした。


「…分かりました。すみません」


「いえいえ、困った時はお互い様ですから。じゃ」


お互い様と声を掛け温泉へと向かった丸腰の燐の後姿を見届けた才蔵は、山中の気配を探る。


「熊狩りか」


山腹の人の気配。佐助が褒賞が出るかもと探しに行った山賊らしき気配は、熊を狩るための集団なのでは?と思うも伝える方法も無いと才蔵は中断していた作業に戻った。


「熊、ほんとに遭遇したらどうしよう」


今まで平気だったが、聞いてしまったら怖い。お湯に浸かり薄く姿を現した月を見ながら呟いた。


「今日も車で寝るかな」


布の中より金属の中の方が精神的な安心度が高い。連泊分支払ったけど、もうずっと車中泊ならテント要らなかったんじゃ?と眉を下げる。


「なんか面白い事無いかなーとか言ったけど、こういう事じゃないんだよなぁ」


呟いた言葉に、深夜も湯に浸かって月を見ていたなと思い出した。


「そういえば月食お風呂で見たの、初めてだわ」


次いで本気の忍ごっこの2人組との出会い、テントがあるのに車で初の車中泊、話題のパンと、ご当地蕎麦とかつ丼を思い浮かべ苦笑した。


「あんまり寝てないってのもあるだろうけど、中々に濃い日だったな。お風呂、こんなに入るのも初めてかも」


たった1日で色んな事があったと、顎先まで湯に沈み月を見上げる。


「今回のキャンプは初が多いな」


深夜のお風呂で月食を見て、怪我人を手当てして、テント貸して。一緒にご飯まで食べに行った。普段なら絶対しない自分の行動を振り返り呟き大きく伸びをした。

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