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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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30/216

30.同じ場所、同じ飯

炭火焼肉。炭火焼魚。地場産の野菜は新鮮で生でも焼いても美味しい。

気ままに色々焼いて食べれるのもソロキャンプの醍醐味だよねぇ等と色んな事を考えていたが、限界。


「あのー」


遠慮がちに声を掛ける燐にそれぞれ顔を向ける。何故か眉を下げ交互に才蔵と佐助を見る燐に2人は首を傾げた。


「何?」


「あー、うん。ごめんね?えっと、私移動しようか?お店空いてるから私だけ席別にしても良いんだけど」


問い掛けて来た燐の駄々洩れる胸の内に佐助は引き攣った笑みを返し、才蔵は心底嫌そうな気配を駄々洩らす。佐助は一つ息を吐くと、燐を見た。


≪此方を見るな≫


姫様の簡単に読める胸の内。席を移動するなら今だとか。才蔵を見れば才蔵は思い切り顔を顰め、嫌そうに忍言葉を告げる。


俺だって嫌だっての!!


「何でそんな事言うのさ?さっきは才蔵の隣に移動しろとか言ってたよね?」


自分に害が無ければ特に同性愛だろうが異性愛だろうが気にならない。赤の問いに確かにそう言ったけど、それは2人が見詰合う前で、もし知ってたら自分が移動してました。勿論別のテーブルにと自分達以外の客が居ない店内を見回した。


「いやさ?無言で見つめ合うなら真向いの方が良いよね?って事。気付かなくてごめん」


だけど自分の目の前には黒。自分の隣に赤。せめて私が赤と席替わった方が良いのでは?と赤の言葉に腰を浮かす。


「見詰合って等居りませぬ気色の悪い」


もしかしなくてもカップルの間に割り込んじゃってごめんと腰を浮かすも、黒の全力の否定に静かに座る。無言で見詰合って赤は笑いかけてたし、そういうんじゃないの?と首を傾げた。


「ねぇアンタ、それ本気で言ってんの?」


さっきから俺と才蔵が恋仲だと思ってる姫様は、不快感を顕わに一気に言い切った才蔵の言葉に、何故か困った様にこっち見てる。


「え?あ、違うの?」


何なんだってんだよ。アンタまで俺の事、色狂いだとでも思ってんの?


きょとりと此方を見る姫様に再び息苦しさが襲う。さっきのとは少し違う、白いあわじゃなくて黒い靄みてぇな不可解な胸の内に苛立ったまま口を開いた。


「違うに決まってんだろ?ったく、何でそんな風に思うのかね」


ねぇアンタ数刻前に組み敷かれたの忘れちまったの?思わず口から出そうになった言葉を呑み込み溜息を洩らす。


「や、だってさっき見詰め合ってたよね。あ、違うんならごめんなさい」


自分が気にしていないだけで、デリケートな問題だったと口に出してから気付いた。


もし隠れカップルだったら酷い事言われて大丈夫かな?


チラ見した赤と目が合うと、全力否定された。違うんだと2人の完全否定を受け素直に謝った。


「ねぇアンタ、俺様には謝んないんだ」


「え?あ、ごめんごめん」


赤のじとりとした視線に、纏めて謝った積りだったんだけどと思うも、下げた頭の方向が黒の方を向いていた事に気付くと、赤に向き直る。


「はいお待たせしました、蕎麦のセットね」


良いタイミングで運ばれて来た3つの盆。注文間違えたかな?とチラリと見た黒も、目の前に置かれたお盆を困惑しつつ見てる。


「父ちゃんが丼おまけしたのよ。平日は今2時までで店閉めちゃうから最後のお客さんだしサービス。遠慮しないで若いんだから食べなさい。お金は心配しないで皆蕎麦のお金だけで大丈夫だから」


3人の戸惑いを感じたのか店員はそう言って店の奥を振り返る。いやいや、正規料金取ってくれと焦り同じく店の奥を振り返ると、本当に店じまいなのか和帽子を取った男が小さく会釈する。


「旅行で来てくれたんでしょ?ここいらは田舎でなんも無いけど、米と水は旨いんだから食べてって。ご飯はお代わり無料で出来るからね」


店員はそういうと奥へ歩いて行った。かつ丼のご飯だけおかわり自由って自由過ぎると思いつつ、箸を持ちいただきますと手を合わせた。


≪何かの肉。食っちまえよ≫


自分の知る蕎麦の他に、急に提供された得体の知れない物に警戒し眉を顰める才蔵。


「やっぱり多かったですか?多分お持ち帰りとか、出来ないかな?聞いてみますか?」


燐は中々食べない黒の様子に苦手だったのかな?と心配し声を掛けた。声を掛けられた才蔵は、小さく首を振ると丼を持つ。


「初見の物でしたので」


「他とは違うんだってさ。けど旨いよ?」


腹が鳴らない程度に何か詰めておけば良いと普段からあまり食べない才蔵は通常の数倍の量に内心眉を下げるも店の奥をチラリと見て、食べぬわけにも行かずと口に運ぶ。


「うん。美味しい。聞いて来て貰って良かった、ありがとね」


特にアレルギーや好き嫌いがあったわけじゃなかったんだ、と赤の言葉に食べ進め頷く黒を見てほっとした。


≪かくも上なる品を≫


≪有難くいただこうぜ≫


結果、皆同じ飯。同じ場所で一緒に何の差も無い、同じ物を食べる。才蔵と同じく忍如きがとちょっと思ったけど、満面の笑みを向ける姫様に胸の内が再び白いあわで埋まった。

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