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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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25.困惑

才蔵の言いたい事はなんとなく伝わって来る。それを無視してテントに入ると、中の様子を確認した。


あのへんてこな姫様のてんとって奴より広い天井。中も広いし


間を置かずさっきの男が荷物を荷車に乗せて持って来た。使い方等を教わりながら、最後にこっとって寝床を作る。


「なあ。なんなの?言いたい事があれば言えって」


「別段無い」


「…あのさぁ毎回毎回色事に持ってく訳ないだろ?!」


「左様か」


佐助の言葉に才蔵は一瞬目を見開いた。が、特に反論する事もせず自分の寝床を作ると外に出て行った。


「っ、俺様暫く寝るから!」


佐助は顰め面で、出て行く背に叫びそのまま作った寝床に潜り込んだ。


「何なんだってんだよ、色狂いみてぇに言いやがって」


言われたわけでは無い。

ただ相変わらず才蔵の駄々洩らす気配から悟った佐助は寝袋に入って憎々し気に呟いた。どちらかと言えば睦言等それ程興味も無ければ必要性も感じないと顔を顰める。


「…人ってぇのは男も女も、そっちの方が手っ取り早いだけだっての」


何事も色事に持って行けば男も女も口が軽くなり、閨に持って行けば更に普段聞けない事まで軽々と口にする。


「魅了使えってこったろ?」


それを熟知している佐助が、今回はその手合いを一切使わず交渉していた事を違和感と受け取った才蔵の気配。


「あれ?けど、別段才蔵にどう思われようが今更じゃない?…何でだろ」


なんなら実際見られていても何とも思わなかった事を思い出せば、何故今回は言い当てられた不快感とも違う嫌悪感が出たのかと首を傾げた。


「そっちの方が楽な筈だよなぁ?」


かんりにんを丸め込んでしまえば、煩わしい金子の問題や今後の住まいも簡単に手に入る。


「才蔵の居場所がないから?」


その場合才蔵は陰に潜むか天井裏だろうが、いつ術が切れるか分からない状況や、支払いを有耶無耶にする事を思えば、あの真面目な男は依存無しとでも言うだろう。


「あれ?...此処の状況だって今より手に入りやすいだろうし」


恋仲ともなれば、必要な情報を手に入れる事も容易い。この不可思議な世の事も情事の後の微睡み時にでも聞けば、多少可笑しな事を言ったとしても気にも留めずに答えるだろう。


「何でだ?」


だが、自分はそうしなかった。何故魅了しようと思わなかったのだろうと考えるも答えは出ず。


「体が持つかって事か?けど今回ならそんな動く必要もねーよなぁ?」


佐助は出ない答えに苛立ったように起き上がると寝袋から出て動く近くの気配に集中した。


「また湯にでも行くのかね」


佐助は手近な小さい道具を適当に見繕うと風呂敷に包んで外へ出た。丁度車から出て来た燐を見付けた佐助はひょいと跳んだ。


「ヒッ?!」


あっはー何回見ても良い反応してくれるよねぇ


声を掛ければ毎度の如く姫様はビクリと小さく飛び跳ねる。何故居ると本音が零れる姫様。


本当に胸の内を隠さないよねぇ。ま、ここの御人等は皆読みやすいっちゃ読みやすいんだけどさ


困った素振りで眉を下げて見せれば、思った通り。姫様は親身に聞いて来る。


「じゃ、どうすんの?」


この姫様の言う、すまほ、は確か皆が持ってる板で、さいふ、は金子を入れる紙入れみたいなもんだよな?


んで、持ってないと首を振ればこの優しい姫様はやっぱり眉を下げて心配そうな気を洩らす。


「そんでく、えーとなんだっけ?雲隠さんは?」


何でまた才蔵?一応俺様の方がお偉い上役なんだけど。ま、偉ぶって自分に様付ける位しか出来ないって身分にゃ変わりないけどさ


すぐに才蔵を思い浮かべる姫様は、確かに才蔵さんの方が信用出来るなんて思ってるし。


「あそこで交渉中」


何故か分からないが佐助は才蔵を此処に呼びたくないと思うと、管理棟を指して見せた。


「いや、なんか、まあ上手く行くと良いね。雲隠れさんも貴方も一応病院行った方が良いよ、傷。じゃあね」


胸の内の底から再び黒い靄が出て来る。面白くねぇ


にこりと笑みを浮かべ「なあに?」と問い掛けると、姫様は焦ったような早口で話を終わらせるように片手を上げてんとに入ってった。


「気に入らねぇ」


才蔵の名は、まぁ若干間違ってはいるけど覚えてるのに。雲隠れより佐助の方が明らかに覚えやすいだろ?なんで才蔵は名で呼ぶの?


胸の内が黒いもんで覆われてどろりと何かが出て来る感覚に佐助は胸元をぎゅっと握った。


「閲してやろうじゃないの」


佐助は燐が入って行ったテントの入り口を見て小さく呟くと影に姿を溶かした。暗がりがあれば何処にでも入り込める。


「いた」


気配を探り一番近い所で影から腕を伸ばした佐助は、燐を捉えるとその場に姿を現した。驚く燐を見ると佐助はそのまま燐を組み敷いた。

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