24.何故まだ居る
R15、なのかな?です。
意外と快適に眠れたが車内の温度が上昇すると暑い。
「あっつー、うわっ昼過ぎてる」
寝袋から出てスマホで時間を確認し、忍ごっこの黒赤達はもういないだろうと鍵を開け外に出た。
「良い天気だぁ」
管理棟の方から続々と登って来る車。子供達の声もする。
ファミキャンかな?明日も平日だし、デーキャン?
駐車する車を見つつ混む前に水を汲もうと空の水タンクを手にし、腹の鳴る音に思い留まる。
「朝ご飯予定、黒にあげちゃったからな…朝からカップ麺?いや、どっか食べに行こうかな」
今から米を焚くのも億劫だと独り呟きながら非常食を見るも、そう言えば近くに食堂あったよねと思い出した。
確か管理棟に周辺の食堂やカフェの場所と営業時間が書かれたチラシがあった筈
一先ずテントの換気だけして出掛けようとバッグのみ持ち車を施錠した。
「おはよ。よく眠れたみたいだねぇ?」
突然声を掛けられビクリと跳ねた。声の方に振り向けば、直ぐ側でニコニコとこちらを見ている赤。
「ヒッ?!何故居る。あ、おはようございます」
確実に管理棟の空いている時間にもかかわらず、まだ近くに居た事に驚き思わず声に出てしまった。
貸したフリースまだ着てる。じゃ黒2?ま、赤で定着したし赤で良いか
「てか、管理棟もう空いてるよね、行った?」
ヘラヘラしている赤に問い掛けるとこくりと頷き、何故か手に持った風呂敷を見せ状況を説明し出した。
「で、結局見付かった荷物はそれだけなの?」
「ん。これだけ」
スマホや財布は?と聞くと首を振る。流石に全部の荷物を担いで忍ごっこはしないだろうと思うも、肝心の物が見つからないままでは大変だろうと眉を下げる。
「えっと、合鍵でロッジ開けて貰えたなら…あ、でも財布もスマホも無いのはきついよね」
自分に置き換えれば、どちらも無いなんて不安で仕方なさ過ぎる
「そんでく、えーとなんだっけ?雲隠さんは?」
「あ、才蔵?アイツはあそこ」
姿が見えない黒はと聞けば、赤は管理棟を指す。料金は完全前払いだから良いとして、今後の捜索方法でも話しているのだろうか?
「解決すると良いね」
何かは分からないが、確かにこいつより信頼度も説得力ありそうと赤を見上げる。
「なあに?」
よっぽど顔に出ていたのか、赤が含みのある言い方でわざとらしく、にっこりと笑みを向けてきた。
「あ、んーん、何でも」
慌てて首を横に振り、何故か立ち去らない赤に首を傾げる。
何で赤はここに居んのかな?
再び思うも、取り敢えず管理人が居るならそっちを頼ってと片手を上げた。
「いや、なんか、まあ上手く行くと良いね。じゃあね」
無事管理棟も開いたし、後は二人で何とでもしてくれと、テントの入り口を開けて中に入った。
「昨日寒くて、奥閉めてた筈…じゃなかったっけ?」
ベンチレーションを開け寝室の方もメッシュにして風を入れようと靴を脱ぎ奥に進む。
「?!なっ?」
突然ぐるりと視界が回る。自分がいつの間にか組み敷かれている状況に驚き短く声を出すと、上に乗る赤は楽しそうに薄く笑んでいた。
「やっぱり。ねぇアンタってばいー匂いするよね」
さっき一方的にだけど別れの挨拶したよね?何入って来てんだよ、と睨む燐を無視しクンクンと鼻を鳴らしながら耳元に顔を埋め、はくりと耳朶を噛む。
「ッ、」
「可愛い反応するんだねぇ」
湿った暖かさにビクリと出た反応に、嬉しそうな声を出した赤は胡散臭い笑顔を浮かべた。
「どいて」
細い腕が上から押さえているだけなのに、微動だに出来ない。
「ねーぇ、俺さ?アンタともっと仲良くなりたいんだけど」
意外と力あるなと顔を顰めれば、こつりと柔らかく額を押しつけてくる。鼻先を擦るように付けながら自信たっぷりに笑う赤。
「どいて」
「やーだ」
かさついた唇が触れる。
驚き凝視していると重ねた唇を少し離した赤は「こういう時はおめめは瞑るの」と包帯が巻かれた手で目を覆う。
「このまま閨を共にしたらさぁー、俺等もっと仲良くなれると思わなーい?」
唇を離して柔らかい笑みを浮かべる赤。何だコイツ。
「全く思わない。こういうの恩を仇で返すっていうんだかんね?どけ」
ちょっと寝て復活したからって手直な女に手出そうとか何考えてんのと苛々し、心の底から手助けなんてしなきゃ良かったと顔を顰めて言い返した。
「んじゃ、恩は体で返すって事でー」
再び顔を近付けて来た赤は、低い声の乱暴な言葉に一瞬怯んだように動きを止めるも、嘘くさい笑みを浮かべる。
伊達に歳くってねーんだよ
再び額をくっつけ、とんでもない事をいう赤に歳上なめんじゃねぇと綺麗に微笑み両腕を伸ばした。
次は忍視点。重複する内容なので不要な方は26.へ




