188.
乳と尻出てるのでR15
白雲斎の言っていた通り、その日の夕暮れ前に鎌之助が燐を迎えにやって来た。
「そんでさぁーあ月姫。ちょいとアンタ、名残りを惜しんだりおしよ」
やって来たが、来て早々に鎌之助は囲炉裏の側にごろりと寝そべる。燐はやる気のない鎌之助にお茶を出すと何の意図がと鎌之助の顔をじっと見た。
「なんだいアンタ、忍の術でも習ったのかい?まぁそんじゃぁよっくと見とぉくれな」
顔を凝視された鎌之助は仰向けに寝そべったまま、目を閉じる。
「急がないなら、お風呂入って来たらどうですか?」
漂う疲労感に温泉復効果を実感したら良いと燐は立ち上がると、風呂道具一式を持って鎌之助の側に屈んだ。
「…そうするかいね。何だい?こりゃ」
鎌之助は気の抜けた声で答えると、のそりと起き上がって燐の差し出すお風呂セットを不思議そうに見詰める。
「あ、そうか。折角だから髪の毛洗いましょうか?」
佐助も師匠も普通に使ってたから出したけど分かんないよねと燐はお風呂セットのプラスチックかごを腕にかけると立ち上がった。
「まぁ…そんなら、してもらおうかね」
鎌之助は燐に促され風呂場につくと何の躊躇もなく着流しの帯を解き、下履き一枚になると燐を振り返る。
「素っ裸が良いんだったかい?」
「え?あ、どうかな?まぁ同性ってことで鎌之助さんが気にしないなら」
細い腰に巻かれた紐が解けると足の間から布が前に移動し、前のみを隠すような布の形状になった。
「何だろ…丈長な裸エプロンにしか見えないんだけど」
少しからかってやろうと燐の目の前で肌を曝したが、燐は下穿きが珍しいのか、布一枚を首から垂らす自分の姿を平然と凝視している。
鎌之助は以前太腿あらわに佐助に乗っかっていた燐を思い出すと、こういうのは平気なのかと首の後ろの紐を解いた。
「いやいや、同性だけど、一応何となく隠しましょうよ。はい、これどうぞ」
紐が緩むと形の良い胸が見える。スウェットを脱いだTシャツ姿の燐は鎌之助に手拭いを差し出した。
「そういうもんかい?」
鎌之助は傷塗れの自分の体を見下ろすと、そういや以前傷を隠せと言われたねぇと手拭いを手に風呂へ向かう。
「セクシーが過ぎる」
揺れる形の良い尻と括れた腰に、拝みたくなるオッサンの気持ちが分かってしまった燐は、濡れた服を乾かす労力を考えた結果、風呂掃除用の短パン代わりに履いている男性下着に着替えた。
風呂場に入ると鎌之助が気持ち良さそうに浸かっている。
「鎌之助さん、ちょっとこっち背中着けて座ってもらえますか?」
燐は浴槽製作時に1ヵ所少し高くしてもらったった風呂の縁の部分に手を当て鎌之助を呼ぶと、桶に湯を張り準備した。
「こんで良いのかい?」
燐に言われた通りに気の湯船に背を付けると背後に回った燐は鎌之助の無造作に束ねた髪を手に持つ。
「あ、そうです。それで、ちょっと髪の毛…そのままここ枕にして寝れるんですよ」
自分の夢を詰め込んだ、胸の先まで全部湯に浸かれる寝湯コーナーを披露した燐は、そのまま鎌之助の髪を湯で流す。
「こうやって寝ながら湯に浸かるってのも良いもんだぁねぇ」
鎌之助は体の力を抜き気持ち良さそうに呟く。顔を上げた燐は、白い湯から足先をぷかぷか浮かす姿に同意した。
「それじゃシャンプーしますね?」
燐は鎌之助の湯に濡れた頭に泡を揉み込むようにシャンプーを始めた。鎌之助はふわりと浮かぶ泡を見付けると指先でそれを割る。
「痛くないですかー?」
「気持ち良いだけさね、月じゃあ頭をこうやって洗うのかい?」
鎌之助の長い髪を目の粗い櫛で梳きながら泡を落としていく。鎌之助は目を開けると、再び自分の頭を揉む燐を見上げた。
「髪を切ってくれるお店だと洗ってもらえますよ。もっと上手だけど」
「へぇー。こりゃぁ良いねぇ…」
湯に浸かりながら月の洗髪をして貰えるなんてねぇと鎌之助は目を閉じる。頭頂部から前へ手を移動した燐は、額の突っ張った皮膚と深い傷跡を見ると手を止めた。
「あ、痛みますか?こっち…」
今まで気付かなかった、鎌之助の額から目尻を通って首までの一直線に抉られた様な傷跡。古傷なのだろうが揉まれれば痛いかと燐は眉を下げる。
「いんや。ああアンタに傷を見せんなってぇの、あんまり気持ちの良いもんだからすぅーっかり忘れてたよ」
傷塗れが日常に無い月の世から来た姫が怯える事の無い様にと言われていた事を失念していたと鎌之助は体を起こした。
「悪かったあねぇ月姫」
鎌之助は縁に腕を乗せると燐を振り返り詫びた。燐は首を横に振ると余計なことしてごめんと眉を下げる。
「何か色々気を使わせてしまってて、こちらこそ申し訳ないです。で、痛くないなら続けて良いですか?」
頭についたままの泡。燐は鎌之助が嫌じゃなければ続けたいと話す。
「古傷だ、痛みなんざ全く無いのさね。アンタが傷見て不快にならないってぇんならお願いしようかねぇ」
「鎌之助さんは見られて嫌じゃないですか?って、今更なんですけど」
燐の言葉に鎌之助は暫く燐を見た後で、長が落ちたのはこういう所だろうねぇと目を細めた。




