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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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100/217

100.囲炉裏

結局どうして良いか分からず持っていた着物を佐助に渡すと、佐助はそれを部屋の奥へ掛けた。


囲炉裏側へ戻った佐助は燐へ木の椀を差し出した。受け取った燐は何故か頬を染める。


「あ、佐助のそれ、私が掬いたい!良い?」


佐助と自分の間にある囲炉裏。リアル昔話体験だと燐は佐助の持つ椀とお玉を見ると手を伸ばす。


「え…良いけど」


楽し気に汁をよそいたいと頬を染める燐の様子に戸惑いながらも、本人がしたいならと佐助は燐に椀を渡した。


「たーんとお食べ。あ、作ったの私じゃないけどね」


燐はやってみたかったパターンから、親子設定を選択し汁物を入れたお椀を佐助に差し出す。


「あ、うん…」


「え。気に入らないなら、熱いから気を付けてくださいね、お爺さん」


何を始めたんだろこの子。ま、胸の内読まなくたって全身から漏れ出てるから何となく分かっちまうんだけど


気に入らなそうな手の差し出し方に言い方を変えると、佐助は眉を下げたままの顔で小さく笑う。


「何で爺さんなのさ」


「えー?だって子供…童?わっぱって言うんだっけ?が嫌そうだったから」


最初の何となく柔らかい目元は親だったって事ね。で、何で次は爺さん?燐ちゃんを見ればやっぱり楽しそうに笑ってる。


「そんじゃ次は?」


「もう無いよ。実はアニメの昔話ってあんま見た事無いんだよね。あ、佐助が寝てて「いつもすまないねぇ」っていうのもあるけど、やる?」


昔話。囲炉裏を見て思い付いたのだろうと容易に推測出来た佐助は、燐の問い掛けに苦笑しながら首を振った。


「アンタの世の昔にも、これはあったって事ね?」


「うん。あ、ちょっと楽しくなっちゃって、ごめん」


生囲炉裏にテンション上がってやってみたが、佐助にとっては昔話ではない。と今更気付き謝った。


「もうないってさ、まだあんでしょ?」


もう少し笑ってるアンタが見たくて聞けば、本当に分かんないって顔でこちらを見て来る。


「え?ある?」


家に二人で居るこの状況って、親子じゃなくて夫婦の方がしっくりくると思うのって俺だけ?


「今けえったよ」


立ち上がった佐助は、土間に下りると燐に向かって声を掛けた。夫か!と燐はノリの良い佐助に苦笑する。


「お帰り、お前さんご飯出来てるよ。って、私が作ったんじゃないけど」


夫のバリエーションは燐の昔話には無いため、時代劇を取り入れてみた。


囲炉裏の前に座った佐助に、よそい直したお椀を差し出し声をかけると一瞬目を見開いた佐助は顔を顰める。


「…最後の要らなくない?」


柔かい笑みと気遣う言葉。忍じゃなくて人なら、こんな風に迎えられるんだと思うと、茹だるみたいに全身が熱くなる。


「えーだって作って無いのに、作った振りって図々しいじゃん」


作った本人目の前に居るし。と佐助が椀を受け取ると自分のお椀を手に持った。


「いただきます」


作ってくれた佐助の方に頭を下げると、戸惑った笑顔で「どうぞ」と箸を持つ佐助。


「美味しい。これ良いよね、部屋も暖まるし。他の家もあるの?」


頷いた佐助は煮炊きは囲炉裏で行う事等を聞かれるままに話しながら食事を終え、自分でやると言う燐を残し器を近くの井戸に洗いに出た。


「おかえりー。外寒かった?あり、ん?ン゛ー?!」


戸が開くと燐は佐助に礼を述べながら振り返えろうとし、身動き取れない事に驚く。


「チッ静かにし」


なんで?誰?強盗?!あ、鍵無いんだ玄関!


押さえ付けられパニクっていると、体の圧迫が弱まり、口元を覆っていた何か外れた。


「ごめん」


声に顔を上げ振り返ると、先程の声の主は居らず、代わりに困った顔をした佐助が居た。


「ん?え??いや分かんない、さっきのも佐助?え?違うよね?声、違かったし」


佐助は何が起こったのか分からないと困惑顔の燐を覗き込む。


「平気?どっか痛い所無い?」


さっきのと不安気に見上げる姿に、佐助は燐に問い掛ける。「無い」と首を振る燐に小さく安堵の息を洩らした。


「そんじゃさ、ちょーっとこれ片付けて来るから」


「ヒっ、な…」


「これ」と下がる視線に自分も下を向くと、床に人が居た。思わず短く声を洩らすと屈んで腕を掴んだ佐助はにっこり笑みを浮かべる。


「大丈夫、分身置いてくから…っと」


短い悲鳴と伝わる恐怖に顔を上げると血の気のない顔で見下ろす燐ちゃん。一人になるのが不安なのかと分身を出すと、燐は再び体を強張らせる。


「ごめん、けど直ぐ来るから」


戻って来て感覚が鈍いのか、気付くのが遅れて危険な目に合わせちまった。けど死体(こんなもん)と一緒に一夜明かすのを此処の女達は嫌がる。て事はきっとこの子も嫌だろう。


佐助は男をずるずると引きながら戸を開け外へ出た。


「な…?」


佐助が閉めた戸の音が耳に響く。燐はそのままその場にぺたりと座った。


良く分からないが何かに羽交い絞めにされた気がした。


「多分あの人…だよね…?」


そして佐助が以前言っていた、一番最初に狙われるという言葉を思い出した。

○●勝手に豆知識コーナー●〇

度々出て来るご飯を、汁を、よそう。

地方によって表現が変わるそうです。

他に、よそる。盛る。つぐ。などもあるそうで、これらは地域によって優勢劣勢が分かれるそうですよ。

貴方のごはんを…はどれですか?

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