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00:エロい年下に襲われた話

 心理学的に見ても、美人は特をすることが多いらしい。


 だけど残念ながら、女の花盛りは短い。


 やりがいのある仕事に夢中になっていた訳じゃない。

 会社の顔、受付嬢としてただなんとなく働いてきた。

 誰か一人に夢中になっていた訳でもない。

 でも、彼氏は途切れない。

 それで気付いたら、30歳は目前に迫っていた。


「ねー。寝室、どこ?」


 待って。どっかで時空歪んだの? と、何度も考えたが、その度に一応一通りの記憶があることを確認して安心した様な、それでいて、いてもたってもいられない様な気になる。


 顔にだけは自信があった。


 昔からよくモテたし、学生時代から子どもを作って一番に結婚しそうだと言われた。


 結婚は早いだろうなと自分でも何となく思っていたし、子どもが出来て結婚する事にも抵抗なんてなかった。


 むしろ、どんな状況でも自分は幸せでいられる。なんて、本気でそう思っていた。


 今の会社の面接の時、面接官は履歴書の経歴部分をざっとなぞって、貼ってある写真と実物を見比べ、形式的な質問をいくつか投げかけた後、『君、採用ね。あーでも、他の人にはそう言われたって事は言わないで。問題になるからいろいろと』と言って、呆気なく就職が決まった。


 だけど会社には当然、毎年若い子がどんどん入ってくる。

 書類整理に回されるのも時間の問題かもしれないという、漠然とした不安。


 顔のいい人間は得をする。


 それは案外、間違いでもない。

 そう思える人生。


 それなのにもう、時間がない。


「ねーお姉さん。俺の声、聞こえてる?」

「きこえない」


 友人からどうしてもと言われて、断り切れずに、随分お相手の年齢が若い合コンに参加している暇なんて。


 そこにいた結婚相手に見合わない若い年齢の男の子の肩に腕を預けて、なだれ込むように部屋に入っている暇なんて。


「聞こえてるみたいでよかった」


 支えられたまま彼とリビングに入っている暇なんて。

 リビングに隣接したドアから見える寝室に入る暇なんて。

 ベッドに放り投げられて見下ろされている暇なんて。


 あるはずない。


「俺、お姉さんの顔すごい好き」


 そう言って優しく頬を撫でる彼の顏を、ぼんやりと下から眺めた。


 ただ反射してるだけ。そんな印象を受ける目。


 目にかかるくらい長い前髪。

 どこか憂いを帯びたこの表情。

 なにより、じっと見つめて確かめたくなってしまうくらい綺麗な顔。


 あー、この子か。顔面至上主義の子。


 顔面がタイプなら性格がどれだけクズでも笑って許せるって当たり前の様に言ってのけて、一瞬にしてその場の雰囲気をかっさらっていった子だ。


「……君、いくつだっけ」

「あー、20。うん、20歳」

「20歳……? 若っ」

「年下嫌い?」

「恋愛対象外」

「恋愛は別に対象外でもいいや。でもそれ以外は、年齢じゃなくて相性で考えて」


 20歳にしては大人びて見える彼は、服を脱いでベッドの下に放り投げた。


 あー、今からこの子とヤるんだ。なんて、考えている暇は一秒だってないし、飲み会前に買ったタバコがたしかポケットにあるはずで、それが体重で潰れそうだとか、ああそうか、どうせ服はすぐ脱ぐのか、とか。


 そんなことを頭のどこかで考えている暇なんて、ないはずだ。


 やりがいのある仕事に夢中になっていた訳じゃない。

 会社の顔、受付嬢としてただなんとなく働いてきた。

 誰か一人に夢中になっていた訳でもない。

 でも、彼氏は途切れない。

 それで気付いたら、30歳は目前に迫っていた。

 何にも、夢中になれないままで。

 

 こんな事になるなら、勢いで結婚しておけばよかったと考える事がある。


 何も考えていなかった訳ではないと思う。むしろよく、考えた。考えて考えて、幸せになることを考えた。それを基準に相手を選んでいたら、顔という武器も使えない年齢になろうとしているだけ。


 そして、綺麗だと言われる外見に反して中身が何一つとして伴っていないと気づいただけ。


 そんな事を、最近よく考える。考えるだけ。思っているだけ。だって本当にわかっているなら、遊んでいる暇なんてないはずだった。


「本当に、綺麗な顔してる」


 そう言いながら、本当に愛おしそうに顔を撫でる彼は、本当に顔だけを見ていた。


 額から目の形、鼻、唇、顎、輪郭。一通り視線で顔をなぞっている。

 何をすることもなくぼんやりと彼の目を見ていると、瞬きを一つして目を開いた彼としっかり目が合った。


 薄く笑っている。

 蛇に睨まれた蛙。おおよそ、それだ。ただ、そんな物騒なモノじゃなくて、心の一部分だけを強く縛り付けて絡めとられた様な、もっと優しくて、甘くて、強制力も拘束力も強い。そんな何かだった。


 生暖かく浸っていた酔いを、一層分、醒ますくらい。


「相性、悪くないといいなァ」


 両腕を掴まれた感覚ではっとしたが、そのころには彼はもう掴んだ両腕を自分の首に絡める様に持って行っていた。


「めっちゃくちゃにしていい? グズグズになるまでやりたい」


 予想していなかった言葉に、一瞬思考が止まった。


 なに。なに、この子。

 本当に二十歳?

 くっそエロいじゃん。


 不意に服の中に入り込んだ指に驚いて思わず彼の首を引き寄せると、彼は首に甘く噛みついた。

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