第05話 スキルだの魔力だの
今回は世界観の説明がメインになってしまいます…。
説明くさくてすみません汗 それではどうぞ!
「“スキル”? “魔力”? ほんとアンタら何? ちょっとこれはね、世間は許してくれませんよ」
天海は苛立ちながら“卵”と女に話しかける。実際、どちらも本やゲームの中でしか聞いたことないような単語だ。
「お答えします、ご主人」
「うわ喋った」
うめき声を上げながら倒れている女の傍に鎮座する“卵”が、唐突に天海に話しかける。
「横たわっているこの女性は、掌などから火の玉を生成し発射するスキルを持っているようです」
驚くほど流暢に喋る“卵”は、なぜか天海をご主人呼ばわりし、敬語を使っている。
「いや、それは見りゃわかるよ。そもそもスキルって何? てかオマエ誰?」
ずっと頭の中で渦巻いていたことを問う。
「お答えします。“スキル”は一部の生命体にのみ発現する特殊能力のことです。どのようなスキルを所持しているかは個体により異なりますが、いずれも発動の際には、“魔力”と呼ばれる人体から捻出されるエネルギーが必要です」
「…マジか」
「私は見ての通り卵ですが、正確には幼体です。この世界には“魔族”と呼ばれる生き物が存在します。先ほどスキルは一部の生命体にのみ発現すると申し上げましたが、それは魔物と人間のことです。人間も魔物も、スキルを所持している個体は限定的です。私も魔物の一種ですが、その中でもご主人である天海悠斗さまに付き従う“使い魔”です」
相変わらず不気味極まりない唇を動かす“卵”による数々の発言。驚きはしたものの、疑いの念は微塵もない。彼は今この目で、異常な現象の数々を目にしてきたのだから。これをスキルとやらのせいにしなくては、一体どう説明すれば良いのか。天海は畳みかけるように質問する。
「じゃあ、アイツはスキルを持ってるけど、俺は持ってないってこと?」
「いえ、ご主人様もスキルは所持していましたよ」
動揺に次ぐ動揺。必死に状況を飲み込もうと頭を回転させる天海だが、到底会話に追いつけるはずもない。しかし、彼がそれ以上に気になったのは、
「所持“していた”?もう使えないってこと?」
現在の天海における、スキルの有無だ。気になる答えは――
「はい。ご主人はもうスキルを所持しておりませんし、使用することもできません」
ハズレであった。天海の表情が露骨に曇っていく。正直なところ、天海は未知の異能力に胸をときめかせていた。身の安全は全くもって確保されていないが、少なくとも自分の命を狙う者は戦闘不能になると、今度はその未知の力を自分も駆使することはできないものかと、大いなる期待を抱いていた。
なるほど、そう考えると、先ほどまでやたらと天海がスキルに関する質問しかしていなかったことにも合点がいく。落胆した天海はある意味で冷静さを取り戻し、自分が知るべきことを片っ端から聞いていくことにした。
「マジかぁ…。ちなみにどんなスキルだったの? なんで使えなくなっちゃったんだよ。あと、オマエはなんで俺に付いてくるの?」
「ご主人の脳に刻まれたスキルは、わかりやすく言うならデバフ。霧状に加工した魔力をぶつけた相手の身体能力・魔力および出力を一時的に低下させます。低下させた能力を別の対象者に移し、一時的に“バフ”をかけたような状態にすることも可能です。そして、ご主人のスキルが消滅した理由ですが――」
次の言葉に、天海は質問しなければよかったと、激しく後悔し、驚愕することになる。
「――私が、スキルを頂いたからです」
「…は?」