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第11話 異形のトカゲ

 数か月に渡って天海が悩んでいた高校の進路がついに決まった。今は6月。そろそろ志願する学校を決めなければ色々と面倒だった今この時期に舞い込んできた「かっこいい」高校への提案。了承しない手はない。しかし、この時点で、天海は「かっこいい」という理由ともうひとつ、皇城が提案した高校へ行くと決めた理由があった。


(スキル使い……ってことは、勉強あんまやらなくても良さそうだよなぁ)


「勉強あんまやらなくても良さそうだよなぁ、って顔だな」


 皇城の発言は図星。やはり彼が物心ついたときから共に生活している彼は、天海のことを熟知している。


「へへ、バレました?」


「まぁ悠斗の思っている通り、強さが価値基準だ。あそこ――“青嶺しょうれい学園高校”はな」


「ショウレイ? どこそれ、聞いたこともないわ」


 進路に悩んでいた天海は、全国の高校一覧が載っているウェブサイトを何度も閲覧してきた。だが、天海の記憶に“青嶺学園”という高校の情報はなかった。


「当たり前だな。そもそも新設校なんだ。それに、ネットや本にも載らないように細工されてる」


「めちゃくちゃ怪しいじゃん」


「スキルを使える人しか入れない学校なんだから、一般人が間違って応募したらまずいだろ。入試とか」


「え、やっぱり入試あるの?」


 天海は少しガッカリした。てっきり勉強せずとも魔力が使えれば入れるという感じの、入学条件が緩い学校だと思っていたのに。


「あぁ、安心しろ。悠斗が思ってるような普通の勉強は重要じゃない。試験内容は――」


一呼吸おいて、皇城は続けた。


「魔族との戦闘だ」


「あぁ、やっぱり……」


 皇城が「普通の勉強は重要じゃない」と言った辺りから薄々感じてはいた、この嫌な予感。火を操る女性との遭遇、およびナイトの存在で、まだ知識だけの天海も彼らの危険性や強さは十分に理解しているつもりだ。あの女性がジャブ感覚で出した拳に殴り飛ばされていた今の天海では、足元にも及ばないだろう。


 加えて他の者と違い、天海はスキルが使えないときた。今、自分が自覚すらできていない魔力というエネルギーの、基礎的な操作だけで入試をクリアせねばならないという状況をようやく理解し、天海は唾を飲んだ。それでも、


「つってもさ、魔族がどんなもんなのかよくわかんないんだよね。ナイトは俺を襲わないし、それっぽいのは見たことないんだわ」


「……確かにそうだな。ちょうど今夜、魔族の討伐依頼が来てる。一緒に来い、見学だ」


「オッケー」


     ◇ ◇ ◇


夜 栃木県日光市 白根山


 人里離れた山奥の中。天海と皇城は、自家用車の中で件の魔族の出没を待ち伏せしていた。


「マジで何これ……。見るからに出そうな感じじゃん」


「そりゃそうだろ、出るのを待ってんだから」


「スマホの電波も弱いし……。お菓子とか持ってくるんだったな」


「てかさぁ、仕事何してるか全然教えてくれなかったけど、こんなメンドい仕事だったわけぇ?」


 もう2時間はこの山奥で待機している天海は、正直なところ待ちくたびれていた。太ももの上に座っていたナイトは、とうに眠りこけている。


 なぜ魔族のような化け物と対峙するかもしれないこの状況で、待ちくたびれる……言うなれば、ある種の平和ボケをかますことができるのか。それは、皇城が隣にいるという事実から来る安心が根幹にあった。もちろん魔族は怖いが、皇城の強さを先日この目で見ているのだ。相手がたとえ異形の怪物でも、あの火を出す女性に圧勝した彼の格闘術が通用しないと考えるほうが難しかった。

そのときだった。


「!?」


 ズズズ……と音を立てて、虚空からどす黒い煙のようなものが出現した。それだけでも軽いホラーであるが、その1秒後には天海はさらに目を見張るほど驚愕することになる。


 そこから這いずり出てきたのは、巨大なトカゲであった。全長5メートルはあろうかというトカゲは、よく見るとただの巨大なトカゲではない。脚は6本だし、車のヘッドライトに照らされて夜闇の中でらんらんと赤色に輝く眼球は、左右に3つずつ付いており、まるで昆虫や蜘蛛といった類のようである。


「なっ……なんだよ、コレ」


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