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それは調教という名の慣れ?




 今まで、胃に優しい物が多かった食事。「そろそろ大丈夫だろ?」と、夕食はとても豪華だった。一口サイズに盛り付けられた前菜が5種類。魚のムニエルに茸ソースのステーキ。色鮮やかなサラダや、ほかほかのスープ、綺麗なデザートなど。腕の良い料理人が調理したのだろう、本当に美味しかった。


 それに最初から全てテーブルに並べられていたので、途中で誰かが入ってくることを気にする必要がなく、細かいマナーも気にせずに済んでありがたかった。

 ロワクレスがそのように頼んでくれたからだろうな。私がこの国の常識にもマナーにも疎いからと気遣ってくれたのか、それとも隣に座って「あーん」してる姿を見られたくなかっただけかは、わからないけど。口許に料理を運ばれれば食べるしかないし。美味しいけど。

 照れる私を見て満足そうにするのは止めてほしい。切実に。


 お腹いっぱいになったあとは、少し休憩してからお風呂に入る流れに。

 料理を運んできた時にはお風呂も用意されていたらしく、覗いてみたら湯船にはすでに湯が張られていた。広くて綺麗なのは良いけど、薔薇の花びらまで浮いているのは、何故なのか。……考えてはいけないな。


「私は後でいいから入っておいで」


 湯船を見て感動していたからか、一番風呂を譲ってくれた。

 脱衣所で服を脱ぎ、お風呂場のドアを開けた。久しぶりのお風呂。嬉しすぎる。とりあえず頭と体を洗い、湯船へと向かう。片足を入れ、ちょっと熱い気がしたからゆっくりしゃがむ。肩までつかったら、ふぅと息をはいた。


 精霊に洗浄魔法で綺麗してもらってたけど、やはり湯船につかるのは気持ちいい。久しぶりに入ったからだろうか、血液循環が良くなったのがわかる。体の隅々に酸素と栄養が行き渡って老廃物や疲労物質が除去されてるな~って感じがする。歩き疲れた足も疲労回復中って感じだ。


 しばらく湯船に浸かってのんびりしてから風呂から上がった。脱衣所には私の服がなくなり、白いシンプルなワンピースが置かれていた。これを着ろというのか?スカートなんてこっちの世界に来て初めて着るな。っていうか、私の服は?下着は?!


 脱衣所を出ると食器類は片付けられ、ロワクレスと侍女らしき女性がいた。


「お風呂、ありがとうございました。あの、私の服は…」


「服はここに片付けた。風呂はゆっくりできたか?では、私も入って来よう。サマンサ、後は任せた」


 女性はサマンサさんと言うのか。ロワクレスに恭しくお辞儀をし、私の手を引きソファへと誘導する。私の下着はこのサマンサさんが片付けてくれたんだ……よね?

 40歳くらいだろうか、なんだか逆らってはいけない雰囲気の人だ。


「こちらにおかけください」


 椅子に座らされ、髪を香油で整えてくれる。甘めの花の香り。何の花だろうか、良い匂いだと思いながらも髪を解かれ、マッサージをされると、昨夜と同じように眠気を誘う。

 私がうつらうつらしているのに気づいたのか、ふふっと笑いながら「気持ちいいですか?」と聞かれ、「…はい」と答えるのに必死だった。ソファのクッションへともたれかからせて、次は手足を揉まれさすられる。気持ちいいなぁと思いながらも、そうしているうちに眠くなってきたので、抗わずに目を閉じた。







 頭を撫でられている。それに気付いて目を開けようとしたが、なかなか瞼が持ち上がらない。

 ふわり、ふわり。優しい手付きに微睡んでいると、額に何かが触れてきた。瞼や頬にも軽く何かが触れてくる。


「ん……、お兄ちゃん……」


 もぞもぞ動こうとしたけれど、ほとんど身動き出来無かった。毛布の感触と、すぐそこに温もりがあったので思わず擦り寄る。あたたかい。小さい頃、よく兄と昼寝をしたのを思い出した。隣から聞こえる心音に安心してくっついて寝てたら「暑い!」って怒られたっけ。

 大きくなってからはそんな事してなかったけど、両親が留守がちだったから、小さい私の面倒を見てくれたのは兄だったな。


 次第に、雨の音が耳に入ってきた。雨なんて久しぶりだな。でも雨具は持ってないから今日は動けそうにない。


 そんな事を考えながらも、「ふっ」という声にようやく瞼が開く。するとロワクレスと目が合ったが…いつもの無表情に困惑の色を浮かべている。


「おはようマリー。よく眠れたようだな」


「ん、……おはよう」


 返事をすると、顔にかかった髪を整えてくれる手の感触。ん?ん~…。ここで覚醒し、パッと目を開け少し上にあるロワクレスの顔を見つめた。


「やっと目が覚めたか?」


「は?」


 気づけばとてつもなく大きなベッドの上、ロワクレスを抱き枕に眠っていた。


「は?」


 ガバッと起き上がり周りを見る。自分がいる場所は何人で眠るのを推定して作られたのだろう大きなベッドの上。しかも天蓋付きである。上流階級の人間達は、こういうベッドで眠るのか?


「先に言っておくが、少し離れて眠っていたのに、擦り寄ってきたのはマリーからだからな」


 振り返ると、確かに自分の背後のスペースの広さに言っていることが真実だとわかる。


「ぐっ……ごめんなさい…?」


 いや、これは私が謝るところ?そもそもなぜ、私はこの人とここで寝てる?くっそー、相変わらずインナーからもわかる筋肉がセクシーだな。細身なのに筋肉質って最強だな。直視できない。


 視線を逸らしながらも、思った事を素直に伝える。


「もしかしてロワは、普段からこんなベッドを使ってる?」


「何を想像されたかは察したけど、もっと小さいし、誰かを連れ込んだことも無いぞ。どこの誰を連れ込んだのかいちいち把握されるし、それが貴族令嬢であろうものなら、確実に面倒な事態になる」


「ああ。王子というのは大変なのね」


 ならば、私は大丈夫なのか?いや、アウトだろ。それにしても私はこんな所で何をしているんだ……?




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