堕ちる魂のドッペルゲンガー
どうぞ、楽しんでくださいね
一つの出来事の中に無数の選択肢があり...そして、その分だけ世界線が存在する。
その世界線へと行くことが世の中的には、パラレルワールドと言って、その世界に行くことで自分の欲しい世界を作ることのできる....我々はそういう研究を....
───ブツンッ────
「くだらない妄想を垂れ流してる大人ども...厨二病も大概にしろ」
そう吐き捨てて、俺はテレビのリモコンをオフへと帰る。
夏の暑さでどうにかなりそうなこんな中で、わざわざこんなテレビなんて見るやつがいるんだろうか。最近の世の中なんて、どうせ...夢なんか見れるほど安くはないんだよ。
俺の名前は、翔。黒霧 翔...拗らせている系男子筆頭だ。
「あぁ!!見てたのにっ!!あんた学校で友達に会うんでしょっ!!早く出ていきなさいな。しっしっ」
「イッテェなっ!!分かったよ。出てくからっ!!」
既に荷物の用意はできている。
玄関に予め置いておいたリュクを手に取り、憂鬱な気分になりつつも外へと足を踏み出した。
「あ、やっと来た。待ったんだからねっ」
「わ、わりぃわりぃ....母さんが、つけてたテレビに少し興味が湧いちまってさ。無理やりリモコンでブチッとしてきたわっ」
「お母さん、かわいそー」
そんで、中学の友達の女の方が、幸....間宮 幸。少しだ悪ガキみたいな性格をしてる。ショートカットの黒髪を赤いカチューシャで留めている結構可愛いやつ。
いつも、こうして俺の家の近くで時間になったら、待ってくれる。
「今日は、翔が夏休みの宿題をやろぉ、っていうから、みんなで集まることにしたんだからね。」
「あー、大丈夫だ。このリュックにしっかり、モノ持ってきているからな。」
「本当に大丈夫なのかなぁ....」
「い、一応調べとくかっ?」
「んー....いや、別にいいや。忘れ物とかあったら、私か、敏夫くんが貸してくれると思うし....」
「そうかぁ....でも、敏夫になにかもの借りるのは、嫌だなぁ...アイツ嫌味っぽいし....」
「敏夫くんは、あれは、嫌味じゃなくて....まぁ、勘違いされやすい性格してるよね。」
曖昧に、幸は笑った。あ、そうだ。今の時間って...どんくらいだ?
俺は、ポケットに入れていたスマホを手に取って、時間を確認する。
「やっぺ。あと、十分で学校に着かないと....」
「ほ、本当だ...い、いそげぇ!!」
俺と幸は、ダッシュで校舎へと向かった。リュックの中に入っている文房具がガチャガチャと音を鳴らしていた。それと同時に金属の音もなっていたが...幸には気づいてないことを祈った。
「遅いぞ。二人とも」
「わりぃ...わりぃ...」
「はぁはぁ...やっと、着いたァ!!翔が、テレビに、夢中になってた。とかで遅くなったのよ。」
「なっ!?おいっ、俺の性にすんなっ!!」
「ふむ。翔....あとで、僕の話を聞いてもらおうかな。そうしたら、この件は目を瞑ってあげよう。」
「げぇ....翔の話って、どうでもいいことが多いんだよ。」
「どうでもいいだと?その口に、ペルセウス座流星群を流し込んでやろうか?」
「.....ちょっと、なにいってんのか。分かんねぇんだけど」
このイケすかないメガネ男子。高身長で、知的な見た目をしているけど...結構ズボラなのが敏夫。こいつは、中学に入ってから友達になった。
事ある事に、自分の知識を引けらかそうとしてきて、正直ウザイのだが...クラスでハブられているところを幸が、翔もボッチだから友達になればボッチ解消だね。とか言って、無理やり友達にならされた。
めんどくせぇ...やつと、友達にわざわざなりたくなんかねぇんだけど...な。チラッ
「なに?私の顔に何か付いてる?」
「あとで、そのカチューシャをねじ曲げてやるから、覚悟しろよ。」
「はいはい。やれるものならやってみなよぉ」
なんか、ムカつくな。
「君たちは、仲がいいのだな。」
『どこがっ!!』
俺と幸はそれぞれを指さして、異議を唱える。
目が節穴なんじゃないのか?.....全く....
そうやって、揉め合いながらいつの間にか図書館に着いていた。
俺と幸は、公共の場所では騒ぐことをしないんだ。これは、自然とそうなっていたわけだけど...
入口に入ろうとした瞬間、スンッと静かになってしまったからか。なにか言いたそうに目を細める敏夫に、俺たちはそのまま、無視して図書館へと入った。
「君たちって、やっぱりお似合いだよ」
『どこがっ』(ボソッ)
「そういうところ」
と、適当な会話をしつつ夏休みの宿題を各々で終わらせることにした。
敏夫は、数学の宿題。幸は、読書感想文。俺は、自由研究。
各々、やることはあったので...それを手早くこなしていく。
......手早く.....
手早く.....
「なぁ、敏夫....自由研究の課題で、なにかいいテーマはないか?」
「.......僕は、宿題で忙しいんだけど....そうだな。今朝、テレビでパラレルワールドについて特集されていた。翔には少し難しいかもしれないが...やってみたらどうだ?」
「......うぅ....夏休みの自由研究研究って、もっとこう....実験したり、標本を作ったりそういうのがあるだろぉおおお....」
「なら、僕に聞くのが間違っている。はぁ....付き合うのもバカバカしく感じてきた。僕は、課題に取り組むよ。」
.......そんなこと言われたってなぁ。扱いにくいだろ。色々と....
「幸ぃい....」
「ん?なに?」
「自由研究がぁ」
「適当でいいんじゃなーい。私本読んでるから...」
ふーん。俺は、幸がなにを読書感想文の本にしたのか興味があったので、タイトルを見てみることにした。
怖いもの大全21〜世界の怖い話をグッグッとまとめたこの1冊をあなたへ〜
大全のくせに、二十一話も出てんのかよ。なんだこのネーミング。絶対、読書感想文関係ないだろ。
「ひぃぁ....あ...ドッペルゲンガーって...そんな怖い話があったのね」
なんだか、ビクビクしながら分厚めな本を閉じて、一呼吸する幸。
.....すぐに、手がその本へと持っていく。
「ひぃあぁあ....ぁ...相手を....殺すっ!?」
なるべく声を押し殺して、恐怖を伝える。
「お、恐ろしいわ。この本....し、自然と手が、この本へと伸びていくんだもの」
それは、お前が読みたいだけだろ。あたかも、怪奇現象のように言うなっ。
敏夫...確かに、こんなの見てたら、バカらしくも感じるわな。
そう思って、敏夫の方を眺めていみると...ペンでなにかを真剣に書いている。
「.....超新星爆発を、どれだけ立体感を出して、鉛筆でかけるかが....」
俺は、耳を塞ぐことにした。数学のプリント一杯に黒と白の対象が味になっている。
.....なんだか、見てはいけないものを見た気がする。忘れよう。
敏夫の折角の意見なので、俺はパラレルワールドについて調べて、書き留めてとくことにした。
2chネルの情報だと、自分の知らない世界に迷い込んでいるような感じがして...知り合いが、全くの別の人に変わってたり....ふむふむ、自分が知らない世界へと足を踏み入れること...きさらぎ駅とかも、その類なんじゃないか?とか....
いや、これ...自由研究ではあるけどぉ....んーぅ....もういいや。これは、これで紙に書き留めておいたら、研究したことになんだろっ。
俺は、ネットで情報集めては、書いて....たまに、図書室で本を借りて情報を補ったりして...メモをとっていった。
「翔っ、翔起きろ」
「お....おわっ.....寝てた?」
いつの間にか、閉館を伝える音がなっていたみたいだ。敏夫の顔の寝覚めのアッブとか誰に需要あんだ....
「凄い、書いたね〜」
「なんかな....調べてたら、色んな人の体験談みたいなのを紙に写したりしただけだけどな。」
「ふーん」
敏夫と、幸はどこまで進んだんだろうな?
敏夫の数学のプリントは、それはもう綺麗な超新星爆発が書かれていた。本当に、こんな事象が起きているのかと...背筋がゾワゾワッとするほどの芸術作品だった。
「お前...数学できる風な顔して、実際はその...」
「翔に図られるほど、僕はちっぽけな存在じゃない。忘れるなよ。僕が残念なやつとでも言いたいのなら、その体の中で真空崩壊を起こす。」
「......お前って、タチの悪い厨二病だよな」
「タチの悪い!?!」
もう、コイツのことは諦めよう。幸は、意外とやることはやっていたようで、用紙にビッシリと綺麗な文字で感想が書かれていた。
「子供たち?そろそろ時間なので、帰ってもらえると嬉しいんですけど」
館内の職員さんが、俺たちに声をかけにきていた。
『あ、すみませんー』
俺たちは、苦笑いでそそくさと荷物をまとめて図書館を出た。
「夏の夜って、遅いんだな」
冬なら夜になってるはずの景色が、まだ少し明るい。車の通りもかなりいい感じだった。セミがミーンミーンとうるさい位になっているので、もう外に出たくないと思わせる。
「そうだ。翔と幸に話してみたいことが、あったんだった。」
「話してみたいこと?なんだ?」
「また星の話かなぁ〜」
まだ明るいので星は見えないけどな。俺の周りをブンブン飛んでいる虫を払いつつ敏夫の言葉に耳を貸す。
「まぁ、星の話ではある。光でなにも見えていないがな。あの青い空の向こうには星がある。光に隠れている奥を僕達は決して見ることはできないんだ。」
「マジでっ!?星って、今も空で輝いているんだ」
「大きな光に隠れてしまっているのね。臆病なのか....それとも、計画的にそうなっているかしら」
「宇宙の心理なんて、神のみぞ知る。だ....全てが、明かされる日がいつか来るのだろうけど」
「.......ボケてるんだか、真面目に言ってるんだか分からないこというな。二人とも」
幸は、えへへへ。とニヤついて、敏夫は、ボケてないと言い張る。これでボケてないんだとしたら、重症だな。
「僕は、ここでお別れだ....あ、そうだ。翔...君に、話があるって朝言ったのを覚えているか?」
「あ?あぁ....なんだ?」
敏夫が、いきなり近寄ってくる。肩と肩がぶつかりそうなところで、敏夫が呟く。
「.....告白、頑張れよ」
「あぁ、ありがとな」
そう。俺は、今日....幸に、帰り道、告白する予定だったのだ。そのための準備は既にできている。この告白が、負けたら...俺は、生きる目的が分からなくなるかもしれない。
「敏夫くん、最後になんて伝えたの?」
「さぁな。大きな星に、押しつぶされんなよ。みたいなよく分からないこと言ってきたな」
「ふーん....」
適当に、作り上げた嘘だけど...
俺は、告白をするならここという場所を決めていた。家の近くの川が流れる河川敷....あそこが、俺の中で一番ロマンチックな場所だと思っている。
「あのんさ、中学生の青春の場所って言ったら河川敷だろ?一緒に、あそこに行かないか?敏夫じゃないけどよ。河川敷だったら、空が開けていて綺麗な星が見えるような気がするんだ」
「えー、えー.....別に、いいけどさ。どうしたの?いつもの、翔じゃないじゃん」
「べ、別にいいだろ。なんだって」
「ふーん?」
月がそろそろ出てくるころだ。俺は、事前に明日は晴れるか?とか調べておいたんだ。絶対成功させるためにな。
そう。予定通り....空を眺める。
「うそ....だろ.....」
雲が....空を覆っていた。な、なんでだ?予報だと、この日は曇りの確率0パーセントだっただろ。どうなんてやがんだ。
「ま....さか....な....ははは」
「だ、大丈夫?いきなり笑い出したりして....」
「ダイジヨウブ、大丈夫だ。」
学校で、敏夫が言っていた。
『告白っていうのは、計画が重要だ。学校の廊下とか、花火が上がった時に言ったりするのが通常であるなら定番だが....その計画が崩れれたら、その計画全てが灰になる。いいか?』
『ま、祭り...?!?学校の廊下っ!?そ、そんなん出来るわけねぇだろっ!!』
『.......なら、星を見ろ。星はロマンチストだ。星は、なんでも導いてくれる。むしろ、星にすら導かれないのなら、必ずお前の告白は失敗に終わる。いいか?失敗終わるからなっ?』
『お、おう....分かったっての』
そういう理由で、予めチェックを怠らなかったのに...まさかの....
だ、大丈夫だろっ....ははは、空は、俺を見ている大丈夫。大丈夫....
曇り空が、俺を見ていた。
「なんか、夜中の川って、ワクワクするね。いけないことしてる気分」
「.....そ、そうだな」
ザァーっという、音が風流に感じる年頃じゃないから...これの良さがわからねぇ。
「ねぇねぇ、鈴虫が鳴ってるみたいだよ?リリリリッって....ん?これ、鈴虫っていうのかな?いや、でも...こういうのいいよね」
「そう....な」
リリリリッって、なんだよ。電話機の音かよ。
「ねぇ?聞いてる?翔が誘ったんだよ?」
「ふぅ....ごめん。ちょっと緊張してた」
「緊張?なんで緊張する....」
「俺さっ!!幸のことが好きなんだ。さちの雰囲気?が、とても心地よくてさ。」
「あ.....そういう。」
俺と、幸は足を止めた。幸の表情は、前髪に隠れて見えなかった。
い、言えたっ!!言えた....よしっ、どうだっ!!敏夫っ!!俺は、言えたぞ
「.....ねぇ、座ろ?ちょっと」
「....?お、おう」
幸は、なにかを考えるようにそっと河川敷の斜面に座った。
「......や、やっぱり、ダメだったか?」
「ち、違うんだよ。嬉しいんだよ。嬉しいんだけどね。」
一泊空ける....な、なんだよ。だけど....なにか、あんのかよ
「その、なんて言ったらいいか。分からないんだよね。ごめんね。多分、翔は凄い考えて言ってくれたと思うんだ。でもね。こういうの初めてだからなんて言ったらいいか分からなくて.....」
「あ.....うん」
俺は、なんとなく察してしまった。振られたのか。俺....
「もうちょっと、時間が経って自分の心と折り合いがついたら、話すから」
「う....ん。そうだな。いや、おう。分かった。そうしてくれ」
多分、そこで振られるんだろうな。
「ごめんね。私が、バカなばっかりに」
「い、いいんだよ別に」
そうして、俺と幸は帰った。
バカだなぁ....俺.....なんで、好意がないって分からなかったんだろ。
なんで、付き合いたいなんて言っちゃったんだろ。
パラレルワールド...行けるならいきてぇよ。
「あ、帰ってきたの?遅かったねぇ、ご飯......どうしたのさ。その顔」
あぁ....クソ....あぁ.....クソ....クソ......
俺は、走って自分の部屋へと向かった。
そして、すぐにベットに横になった。
「ぁ.....ぅ.......ぐっ......」
涙が止まらなかった。ボロボロと、自分が分からなくなるほど涙が零れて....あぁ、なんて言ったらいいんだろ。
もう、終わりにしないとダメだよな。って....
「あぐっ.....」
唇を噛みちぎる。
俺が....彼女のこの恋を忘れる前に....俺が、好きだと感じてる今のままで....
すぐに、ベットの下にあるカバンからそのモノを取り出す。決めていた。はじめから....ダメだったら、もう俺に生きてる価値なんかねぇ...
保護カバーにそっと手をつけて、引き抜く。キラキラとした新品の輝きが窓の外から照りつける月明かりを反射させる。
「今頃になって、ようやく出てきやがったのかよ」
真っ赤に晴らした目で、月を睨む。
そっと、首へそれを持っていく。それから....それから....それから.....
プルプルと、両腕が震えだして....俺は、そっとそれを床に落とした。
「クソ....」
もう一度拾い直して....そっと、机にそれを置く。保護カバーをボタンで付け直して手に握ったまま寝る。明日は....明日やるから....
「俺さっ!!幸のことが好きなんだ。その幸の雰囲気?がとても心地よくて....」
なん、だ?なんで、俺はまた同じ光景を見ている。
「...あー...」
「俺は、幸のそのいつも頭に付けているカチューシャが好きだ。他にも、そのなんだかんだ整った顔も憎たらしくて好きだ。いつもいじわるそうな顔をしちゃうクセが好きだ。それから...それから....」
「や、やめてっ!!もういいから。恥ずかしい」
顔を真っ赤にした幸が、俺の...いや、俺が見ている俺の前にいた。
恥ずかしそうに頬を赤らんでいる。
『これは、なんだ?』
「ご、ごめんなっ!!ま、周りを見なかったよな。すまん。」
「い、いいよ。別に....」
月明かりが、彼と彼女を照らし出していた。
「その、さ....ちょっとだけ座ろう?」
「お、おうっ!!」
なんだか、いい雰囲気の二人だ。なんで、俺はこんなところで、こんな景色を見ているんだ?
「その....さ、私、上手く言うことができないんだけどさ....」
「うん」
「ちょっと、なんて言ったらいいのか分からなくて」
「顔赤くなってるよ。」
「こ、これはっ、恥ずかしいこと言った翔が....わるい....じゃん」
「......俺に好意があるの?」
「.....あ、あるよっ!!あるわよ。変に....前向きな性格とか、そういうのめっちゃ憎たらしくて好きよ」
「憎たらしいわ余計だろっw」
『おい....やめろ。』
「でもさ、答えはちょっと待ってくれないかな?きちんと、答えをだしたいの」
「そうなんだ。うん。わかった。」
『やめろ.....やめろよ。』
「でもさぁ....私、翔が私のこと好きだなんて気づかなかったなぁ....ずっと、嫌いなんだと、思ってた。」
『やめろって....なんで、こんなの見なきゃいけないんだよ』
「確かになw俺、ずっとお前と話す時めんどくさい性格してると思ってたわっwでもなぁ....好きだって分かったのは結構最近なんだぜ?」
『うるさい....そんな事言うなよ』
星は、大きな太陽に隠れてしまう。パラレルワールドは、無数に存在する。
変な世界に迷い込んだ感じだって....
いくつもの、言葉が頭の中を過ぎる。
『ドッペルゲンガー....相手を殺すと....自分が本物になる』
どこかで聞いた知識なような気がする。
俺の手元には、ナイフがあった。これは....俺が、自殺しようとしたナイフ....
『シッ.....!!!』
素早く、保護カバーを解いて、偽物の胸へと手元ナイフを突きつける。
「計画的だったのかしら?」
きっと、そんな意図なんてなかっただろう。もしかしたら、光を殺そうとして影を落としているのかもしれない。
「神のみぞ知るだな」
きっと....これは、神様の導きなんだ。だから、俺は俺を殺すことが許されるはず....
ナイフは、自然と彼の中へと入っていく。どこが、心臓なんだ?
「そういえば、俺お前に会う前に、変な夢を見てさ....俺が、振られてしまう夢で、こんなのある訳がないと思って今、話してみたら.....」
なにかが、プチンと切れたような気がした。
「話してみたら、どうしたの?きゃ....な、なんで、いきなり寄りかかってくるの」
「.......」
「ね、ねぇ....どうしたの?ねぇ、答えてよ。ねぇ.....」
俺は、ただ自分のことを見ていた。
ただ、呆然と.....
「翔?しょうっ!!ねぇっ!!どうしたの?返事してよっ!!しょうっ!!」
俺は、本物に....なってない?おかしい?これで、俺が本物になる....はず....
「あんた.....誰よ」
『は?』
「あんたが、翔を殺したの?ねぇ....答えてよ。ねぇぇええ!!」
彼女の目の中で、黒い影の中にいる黒い男の人が写った。顔が見えない。まるで、俺じゃないみたいだ。
『違う。俺は....違うっ!!違うんだっ!!』
「人殺しっ!!返してよっ!!返してよっ!!私たちの未来をっ!!」
『俺は、そんなつもりじゃなくて.....』
「化け物っ!!化け物っ!!私の翔を返してよぉおおおおお!!!あぁああああああ!!」
悲痛な叫び声が、俺の耳に入ってくる。なんで....なんで、こんな.....こんな.....
「翔.......どうして、あなたは死んじゃったの?まだ...私は、あなたに答えを言えてない.......」
ベッドの上で、翔を抱えている幸。
まるで、なにも見ていないかのような無機質な瞳が、彼女に笑いかけていた。
「......私......嫌いなんて....ごめんなさいなんて....言ってないよね?」
不気味にニヤついている翔の顔が、どこか....人形のようで....
「翔....翔.....しょう....」
そっと、体を抱き寄せる。幸は、なにかを失ってしまったかのように、それを抱き抱える。
「もしも....パラレルワールドがあるのなら、あの時に戻りたい。あの帰り道へと.....」
静かに、涙を流した。
ホラー企画だせたっ!!もう、この時を待ち遠しくしていましたよ。浅い知識で申し訳ありません。
8000文字という長い文章にしてしまったのは失敗でしたぁ...((泣
本当に、読んで頂きありがとうございます。
(要するに、NTRしようとして自分に返り討ちされる話ってことだな...救えねぇ)