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日傘 オリーブ




「あらあらあら」


 天界から地上へと降り立った女神は戸惑った。

 熱々の道路に悪魔がうつ伏せになっていたのだ。


「もしもし」


 女神はしゃがんで悪魔の耳元で問いかけたが、返事はなかった。

 どうやら気絶をしているらしい。


 人間を悪の道にそそのかす悪魔は、本来ひっそりしずやかな暗闇に住む生物。

 けれど近年の著しい気温上昇下降、いつ何時も煌びやかに放つ光に耐えきれず、職務を放棄して女神や天使に転職する悪魔も続出しているらしい。

 人材が豊富になったおかげで、女神もこうして地上に降り立って地上を謳歌できるわけだが。


 この悪魔はこの暑さと光に負けずに頑張って来たらしい。

 ほろりと涙を流した女神はオリーブの日傘の中に入れようとして、はたと思い留まった。

 このオリーブの日傘に入った者は問答無用で浄化されるのだ。

 つまり、この悪魔は悪魔ではなくなるのだ。

 悪魔として頑張っているのに、悪魔でいられなくさせるのは、悪の道だろう。


 いけないいけない。

 けれどこのまま放ってもおけない女神は何かいい案がないかと辺りを見回しては、或る店を見つけたので、その中へと入って行った。






「………う」

「気がつかれましたか?」

「う。あ。あんたは女神!」


 悪魔は飛び跳ねて起き上がろうとしたが、眩暈を起こして身体を沈めた。

 冷たいマットの上へと。


「これ。あんたがしてくれたのか?」


 熱々の道路に倒れ込んでいたはずだった。

 けれど悪魔は今、冷たいオリーブ色のマットの上、オリーブ模様で扇風機付きの日傘の下と、とても快適な環境下で、仰向けになって寝転んでいる事に気づいたのだ。


「ええ。頑張っていらっしゃるのですね。こんなにお辛い環境でも一生懸命。けれど、身体を壊してはいけません。夏は諦めて、秋や冬にいらしたらどうでしょう」


 流石は女神。

 なんて優しいんだ。

 思った瞬間、悪魔は滂沱と涙を流し、そして、頷いた。

 今は。


 刹那。

 女神になればこの女神と一緒に居られるな。

 なんて甘い誘惑が頭を流れたが、悪魔は踏ん張った。

 仲間が刻一刻と天界へと昇る中、決めていたのだ。

 例えば自分だけになったとしても、悪魔は止めないと。


 悪魔は悪の道へと人間をそそのかすが、それは人間を鍛える為だ。

 人間は悪魔を撥ね返して悪の道を進まないようにするのだ。

 悪魔は必要だ。

 人間に多様な対応ができるようにさせる為に。




 だから。

 自分も鍛えて、鍛えて、鍛え抜いて。

 自分からこの女神が掲げるオリーブの日傘に飛び込もう。

 悪魔はそう思ったのであった。




 オリーブの日傘に飛び込んでも浄化できないくらい立派な悪魔になるのだ。


 いつか必ず。


 この眩い笑顔を想像で見るのではなく、しかと瞳に映すのだと。











(2023.6.8)




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