なれそめ
「こんにちは」
喋ったぞ、この女
「乙部香美様の弟様、明様ですね?」
「なんで俺の名前知ってんだ、怖ぇよ」
て言うかこいつ人間なのか?
幾ら機械工学の技術が進歩したと言っても、今の技術では、このレベルの人造人間?を作るのは難しい筈だ。
しかし、この人間離れした完璧な美貌。
人には元来ある筈の肉体的な歪み、それがない。
「お姉様から手紙を預かっています。
こちらをどうぞ。」
この時代に、手紙とは中々古臭いものを用意したな、と思いつつ彼女が両手で渡してきた三つ折りの紙を、右手で受け取る。
「明へ
26歳にもなって仕事もしないで、怠惰を極めている、引きこもりニートな弟くんに、お仕事を用意しました。
最近お姉ちゃんは、人造人間の研究をしているのだけど、
AIに人間を学ばせるには、長時間人間との関わりを持つことが好ましいことが分かったの。
でもね、人間を理解するには何年も一緒に居なくちゃいけないから、お姉ちゃんちょっと忙しいし、時間のある人に頼もうって思ってね。
つまるところ、明にはシエルちゃんの人間学習ための人間触媒になってもらおうと言うわけです。
シエルちゃんは脳だとか、筋力だとかを除けば、家事の少しできるただの人間みたいなものだから。
ご飯とかは作ってあげてね。
じゃあ、仲良く、優しくしてあげてね。
香美より。」
姉からの仕送りで生かされてるにも関わらず、こう言うのもなんだが。
「報連相の欠けらも無いのは、相変わらずだな……」