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リリアンの誕生日③


 子供の頃はよくお友達の家に呼ばれたが、大抵の友達はリリアンの生い立ちに同情した親に促されて渋々招いていたため、呼んだ方も呼ばれたリリアンも居心地の悪い思いをしなければならなかった。


 それなのに、ユミアナは、リリアンをぜひにと言ってくれたばかりか、お礼に人気店のスイーツを用意しておいてくれると言う。


 リカルドは彼女達が報酬をスイーツで支払うことに文句を言っていたが、予約をするのに何時間も並ばなければならない有名店のスイーツがどうしてそんなに気に入らないのか、リリアンには全く理解できない。


 二人で一緒に大好きなお裁縫をして、それをブリーズ☆シスターズの白魔法使い自慢のアイテムとして持ち歩いてくれる。


 それだけでも心躍る素晴らしいイベントなのに、スイーツまで用意してくれるとは、何だか申し訳ないような気持ちになってしまう。

 

 せめてもの感謝の印に、街一番の人気者のパーティーに相応しいサコッシュを作ってあげなくては。


 誘いがあった時の様子では、ユミアナは今日がリリアンの誕生日だと気がついてはいないようだったが、小さい頃から友達に自分の誕生日を覚えてもらえないことなどリリアンにとっては当たり前の事だったし、人気者のパーティーのメンバーのユミアナにそんな期待をするのは何だかとても傲慢な気がする。



 リリアンは手短に朝の仕事を済ませ、念入りに足を洗って靴下を履き替え、お気に入りの黒いドレスと黒い靴を履いた。


 もちろん、スカートの下はこの前作ったばかりの真っ白なペチコートだ。


 このペチコートは以後かなりブラッシュアップされており、裾にはリリアン自慢の綿レースが二段もあしらわれていた。



 ヤンセンの結婚式の時に新調した白いローブを抱えたリリアンが台所へ入ると、リカルドが既に昼食の支度を整えてくれていた。


「あのう、リカルド様、午後からユミアナさんのお家へ遊びに行くことになっているので、お土産に叉焼まんを少し持って行っても良いですか?」


 リリアンは、せいろにぎっしり並べられている巨大な叉焼まんを見て言った。


「リリアンさんにアイテム入れを作らせる上に手土産まで持たせるなんて図々しいやつだ。」


 リカルドは憤慨して言ったものの、


「まあ、たくさん作ったからな、リリアンさんが良ければ好きなだけ持って行きなよ。」


 と、自ら籠に叉焼まんを詰めてくれた。


「良いんですか? ユミアナさんきっと喜びます! リカルド様、大好き!」


 リリアンが感激して踊り回ったので、とっておきのペチコートがスカートの裾からひらひらと覗いた。


 リカルド様、大好き!


 リカルド様、大好き……!


「…………あいつら、甘いもん好きだろうから、こっちのタロイモのあんまんも持っていけば?」


 リカルドはあんまんの入ったせいろもリリアンの前に置いた。


 ケーキをいただく事になっているので昼食をお腹いっぱい食べる事のできないリリアンだが、湯気をたてた蒸したての叉焼まんを前にすると、もう何十個と食べている筈なのに手を伸ばさずにはいられなくなってしまう。


「……やっぱり、ひとつだけ。」


 リリアンはふかふかの叉焼まんを取り、いつものように火傷に気をつけながら、ぬいぐるみをずらしてひと口かじってみた。


「あっ、いつもと味が違う。」


「毎日同じじゃ飽きちゃうだろ。」


 リカルドはリリアンにお茶を淹れながら言った。


「美味しいっ。いつものやつも美味しいけど。どっちも美味しいな。」


「良かった。」


「ふふふ。」


「へへ。」


 今日はリリアンの誕生日。


 誕生日の、幸せなお昼ご飯の風景だった。




 いつもありがとうございます。

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