リリアンの誕生日②
女の子同士ならば、知り合ったらまず初めにお互いの誕生日を聞くだろう。
星座や守護動物でお互いの相性や理想の恋人を占ったりすれば一気に距離が縮まり、すぐに仲良しになれるのだ。
昔から友達を作るのが苦手なリリアンだったが、最近はヤンセンやキンバリー達と仲良くなれたので、もちろん皆の誕生日も把握済みだ。
けれども、リカルド相手に誕生日の話題を振るのも何だか気恥ずかしく、リカルドからそんな話をするはずもないので、リリアンとリカルドはお互いの誕生日を知らないままだった。
以前リリアンはリカルドの誕生日をこっそりイーラーに聞いてみた事があったが、イーラーは一瞬、ぴたりと動きを止め、
「知らない。」
とだけ答えた。
「ひにゃっ。イーラーさんはリカルド様と仲良しじゃないんですか?」
「仲は良いけど別に興味ないもん。怪我した時に治療した傷なら隅々まで覚えてるけど。」
「ぶにゃーっ!」
面倒臭そうに答えるイーラーにリリアンは発狂寸前になった。
「イ、イ、イーラーさんのえっち!」
「はあ? 意味わかんない。」
イーラーはそう言い捨てるとすたすたと歩いて行ってしまった。
私だって! 私だって、怪我をして意識を無くしたリカルド様のお世話をしながら、あんな場所やこんな場所を見てるんですからね! 誕生日は知らないけど!
リリアンは心の中で叫んだ。
イーラーの誕生日には彼女の大好きなバライチゴのジャムでレイヤーケーキを作ってあげたり、毎年それなりに祝ってあげているのに、ジョシではないからお返しという発想はないとみえ、催促されればおめでとうくらいは言ってくれるが特に何かしてくれる訳ではない。
したがって、リカルドがイーラーの口からリリアンの誕生日を知らされている可能性はないだろう。
イーラーと言えば、早朝から市長の遣いがやって来て街へ出かけてしまったので、おめでとうの催促をする暇もなかった。
そんな訳で、リリアンはリカルドに誕生日を知らせないまま誕生日を迎えてしまったのだった。
リカルドにおめでとうを言ってもらえないのはちょっぴり寂しい気もするが、誕生日にひとつ屋根の下で大好きな人と共に過ごす事ができるなんて、以前の自分を考えたら想像もつかないほど幸せなことだ。
それに……。
実はこれからリリアンにとって生涯の一大事にカウントされるほどのビッグイベントが控えていた。
本当を言えば、このイベントに比べたらリカルドに誕生日を祝ってもらえない事など大して残念な事でもなかった。
何と、何と今日は! あの! ブリーズ☆シスターズの白魔法使い、ユミアナの家に招待されているのだ!
けもの族の女の子四人組、ブリーズ☆シスターズ、略してB☆Sはとりわけ若い女の子達に人気のあるパーティだ。
流しの賞金稼ぎのように街から街へ渡り歩くことはせず、地域に密着した案件を堅実にこなす事に定評があり、めいめいのスキルはそこまで高レベルではないが、息の合ったチームプレーで実力以上の力を発揮しているようだ。
そして、B☆Sのメンバーのひとり、白魔法使いのユミアナから自宅に招かれたのだった。
なんでも、回復薬やアイテムを入れるために腰に下げておくサコッシュを一緒に作って欲しいのだと言う。
今、冒険女子の間では遠く離れた場所にあるアイテムボックスと空間を繋げることができるサコッシュを自作するのが流行っているのだが、機能、デザイン共に優れたものを作るのは至難の業なのだ。
しかし、裁縫の得意なリリアンとユミアナの魔法があれば、この街はおろか大都市リーチュアン市のアイテム屋で売っている物よりもずっとおしゃれで機能的なサコッシュが作れるに違いない。
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