ザ・オールド・ファッション・ウィッチ
リリアンのルームメイトでおっさんと仲良しの薬草魔女っ子おばちゃんイーラーの昔話です。
最近はもうしないのかも知れないが、昔は当たり前のように魔女が家にやって来て、家畜の病気を治したり、病気の予防のまじないと交換で子供を貰っていた。
魔法をきちんと学びたい子供にとっても、親に苦労をかけて行けるともわからない魔導学院を目指すよりも手っ取り早く実技を習得できるから、自ら進んで魔女のところへ奉公に行った。
昔は魔術とは才能のひとつだから、教えてもらって上手くなるものではないと言う考え方が一般的だった。
師匠は師匠で、自分から弟子を求めて来るくせに、簡単に自分の技術を教えてくれたりしない。
だから、弟子達は師匠の仕事を見ながら盗むようにして技術を学んだものだ。
イーラーもそんな子供のひとりだった。
両親は花市場で修道院へお供えする花輪を売っていて、イーラーも幼い頃から両親を手伝い、小さな白い花を数珠繋ぎにしたお供え物を作っていた。
大きな蒼い瞳と緑がかった金髪の愛らしい少女が店の屋台に座っているだけで、花輪はいつも飛ぶように売れたけれど、それでも暮らしは楽ではなかったから、薬草魔女からイーラーを欲しいと言われた時は、両親はお互いの為になるからと二つ返事で応じた。
魔導学院よりもずっと門戸が広く、より実用的な技術を学べる魔術学校の普及で魔術の修得方法も昔とはずいぶん様変わりした。
友人の孫娘のキンバリーやユミアナも魔術学校を卒業し、魔法使いとしてのキャリアを重ねている。
そればかりか、最近はハウツー本なども出回っていて、リカルドのようなドシロートでもそれなりの事ができるようになってきている。
従って、小さな頃から魔女の元で修行を始める者も少なくなってきた。
おそらく、少女の姿をした薬草魔女も時代とともに姿を消すことだろう。
「お前さんは弟子を取る気はないのか?」
紅米の焼酎をちびちびとやりながら、リカルドはイーラーに尋ねた。
「前にいたおばちゃんも、リリアンさんも、助手みたいなことはやってるけど、薬の調合は教えてないんだろう?あんたの知恵と技術がこのまま失われるのは社会的にも大きな損失だよ。」
「教えるの苦手だから。」
イーラーはそれだけしか言わない。
「そういやあ、こないだ久しぶりにローンに会ったけど、あいつは良い弟子を見つけたみたいだな。」
ローンとは、イーラーの古い友人で、ユーュエ山で養子縁組の斡旋をしている魔女だ。
先日訪れた時、リーンと呼ばれる少女が住み込みで働いていたのだった。
何もわかっていないリカルドに、イーラーはふん、と鼻を鳴らした。
「そうねえ。スレッジ・ハマー号の赤ちゃんは見込みが無さそうだけど、もしもサーブにも赤ちゃんが産まれたら、お願いしてみようかしら。あの子の子供も高い能力を持っているに違いないからね。」
「何言ってんだ? お前……大丈夫か?」
リカルドは首を捻った。




