第五十五話 対決✴︎ユーリーン vs リカルド
「それで、B☆Sの皆さんがおそろいで私にどんな御用ですか?」
四人にお茶を振る舞いながらリリアンは尋ねた。
キンバリー、エミリア、ユミアナは、リリアンと共に中庭のテーブルを囲み、イーラーが張り切って用意してくれたお菓子やジュースをご馳走になっていた。
ユーリーンひとりが少し離れたところにいたが、しばらくすると、様子を伺いながら耳を寝かせてそろそろとテーブルに近づいた。
「ユーリーンさんも、どうぞこちらへ。」
しかし、リリアンが手招きすると、ささっと元いた場所に戻ってしまった。
「ユーリーンはちょっと警戒心が強いのよ。」
「あんまりあっちを見ないで、知らんぷりしといてあげて。」
三人が声をひそめてリリアンに教えてやる。
「わかりました。」
リリアンは頷いた。
(知らない人が家に来た時の猫ちゃんか、私は!!)
ユーリーンは憤るが、やはりリリアンが怖くて近寄れない。
「それより、御用は何でしょうか?」
リリアンが改めて尋ねる。
「実は……。」
ユーリーンを除く三人は顔を見合わせ、訳を話し始めた。
「まあ、リカルド様の銛とクロスボウをエミリアさんに?」
「私、この前怒られたから何か怖くてさあ。」
キンバリーが頭を掻きながら申し訳なさそうに先を続ける。
「リリちゃんから頼んでくれない?あの人とすごく仲良しでしょう?」
「ひにゃっ。」
あの人とすごく仲良し
あの人とすごく仲良し
あの人とすごく仲良し
あの人とすごく仲良し
「キンバリー、この子固まっちゃったよ。」
「やっぱり無理言っちゃったかな。」
エミリアとユミアナが心配そうに囁いた。
「そ、そうだね、ごめんなさい、リリちゃん、今の話は忘れ……」
キンバリーがそう言いかけると、
「いいえ!!!」
リリアンは勢いよく立ち上がった。
「わっ、びっくりした!」
「お任せください!
リカルド様にお願いしてみます!
この命に換えてもお借りしてきます!!」
そして、編み物を放り出してぴゅーっと走り去った。
「ええっ!?そんな、命まで張る必要は……。」
キンバリーが慌てて言うが、リリアンの姿はもう見えない。
「大丈夫よ。あの子なら。」
リリアンの正体を知っていると信じているユーリーンがお菓子を頬張りながら言った。
「ユーリーン、あんたいつの間に?」
キンバリーが呆れ顔で言った。
「えー。クロスボウと銛を?」
薪割りの手を休め、リカルドはリリアンの言葉を繰り返した。
「はい、エミリアさんにぜひ貸してあげて下さい。」
リリアンは声を弾ませて頼む。
「でも、あの銛、気に入ってるんだよなあ。無くされたら困るし。」
リリアンの願いならば、例え火の中、水の中をも厭わず、炊事でも洗濯でもやるつもりだが、正直、あの四人組には関わりたくないと思っているリカルドは言葉を濁す。
「そうなんですね。でも、わかります。私も、お気に入りの指貫きを人に貸したりするの嫌だし。」
リリアンは、憧れのパーティー、B☆Sの期待に応えられないことがわかり、しょんぼりと肩を落とした。
「すまないなあ。」
「いいえ、私こそ、図々しいこと言ってすみませんでした。
皆さんから、私とリカルド様がとても仲良しだから、代わりに頼んでって言われたので、つい。」
「貸そう。」
「え?良いんですか?」
「良いとも。小屋にあるから取ってくる。」
リカルドは踵を返し小屋へ銛を取りに行った。
「ありがとうございます!リカルド様!」
後ろからリリアンの嬉しそうな声が追いかけてくる。
リカルドは前を向いたまま手を振って応えた。
ああ、やっぱりリカルド様は心の広い優しい方だわ!
大切な銛をエミリアさんに貸してあげるなんて。
リリアンはスキップをしながら中庭で待つ四人の元へ戻った。
リカルドは小屋へ向かって歩きながら、つい顔が緩んでしまうのを抑えるのに必死だった。
めんどくさいお騒がせな四人組だと思っていたが、洞察力や分析力は人並み以上のものが備わっているようだ。
若者の可能性を伸ばすためにも、いろいろな武器に挑戦するのは良いことだ。
そうか、俺とリリアンは仲良しに見えるのか。
そうか、そうか。
銛とクロスボウを携え、中庭へ入って来たリカルドを見て、ユーリーンは飛びあがった。
この間の黒い大男はイーラーの使い魔だったのか!?
慌ててテーブルから離れ、戸口の影に身を隠した。
「あ、やっと慣れてきたところだったのに。」
リリアンが残念そうに言う。
「知らない人がまた来ちゃったからね。もう一度最初からやり直しだね。」
と、キンバリー。
(だから、私は猫ちゃんかっ!?)
「こちら、リカルド・クラークソンさんよ。」
キンバリーが三人にリカルドを紹介した。
あらかじめキンバリーからしつこく言われていたのでそれほど期待はしていなかったものの、相手は軍事作戦部隊において平民の最高階級である最上級兵曹長という肩書きを持ち、同時に暗黒の剣の使い手である、闇の戦士リカルド・クラークソンだ。
イケオジではないにせよ、それなりの風格は備えているだろう、と、思っていたのに、現れたのは薄いシャツに腹巻きだけの、いきなり道端で露店を開きそうな、あまりに残念なおっさんだった。
「こんにちは。」
「はじめまして。」
エミリアとユミアナは色々な緊張感を伴いながら揃って挨拶をした。
ユーリーンは戸口から半分だけ顔を出してリカルドを睨みつけている。
なるほど、イーラーのところで働いているこのおじさんに手を出したってわけね。
こ、こ、このおじさんも、め、めちゃくちゃ強かったけど、コレを手懐けるなんて、やっぱりリリアンは只者じゃないわ!
(ほら、ユーリーン、ちゃんと挨拶をして。)
キンバリーがユーリーンを懇願するように見る。
せっかくリリアンが頼んでくれたのに、礼儀知らずだとおっさんにヘソを曲げられたらエミリアがかわいそうだ。
(わ、わかってるわよ。)
ユーリーンも頷き返す。
でも、確かあの時このおじさん、私に見つかって慌ててたわね。
つまり、私の方が優位にたっているんだから、恐れることはないわ。
ユーリーンはそろそろと近づき、またもや腕を組んで顎をそらした尊大な態度で言った。
「この間はどうも。」
いつも読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、良いねして下さる方、ありがとうございます。
おっさんとリリアンの関係は全然進展しないようで少しずつ進展しますので引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです。




