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第五十四話 対決✴︎リリアン vs ユーリーン


「リリ、お友達が遊びに来たわよ。」


 イーラーは、いつものように中庭で編み物をしているリリアンに声をかけた。


「私に?」


 リリアンは驚いて尋ねる。


 自分をわざわざ訪ねて来てくれる友達なんていたかしら?


 ヤンセンお嬢さんはご婚礼の準備で忙しいだろうし。


「さあさあ、こちらへどうぞ」


 リリアンが考えているうちに、イーラーがそそくさと客を招き入れると、


「リーリちゃん。」


 ひょっこり顔を出したのは、けもの族の魔女キンバリーだった。


「まあ、キンバリーさん、こんにちは。」


 しかし、客はキンバリーだけではないようだ。


 キンバリーが手招きをすると、二人のけもの族の女の子が遠慮がちに中庭に入って来た。


 二人はキンバリーとほとんど同じデザインのユニフォームを着ており、一人はキンバリーと同じく杖を携え、もう一人は背中に散弾銃を背負い、両腰にも拳銃を刺している。


「えへへ、こんにちは。」


 銃を持っている方が恥ずかしそうに頭を下げる。


「あっ!」


 リリアンは顔を輝かせて前に進み出た。


「ブリーズ☆シスターズ、略してB☆Sのエミリアさんですね!」


「あ、知ってた?」


「もちろんです!

吸血コウモリ駆除個人ランキングベスト10に二週間連続ランクインしてましたよね!」


「へへ、詳しいね。」


 エミリアは照れながら頭を掻く。


「はい、ギルドの広報はいつも読んでます。そちらは、白魔法使いのユミアナさんでしょ?」


 リリアンはユミアナの方を見た。


「あ、あたしのことも知ってるの?」


 ユミアナは自分を指さす。


 後方支援の魔法使いは、パーティーの中では決して華やかなポジションではない。


 親が女の子に就かせたい仕事としては人気が高いのだが。


「はい、B☆Sの白魔法使いは回復魔法がすごく得意だってイーラーさんが言ってました。」


「イ、イーラー先生が、あたしの魔法を褒めていたの!?」


 ユミアナがびっくりしてイーラーを振り返ると、イーラーはニコニコしながらうんうんと頷いている。


 そんなこと言ったっけ?と内心考えているが、せっかく来てくれたリリアンの友達にあけすけなことを言ったりはしない。


 ユミアナはユニフォームのボタンをいじりながらもじもじと話しだした。


「そっ、そっかー。

あたしら二人、いじめられっ子だったから、ケガさせられても親に心配かけまいと回復魔法を独学で覚えたんだー。その苦労が報われた気分。」


「い、いじめ?

こんなに強いお二人が!?」


 リリアンは我が耳を疑った。


「小さい時は違ったのよ。ダサいでしょ?」


 エミリア、ユミアナは顔を見合わせ苦笑いをした。


「とんでもない!かっこいいです!

お二人は、街のいじめられっ子達の希望ですね!

オシャレでかっこかわいい四人組、ブリーズ☆シスターズはみんなの憧れなんです!

私も戦士か魔法使いだったらなあ。」


「そんな。へへへ」

「えへへへ」


 リリアンの心からの賛辞に二人は恥ずかしそうに笑った。


「そう言えば」


 リリアンはキョロキョロと周りを見回した。


「B☆Sのセンター、ユーリーンさんの姿が見えませんけれど、今日はご一緒ではないんですか?」


「あれ?」


 キンバリーもキョロキョロする。


 ユーリーンは裏庭に続く戸口で身体を半分だけ出してこちらをじっと見つめていた。


「そんなところで何してるの?

早くいらっしゃいよ。」


 キンバリーに促され、ユーリーンは耳を寝かせて警戒MAXという体でそろそろと前に出た。


「わあ、ユーリーンさん、初めまして、リリアンです。お噂はかねがね。」


「!!」


 思わぬ先手を打たれ、ユーリーンは怯む。


 この前森の中で会ったばかりなのに、よくもしゃあしゃあと。


 そう言えば、あの時も私のことなんか一瞥もくれなかったっけ。


 実際には、発酵した山葡萄を食べて酩酊したリリアンは、ユーリーンどころかその時のことは全く覚えていない。


 山葡萄を口にしてから数時間ののち、割れるような頭痛と共に自室のベッドで目を覚ましたのだった。


 そんなことは知る由もないユーリーンは、自分のことなどハナから眼中にないとバカにされているのだと思った。


 ようし、私だってB☆Sの花形戦士、修羅場はそれなりにくぐり抜けて来たんだからね。


「この間はどうも。」


 身体を斜めに構えて腕を組み、顎をそらした尊大な態度でユーリーンはそう言った。


「え?以前、どこかでお会いしましたっけ?」


 ぬいぐるみの猫が首を傾げる。


「なっ!」


 何の感情のこもっていない目がユーリーンには不気味に映った。


「リリ」


 ハッ、と、ユーリーンが後ろを振り返ると、イーラーが立っている。


「お菓子とジュース用意しておくから、後で取りに来なさいね。」


 菩薩のような微笑みのイーラーが優しく声をかけ、台所へ入って行った。


 普段、あまり友達の話をしないリリアンの元へ、いっぺんに四人も訪ねて来たので嬉しくて仕方がないのだ。


 ユーリーンはリリアンを睨みつけギリギリと歯ぎしりをした。


 そうか、イーラーの前だから知らんぷりしてるのね。


 大した役者ね、恐ろしい子………! 



「いたっ!」


 キンバリーがユーリーンをはたいた。


「ちょっと、その態度は何よ。」


 いつもはユーリーンの味方をしてくれるエミリアとユミアナさえも、呆れたと言う視線でユーリーンを見ている。


「…………!!!」


 この私が後ろを取られるなんて。


 しかも、空気を読むのがヘタっぴなキンバリーに不作法を指摘されるとは。


 それもこれもあの子のせいよ!


 鋭い目でリリアンの方を見ると、ぬいぐるみをかぶったリリアンがこちらを不思議そうに見ている。


 しかし、ユーリーンには猫の目がとてつもない威圧感を放っているように見えた。


 き、き、今日のところは勝ちを譲ってあげるわ。


 命拾いしたわね、リリアン。


 次はこうは行かないわよ……。


「はじめまして、リリアン。」


 ユーリーンはボソリと呟いた。


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