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第四十五話 戦士ユーリーンの憂鬱

 魔女キンバリーの放つ火炎魔法に怯んだ敵の隙をつき、黒煙の中から躍り出た戦士ユーリーンの剣で致命傷を与える。


 後方からはエミリア、ユミアナ姉妹がそれぞれ射撃と防御魔法で前方の二人の支援をする。


 四人パーティーのごく基本的な陣形だが、それぞれの特性や性格にぴったりとその役割がはまり、特にユーリーンとキンバリーは黄金のコンビネーションと絶賛された。


 しかし、それも下級の魔物を相手にしていた時までだ。


 敵のレベルが上がるにつれ、次第に、攻撃専門のキンバリーまでもが、ユーリーンを護るため防御魔法を使う回数が増えていくようになった。


 キンバリーが、戦闘中は攻撃に専念できるよう、あらかじめ武器や防具を強化しておく魔法の特別講習を受けたりしているのも知っている。


 ユーリーンは、自分がパーティーの足手まといになりつつあるのに気がついていた。


 剣術の鍛錬は怠らずにしているつもりだが、現在のレベルを維持するのも精一杯だ。


 キンバリーから遍堀の魔物退治の話を持ちかけられた時も、ユーリーンは事前に色々調査をして、報奨金の額の割に簡単な仕事ではないとわかっていた。


 被害に遭った人の話を聞いたところ、魔物の表面はヌメヌメしたもので覆われており、剣も弾丸も矢も跳ね返すという。


(レンリーの悩ましい姿につい油断した男達の恥を隠すための誇張もかなり入っているので、実際はそれほどでもないのだが。)


 自分が泥にまみれて沼に引きずり込まれるところを、キンバリーに助けられる。


 そんな無様な結果になるのは目に見えていたから、適当な理由を並べて反対した。


 こちらの胸の内を知ってか知らずか、エミリアとユミアナが何かにつけてユーリーンの意見に賛成するのも、気を遣われているようで癪に触るが、二人がユーリーンについてくれるおかげで、今のところぎりぎりパーティーのまとめ役という体裁を保っていられる状態だ。



 接近戦で敵を撃つ剣術使いといえば、パーティーの花形だ。


 しかしその分、第一線で活躍できる期間も短い。


 他のメンバーに"使えない"と判断されるが最後、卵を産まなくなった鶏のようにあっけなくお払い箱にされてしまう。


 勇者の称号まで得た歴戦の戦士が、年をとって足手まといになったからと、ありもしない難癖をつけられてパーティーを追い出されたという例は、数えあげたらキリがない。


 第一線を退いた後は、街の自衛団にでも入って門番でもするか、もしくは、すっぱりと足を洗い、商人や職人や農民として地に足をついた生活をするか。


 女戦士なら、子供が学校へ行っているうちに、小遣い稼ぎに肉食キノコやスライムの駆除をしたりするようになるのだろう。


 戦士という職業を選んだ以上は、引退後の身の振り方は常に考えていなければならない。


 自分、ユーリーンも、いつかはそんなふうになるのだろうか。


 最近は、自分よりも年下の市長の娘ヤンセンが結婚することになり、親もうるさく言ってくる。


 そんな折、キンバリーがまるで当てこするように、新しい戦士をパーティーに加えたいと言ってきた。


 それも、自分よりも若い者ならともかく、ぼっちのおっさんだと言うではないか。


 ゲスト参加だとか、指南役だとか言っているが、いずれは自分を追い出す算段なのだろうか。


 百歩譲ってキンバリーにそんなつもりはなかったとしても、そのおじさんが私を追い出してしまうだろう。


 つい疑心暗鬼になり、キンバリーに辛く当たってしまった。


 今回もエミリアとユミアナがこちらの空気を察して反対してくれたが、キンバリーが腹を立てて立ち去ってしまったのは計算外だった。


 残された三人も時間をおかず、気まずい空気のままその場を後にした。


 二週間ほど間をおいて何事もなかったかのようにみんなを誘えば元どおりになるだろうか。


 それとも、潔く謝る?


 「いや、いや、だめよ。」


 ユーリーンは自室の鏡に自身を写しながら首を振った。


 少なくとも自分が今より強くなっていなければ、とても三人に顔向けできない。


「はあ。」


 ユーリーンは溜め息をつき、四人お揃いで作ったおしゃれな戦闘服ではなく、昔、父親が使っていた迷彩柄のそれに袖を通した。


 これ以上の上達は期待できないとわかっていても、毎日の鍛錬をやめる訳にはいかない。


 一日怠れば三日どころか一年は後退してしまうような気になってしまう。


「四人で冒険することも、もうないかも知れないな。」


 ユーリーンは剣を取ると、重い足取りで自室を出た。


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