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第四十四話 魔女キンバリーの憂鬱

新キャラが出てきます。

女の子同士のゴタゴタがしばらく続きます。

 女の子だけのパーティーなんて長続きしない。


 周りから幾度となく言われるたびに、私達は例外だと鼻で笑ってきたものだが、ここだけの話、そろそろ限界かも知れないな、と、けもの族の魔女キンバリーは最近考えないこともない。


 同じけもの族で幼なじみの仲良しグループ四人でパーティー『ブリーズ☆シスターズ』を結成してそろそろ四年が経とうとしている。


 しかし、結成当初こそ、初級レベルから下級、中級下位レベルとトントン拍子にランクを上げることができたものの、ここ数ヶ月は成績も伸び悩み、それどころか活動回数も減ってきている。


 しかし、どうやら危機意識を持っているのは自分だけで、あとの三人は、冒険者ギルドから除籍されない程度に楽しくやれれば良いと考えているふうだ。


 そうかと言って、簡単な仕事しか請けないのかといえば、そうでもない。


 例の遍堀の魔物退治の案件なども、「あんな安い仕事をすると、かえって経歴に傷がつくから止めておく」とか何とか、口だけは冒険歴ウン十年のベテランのようなことを言ったりする。


 どうしたら以前のようにみんなのやる気を引き出せるのかしらと考えながら、キンバリーは冒険者ギルド主催の魔法スキルアップ講座に申し込むために、ギルドの事務所へ訪れた。


 新手の魔法は次々と編み出されるし、同時にそれに対抗する戦法も出てくるので、定期的にアップロードしておかないと時代から取り残されてしまう。


 自分の腕一本だけで敵と渡り合う戦士と違い、魔法使いのスキルを維持し続けるにはそれなりの投資が必要なのだ。


 講座の申し込みを済ませると、いつもの癖で掲示板にも目を通してみる。


 『ブリーズ☆シスターズ』にできそうな仕事は相変わらず薬草採取とか、巨大オオスズメバチや吸血コウモリの駆除ばかり。


 むろん、こんな仕事はもうメンバーはやろうとしない。


 ふと、先日、リリアンの冒険の作戦会議の時に話題になった、【人喰い人狼捕獲】の案件に済印がついているのに気がついた。


"これは俺がいただくとしよう。"


 あの時、あのレースのおじさんは偉そうにそんなことを言ってたけど、もう解決しちゃったのね、残念でした。


 いくらブラックウルフ種の犬を連れているからといって、単身で人狼などとやり合えるわけがない。


 きっと今ごろ、大げさに残念がりつつもホッと胸を撫でおろしているに違いない。


 自分達のパーティーが伸び悩んでいるので、キンバリーは少しだけ意地悪な気分になってそう思った。


 けれども、やはり気になって、ふと、受付の女の子に聞いてみた。


「あの、この人狼の案件を解決したのって、もしかしてリカルドなんちゃらとか言う人?黒くて大きな犬を連れた。」


「個人情報はお教えできません。」


 受付嬢は機械的に答えたものの、


「けど、あのワンコは可愛いわよね。触らせてほしいんだけど、あのおじさんがいろんな意味で怖くて言い出せなくて。」


 ワンコを思い出すと血が騒ぐのか、手をムズムズさせて言った。


やっぱり!


 ハッタリではなく彼の実力は正真正銘の本物だったのだ。


これだ!


 リカルドはこの前、パーティーにゲスト参加しても良いと言ってくれたっけ。


 彼と冒険を共にすれば、メンバー達もこんなぼっちの残念なおっさん(ゴメン、おじさん)に負けてはいられないと発奮してくれるに違いない。


 キンバリーは意気揚々とギルドの事務所を後にした。




 翌週の『ブリーズ☆シスターズ定例作戦ミーティング』の席で、キンバリーは久しぶりにメンバー達と会った。


 最近は四人全員が揃うのも珍しい。


 しかも、『作戦ミーティング』とは名ばかりの、話題のお店で話題のスイーツを食べる会と化している。


 しかし、今回はキンバリーはいつも以上に張り切って臨んだ。


 スイーツで盛り上がるメンバーの話を遮り、知り合いの凄腕の戦士がパーティーの助っ人を頼まれてくれることになったと、熱気のこもった口調でみんなに話した。


 しかし。


「つまり、私達だけでは戦士は役不足ってこと?

傷つくわね、ねえ、エミ?」


 パーティーのリーダー格で、剣術使いのユーリーンは冷ややかに言った。


「え、う、うん。」


 もう一人の戦士、射撃手のエミリアは、急に矛先を向けられ、口ごもる。


 キンバリーは慌てて否定する。


「ち、違うわよ、だからさっきも言ったように、私なりに考えて何とかこの状況を……。」


「しかも、女戦士ならともかく、おじさんだなんて。

どう思う?ユミ?」


 ユーリーンは、今度はエミリアの双子の妹で魔法使いのユミアナの方を向いて言った。


「そ、そうね。ちょっとやりにくいかも。トイレ休憩とか……。」


 ユミアナも遠慮がちに同意する。


 以前は上下関係などなかったこのパーティーだが、いつの間にかエミリアとユミアナはユーリーンの取り巻きのようになってしまい、今回のようにユーリーンとキンバリーの意見が分かれると、決まってユーリーンに着いてしまう。



「とにかく、そういうことは勝手に決めないで一言くらい相談してちょうだい。」


「だから、今相談してるでしょ。」


「なら、決まりね。この話はこれでおしまい。」


「ちょっと、ユーリーン。」


 有無を言わさぬユーリーンの口ぶりに、キンバリーもムッとした。


「不満があるなら、あなたとそのおじさんと二人だけで冒険したらいいじゃない。

私達は全然構わないわよ。

この前も……」


 ユーリーンはこれが切り札とばかりに先を続けた。


「私達に内緒で薬草園のイーラーの草むしりの依頼を引き受けたんでしょ?」


「ええーっ」

「うそおーっ」


 エミリアとユミアナの声がハモる。


 パーティーのことを考えての行為をむげに批判するのは気が引けるが、これは彼女達にとっては明らかなルール違反だ。


 何よりもグループ行動に重きを置く二人を前に、キンバリーはしどろもどに言い訳をする。


「あっ、いや、イーラーのたっての頼みで、ほら、薬草園の子がいるでしょう?あの子が、いえ、受けてないわよ、結局、受けなかったの!」


「そうやってすぐに自分はイーラーの知り合いだってことをひけらかすんだから。」


 と、エミリア。


「キンバリーのお婆ちゃんと仲が良かっただけで、自分が仲良いわけじゃないくせに。」


 ユミアナもあとに続く。


「ひどい!そんなふうに思ってたんだ!」


 キンバリーも声が大きくなる。


「まあまあ、エミ、ユミ。キンバリーも悪気があってのことじゃないんだから。」


 ユーリーンがとりなす。


 自分から煽っておいて、エミリアとユミアナが悪口を言い始めると、急に手の平を返したようにキンバリーを庇う。


 これもいつものことだ。


 キンバリーはこんな茶番にもホトホト嫌気がさしてきた。


「もう良いわよ!」


 そう叫ぶと三人を後に残して店を出た。



【まめちしき】

このお話の"戦士"は、主に魔法を用いないで戦う者の総称です。

長剣、短剣、弓、斧、槍、銃、棍棒、素手、使える物はなんでも使います。


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