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第二十二話 リリアンのぼうけん プロローグ 1

リリアンと、わがままお嬢の冒険?


お嬢が登場するのはもう少し先です。



 イーラー、リリアン、リカルド、それにキンバリーの四人は、薬草園の中庭のテーブルで午後のお茶を飲みながら、リリアンのために冒険の計画を練っているところだった。


 隊長はもちろんリリアン。

 それに闇の戦士リカルドに、

 魔女イーラー。

 魔女キンバリーはまだ駆け出しだが、将来有望な魔法使いだ。


 リカルドも、イーラーからリリアンを冒険に連れて行くと聞いた時は少々面食らったが、一緒に戸外で過ごせる理由が出来るなら、どんな事でも断る訳がない。


 それに、良いところを見せる絶好のチャンスだ。


「では、隊長、どんな冒険をしたいですか?」


 イーラーが進行役兼書記を買って出てリリアンに聞いた。


「はい!」


 自分が話題の中心になる事なんてほとんどないリリアンは大喜びで返事をした。


 隊長として、一緒についてきてくれるリカルド様やイーラーさんに相応しい冒険をする責任がある。


「私はドラゴンを征伐したいです!」


 議事録を取っていたイーラーのペンの動きが止まった。


 普段、気恥ずかしさからほとんどリリアンをまともに見ることができないリカルドが、まじまじとリリアンの猫のかぶりものを見つめた。


 キンバリーはあさってのほうを向いて、自分の尻尾の毛づくろいをはじめた。


 しばらくの沈黙の後、イーラーが口を開いた。


「ザリガニも触れないのにドラゴンをどうするつもりなのよ。」


 リカルドも言いにくそうに言う。


「リリアンさん、野生の生き物は勝手に殺しちゃいけないんだよ。」


「ふにゃっ」


 リリアンにとっては、二人のこの反応は予想もしていない事だったらしく、しばらく固まってしまった。


 ようやく口がきけるようになると、プランBを提案した。


「じ、じゃあ、魔王を退治したいです!」


「リリアン」

「リリアンさん」


 イーラーとリカルドが同時に呟いた。


「魔王なんかその辺にいる訳ないじゃないの。」


「リリアンさん、空想小説ばかり読んでないで、たまには新聞とかも読まないと。」


「ひにゃっ。」



「まあまあ」


 キンバリーがとりなす。


「リリちゃんだって何がしたいのか急に聞かれても困るわよ。ねえ?

ほら、冒険者ギルドの広報を貰ってきたから、これを見ながら考えましょう?」


「わあ、ありがとうございます、キンバリーさん」


 しょぼくれかけていたリリアンも元気を取り戻し、両面刷りの広報の仕事依頼の欄を物色し始めた。


「えっと、じゃあ、この【騎馬盗賊団の取り締まり】っていうやつは?」


「だめ!」


 間髪を入れずにイーラーがぴしゃりと言う。


「賊の数が多すぎるよ。馬もないし。」


 リカルドも続ける。


「ええと、ええと、じゃあ、【人喰い人狼捕獲、生死問わず】は?」


「ああ、これならいけるんじゃないか?

おっ、報奨金もなかなか良いセン行ってるぞ。」


 リカルドは膝を乗り出した。


「本当ですか?」


 リリアンは目を輝かせる。


「うん、リリアンさんを囮にして、俺とイーラーと、そこの姐さんで、こう、はさみ撃ちにすれば、、、。」


「ふぇっ!や、やっぱり、い、い、いやですううぅ。」


「そうか。」


 リカルドはせっかくのリリアンとの初めての共同作業を断られてしまい落胆したが、この案件に未練があるようだ。


「そんじゃ、こいつは俺がいただくとしよう。」


 イーラーからペンを借りると素早く登録番号を控えた。


「こんな難易度の高い仕事をあなた一人で?」


 信じられないという表情でキンバリーがリカルドを見た。


「まあな。名犬サーブもいるし。」


 キンバリーはリカルドの足元に伏せている黒い大きなブラックウルフ種の犬に目をやった。


 誰も突っ込まないからそっとしているが、頭に名犬とついている変な名前や、リボンや花を体にたくさん付けているのは目くらましに違いない。


 さらに、先日、リカルドと対峙した時の事を思い出す。


 思い返すと未だに背筋が寒くなるが、反面、彼が仲間ならばこんなに頼もしいことはない。


幸い、あのレースのひらひらマントは止めたみたいだし。


「あなたみたいな、すごい戦士と一緒に行動できたら、きっと、とっても勉強になるでしょうね。

あのう、もしよかったら、今度うちのパーティーの助っ人を頼まれてくれないかしら。

いつもじゃなくていいから。

暇な時に、気が向いたら。

みんな頑張ってるんだけど、なかなかレベルアップできなくて、何とか一皮むけたいのよ。」


「いいけど、給金は弾んでもらうぜ。

必要ならイーラーを通して連絡くれよ。」


 まったく、最近の若いもんは礼儀を知らん。


 格上の相手を弱小パーティーに勧誘するなんて、俺が若い頃には考えもしなかったぜ。


 などと、いかにもおっさんが言いそうな事を内心思わなくもないが、リリアンの前で自分の腕を高く評価されるのは悪くない。器の大きなところを見せるために快諾した。


「やったあ!ありがとう!足手まといにならないように頑張るから!」


 キンバリーも、遠慮がない分、変に気取ったりもしないので、素直に感謝をする。


「キンバリーさん、私も一緒に行っても良い?」


 リリアンの空気を読めない発言に、キンバリーもリカルドも、えっ?となる。


 控え目なリリアンは普段はイーラーとリカルドの話に割り込んでくる事もないし、リカルドの冒険話も黙って聞いてくれるだけなので気がつかなかったが、先程からの発言と言い、意外と天然なのかもしれない。


 それはそれで、リリアンのかわいい一面を知る事ができて嬉しいリカルドだが、キンバリーはそれどころではない。


「えええっ、リリちゃんも?

リカルドさんを誘ったのは、鍛錬のために、自分達のレベルよりも難易度の高い冒険をしたいからで、、えっと、でも、その、リリちゃんは何かスキルがある訳でもないし、、、。」


「私はお弁当係です!」


「おべ!?」


「リリ、無理言っちゃだめよ。」


 イーラーが助け舟を出す。


「ごめんね、また今度ね。リリちゃんの冒険はほら、ここに…」


 そもそもリリアンの冒険についての会議だったのに、話題を奪ってしまった責任を感じたキンバリーは目を皿のようにして広報に目を通し、


「あっ、これなんかどう?」


 これに決まりだろうとばかりに赤鉛筆でマルをつけた。


「場所もすぐそこだし、難易度も星半分だって。」


「わあ、どれですか?」


 リリアンはキンバリーから広報をひったくり、赤字でマルしてある場所を覗きこんだ。


「どれどれ?

【薬草園の草むしりと、害虫退治。】、、、!?」


「なるほど、相手に不足はない。」


 リカルドも満足そうに頷き、ボキボキと指を鳴らす。


「見ていろ、ペンペン草一本逃さずむしりまくってやるぞ。」


「あら、私だって負けないわよ。

エノコログサは全部任せて!」


 尻尾をふりふり、キンバリーも言う。


「うわーーん!!」


 とうとうリリアンが癇癪を起こして広報をビリビリに引き裂いてしまった。



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