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第十九話 蛙を巡るおっさんの残念な冒険 3 【閲覧注意】

お子様には不適切な描写がありますので

苦手な方はご注意下さい。


「それで?」


 リカルドは魔物の前に立つと、藪から棒に口を開いた。


「………」


「ああ??」


 リカルドは手を耳に当て、魔物の口元に耳を寄せた。


「返しや。」


 魔物は、か細いが、今度はリカルドにも聞こえる声ではっきりと言った。


「何を?」


「わっちの御宝、置いていきや。さすれば、命ばかりは助けてやろう。」


 何だか妙に芝居がかった奴だなあ。


 しかし、貴金属に執拗に執着するあたり、普通の魔物とは違うようだ。


 盗賊まがいの魔物も中にはいるが、こいつは奪った宝を金に変えることもしない。


 この世のものではない、死霊、悪霊の類か。


 リカルドは暗黒の剣に手をかけた。


 まてよ?


 リカルドはふと、魔物の言った言葉を繰り返す。


「あんたの御宝?」


「わっちから奪った家宝の香炉に決まっておろうが!」


 魔物が声を荒げた。


「知らねえな。」


「嘘つけ!」


「嘘じゃねえよ。」


「証拠を見せろ、それが本当なら命ばかりは助けてやる!」


 魔物はリカルドに飛びかかり、押し倒して馬乗りになった。


 そのままズルズルと沼に引きずり込む。


 泥にまみれた薄い装束がぴったりと魔物の身体に張り付き、豊満なその身体がリカルドの身体に押し付けられた。


 わわわ。


 多少は狼狽えたが、どうせ魔物だと思うと不思議と緊張もしない。


 日頃からハマー号やサーブの前で、とても人前ではできないことを色々一人でしている訳だし、同じようなものだ。


 魔物はなおもリカルドに絡みつくようにして、身体中をまさぐりはじめる。


 魔物の身体の表面は、ぬらぬらとした透明な膜に覆われていて、魔物の動きに合わせてぬらぬらとリカルドの身体にまといつく。


 なるほど。


 こうやって人を引きずり込んでは身体検査をしまくってたんだな。


 魔物とは言え、女にここまで執拗に身体中を触られるのは、ちょっと予想していなかった、と言うのは嘘で、実は少しばかり期待していたのだが、次の手をどう打つか考えているうちに、魔物の手はリカルドの腰まで降りてきて、脚の脇の太くて堅いモノに触れた。


 その刹那、


「きゃっ!」


 魔物は叫んで飛び退いた。


「これは、暗黒の剣!うぬは暗黒の剣の使い手であったか!」


 慌てて逃げようとするが、腰を抜かしたらしく、自分の縄張りの沼の泥に足を取られて倒れこんだ。


 取り逃がしては元も子もないのでリカルドは魔物の足首を掴み、こちらへ引き寄せる。


 魔物はなおも身体をくねらせ逃れようとするが、布きれ一枚の女をこんなふうに取り押さえていると、何だかこっちが悪者になったような気分になってきてしまう。


「け、け、穢れた剣を触ってしまった!


ああ、魔力が吸い取られる、ああ、身体が溶けていく、ああ、お終いだ、口惜しや、無念なり、、、!!」


「おいおい、落ちつけよ。」


 リカルドは泥だらけになってくねくねと悶えている魔物を助け起こし、イーラーから買った強壮薬入りの葡萄酒をくれてやった。


「はあ、はあ、はあ、」


 魔物は泥と涙とよだれをたらしながら、ゼェゼェと肩で息をしている。


「酷いなあ。巷ではそんなふうに言われているのか。まるでバイキンじゃねえか。少し傷ついたぞ。

どうだ?どっか、おかしなところはないか?」


「何ともない。」


 相変わらず肩が上下しているが、大分、落ち着きを取り戻したようだ。


 暗黒の剣は攻撃魔法を無効化するとは言われているが、本来は魔法使いや魔物を相手にするために鍛えられたものではない。


 しかし、噂が独り歩きしてとにかくみんながびびりまくるので、リカルドもいちいち種明かしはしない事にしている。


 正気を取り戻した魔物は、先程とは打って変わった態度でリカルドに跪いた。


「どうも失礼をいたしました。とんだ勘違いを。私はレンリーと申します。

長年、この沼を寝ぐらにしている蛙でございます。」


蛙の魔物か、どうりで。


とリカルドは考えた。


どうりで、見事な太腿だ。




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