雪だるまの塗り絵
『第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』投稿作品です。
指定キーワードは『雪だるま』。
ほのぼのをお楽しみください。
「せんせー、ぬりえかいてー」
「おーいいぞー。何描く?」
福ちゃんに言われ、僕はペンを持った。
花かな? お姫様かな? クリスマスも近いしケーキかもしれないな。
「ゆきだるま!」
「……雪、だるま……?」
頭の中で思い浮かべてみるが、雪だるまは真っ白だ。
塗るところがあるようには思えない。
「……本当に雪だるま?」
「うん!」
「……どんな?」
「おっきなまるのうえに、ちっちゃいまるがのって、ちっちゃいまるにね、おかおがあるの!」
「……うん」
想像通りの雪だるまだ。
描くのは楽でいいけど、そんなのもらってどうするんだろ……。
とりあえずペンで丸を二つ描き、せめてもの悪あがきに目と鼻のパーツは白抜きにしてみた。
背景も描くか……。
駄目だ。雪で覆われた背景しか思いつかない……!
屋根が雪に覆われた家を描いて、雪の積もった車も……。
小さい丸で降る雪を表現して……。
……つくづく塗る場所が少ない!
「……はいどうぞ」
「ありがとー!」
福ちゃんは僕が描いた雪だるまの絵を持って、工作室に行く。
どう塗るつもりなんだろ……。
「!」
福ちゃんが赤のクレヨンを持った!
それじゃ普通のだるまになる!
「ふんふ〜ん。ふっふふ〜ん」
何か歌いながら頭を丹頂鶴みたいに塗ると、次は青のクレヨン!
何だ!? 福ちゃんには何が見えてるんだ!?
「ふんふふ〜ん」
次は黄色!? 雪だるまがガ◯ダムみたいなカラーになってく!
「こっこはピンク〜」
言いながら持ってるクレヨンはオレンジだ!
え、もう本当に訳がわからない……。
「できた!」
……できた、のか……?
僕が描いた雪だるまは、ビビッドなカラーの何かに生まれ変わっていた。
「せんせー! できた!」
「……うん、よく塗れたね。で、これは何?」
「カラフルゆきだるま!」
「……!」
……そうか。
雪だるまだからって白じゃなきゃいけないわけじゃない。
それは大人の固定観念だ。
雪だるまを白のままにしてもカラフルにしてもいい。
何かから解き放たれたような不思議な気持ちよさを感じる。
「せんせー、つぎはシロクマかいてー」
「シロクマ? それもカラフルにするの?」
「うん!」
……それは普通のクマでいいんじゃないかな。
心の中で苦笑しながら、僕はペンを持って真っ白な紙へと向かった。
読了ありがとうございます。
初日一番乗りじゃい!と零時投稿しようとして、開始が十時と確認した時の冷や汗よ……。
確認は大事。超大事。
ちなみに子どものフルネームは、『唐輪 福』です。
最初はなろうラジオだし、『ゆいこちゃん』にしようかと思っていました。
しかし英語で塗り絵は『coloring book』と呼ぶ事を知ってしまい……。
……魔が、魔が差したんです……!
さて一年ぶりのなろラジ大賞、自分の原点のようで懐かしさすら感じますね。
さて今回は期間内にいくつ書けるかな?
お題も手強いのいくつかあるし、全クリできるかな?
……主旨と違うところで頑張ろうとしてますが、暖かく見守ってもらえたら嬉しいです。