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☆魔女アルバのオラクル日記☆ その9

魔法少女は光文字をクウへ刻みます。




魔法少女に時折、闘いを挑まれることがある。

ほんとよ。

彼女たちは教義の筆先になっていることを知らずに、能力を開発された、子供たちの一部。

君は特別、選ばれた、人のために。そうやって、力を開発され、力の使い途を限定され、用意された箱庭のなかで腕を奮うあの子供たちを見ると……


「わたしは、憤りを感じるわたしを、発見する」

新鮮な気持ちよ。

ほんとに。






アルバは買い物へ出掛けた先で突如、魔法少女から攻撃を受けた。

攻撃は人の目には何も映らない。端からみればアルバと少女が微笑んで見つめあっている。

魔法の闘いはエネルギーの闘い。展開した自分のフィールドで相手を包み、自分のリアリティによって制圧していく。

変性意識のなかで肉体は現象世界へのアンカーとして機能し、意識は本性を現し、各々の宇宙同士が回転しはじめる。






魔法少女を動かす仕組みは、愛する者に認められたい望みとそれが叶わない現状が土台になっていることが多い。

いつまでも闘えるようにと仕込まれた渇望の暗い火が、目の前の少女の(うち)に燃えていた。



「わたしはね、子供をこういうふうに育てるのを嫌う者なの」

アルバは、少女へ暗い火を灯した者へ告げる。



「特別である必要がどこにあるの?ねえ?あなた。魔法少女さん」

魔法少女は肉体は13歳ほど、展開したフィールドではアルバと近い年齢になり、大量の水というリアリティを扱っていた。

水は人の精神との親和性が高い。知らずと自分以外の個性を流し込まれる可能性もある。

そんな大量の、海ほどの水を、少女は操る。



少女の存在を強制的にキャンセルする、そんな事は実は容易い。だけど、それをしても解決にはならない。


わたしの(うち)に、まだ回収できていない、否定された現象がある。わたしは“その子”を無視してはならない。

わたしが創る宇宙には、まだ見つけてもらえない子がたくさんいる。それをこの少女は伝えてくれているのだから。




「特別でなくてもあなたはここにいるし、ここにいていいの」


アルバは少女を動かす仕組みを解除する方法を取ることにし、解除へと進むはじめの言葉を(こと)()げた。

少女にとってのリアリティ、水へ、アルバは言葉を溶かしていく。言葉を紡ぐそばから、言葉は光文字となり、水へ移っていく。言葉は水へ移るとゆらいで底へ沈んだ。



「あなたは独自であればいい」



水は悲鳴をあげた。「やめて!呪詛を流し込まないで!」と、少女は胸をかきむしる。

海のような広大な水が波立つ。少女のリアリティ、現実が、揺らいでいるのだろうか。


アルバは言葉を紡ぎ続ける。

フィールドが暗くなり、嵐のような強い風が吹いてきた。

少女はすっかり被害者モードになっていた。

それを見てアルバは辟易した。“これじゃ、わたしが悪者じゃないの”と不貞腐れつつ、アルバは言葉を続けた。


「あなたみたいな子、他にいないわ?」

「ねえ、あなた、名前はなんていうの?」

「あなたの雰囲気、最高よ?」

「褒めているんじゃないわ。事実を伝えてるの」

「わたしはあなたを褒めたりしない。そして叱りもしない」

「あなたと共に感じて共に呼吸するだけ」

「あなたと、わたしは、わたしたち」

「わたしたちは、光」

「この地上へまかれた愛」

「愛のバリエーションのひとつ」



「あなたが」


アルバは少女のもとへと一歩、近づいた。


「あなたがあなたでありますように……」


そろそろ効くかな、とアルバは思う。

こういうときは、重ね打ちと最大公約数でくくるのが速い。まことの言葉とこころを向けてもらったことのない者は、生命力の源を見失い、生きてはいけないわ。

生きたいから、名をもらった。

特別な魔法少女という名があなたを生かした。

だけど、それを終わりにして、あなたのまことを生きるときなの。



少女のつくるフィールドにヒビが入る。

海のような水に亀裂が入り、底から抜けていく。

操れるリアリティを失い、少女の魔法は枯渇していった。

震えながら泣きじゃくる魔法少女のそばまで近づき、上を見た。

大きな木。

木の根元にうずくまる少女へ、アルバは問いかけた。


「木の年齢は?」


震える声で、意外にも答えは返ってくる。

「50」


アルバは正面から向き合う。おそらくは、この少女が経験したことのないことを自分から与えようと思った。

「いい木ね…しっかりしてる。すてき」


涙のとまった少女は戸惑っているようだった。

他と交流する術を失ってどうしたらいいかわからないでいるようにも見えた。



「あなたがあなたであることを」

アルバは魔法少女へ宣言した。


「わたしが許す」

少女の姿は転変し、現状のエネルギーを忠実に象る。

それは肉体の姿でもなく、先ほどまでの大人の女性でもなく、堂々とした透明な光となって揺らめいていた。



「わたしたちは、ヒカリ」

アルバは今こそ、自身のリアリティを展開した。



平野がひろがり、道があり、煙突から煙のあがる平屋が遠くにある。

「この道はあなたの道。いつか来た道。誰と、来た?」


少女のまことの姿、光は、おおきな光炎ファイアールとなって有機的に揺らめいた。

「あの道はあなたの道。行く?」


光炎はそろりと道を進み始めた。

またね…、とアルバは見送る。


おうちに帰ったらよく眠るの。

そして、お水を飲んで、あたたかいスープを召し上がれ。

眠れないなら横になるだけでいいの。

眠れなくても眠れても、眠らなくても……


「あなたは、いいこ」



アルバはリアリティを肉体へ戻した。

少女はもういなかった。



闘いは、この世時間にして3分ほど。

そのことを時計で確認し、アルバは買い物を再開した。


「今夜はあったかいスープをつくろう」

そんな気分だ。








おわり










ピピルマピピルマ、ときたらプリリンパと答えられる方は、ナイショのお話があります。

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