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☆魔女アルバのオラクル日記☆ その8

涼しくなってきました。

花を摘む。そして花瓶へ。




庭での時間は魔女にとって、多展開で仕事ができる時間。

生えてきてくれた草たちの種類から宇宙の意図を推し量り、土と同調しては住民の意識と想念の質を把握する。

根との情報の交換が自動で始まり互いに等分になるまで時間が要るので、その間に土中の水の流れと風の通り路の様子を見ておく。


傍目にはしゃがんで黙々と草を取り土をおこしている主婦がひとりいるだけ。

それくらいささやかで自然であることが大切だと、アルバは思う。


手を休めてふと空を見る。

雲が薄くて長く流れている。

からりとした風。

しばらくは雨はこない。

鳩は朝から鳴いていて、3日にわたる晴れ続きを告げていた。


水の流れがすこし、悪い。

どこかが腐り、どこかが干上がるだろう。

自然界はそうすることで循環をつくる。

わたしができることは風を流す路をつくること。

この庭へ裸地(らち)をつくり、乾いた風をつくり、庭の日陰へと流れる風の路をうむこと。

そして、石と土に磁力で引き付けられて離れないままの、住む人たちの想いを解き放つこと。



そのくらいしかできないけどね、とアルバは微笑んだ。

できることがあるなら何でもやってみる。

わたしは魔女だもの。



ずいぶんと前に、苔がやっと生えるような日陰の固い土だった場所に、アルバは種をまいた。

種はその場所の情報をすっかり覚えてくれたようで、虫も病も必要とせず、今年も美しい花を咲かせた。




恵みを受け取り使うこと。

植物たちは訳あってここにきてくれている。

使うことでわたしたちは循環を構成する列のひとつへ参加する。

恵みは頂いて使うことで循環する。

その方法はたくさんある。



「魔女としては、農林水産の恵みをうけとる器と(すべ)を失うわけにはいかないわね」

アルバは花を摘む。行き先は花瓶。

家の中の風の通る場所に瑠璃色の花瓶があって、そこへ花を活ける。

家の中に花から放たれる音が響いて、美しい。

音は天井へ向かい、幾筋かの放物線を描いていく。

無限に反響し、放物線が重なる。

やがてその音は「雰囲気」を創り出す。

その花だけが奏でる歌が家の空気を変えていく。

なんというシステムだろう、とアルバは感心する。





花を摘む。そして花瓶へ。



それだけで活性する気配を感じながら、アルバは庭へ戻っていった。




おわり















恵みのひとつが自分自身であることも忘れずに。

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