ディアスの暴走
「誰の体が岩みたいだって?」
ディアス君はその声にハッとし、私の胸から手を放しました。
ドラズさんはニコニコ笑ってしました。
「し、師匠!? 冗談ですよ」
ディアス君の声は異様に高かったです。
「あんたももう少し鍛えて岩みたいな体になるかい?」
「そ、そんな……今でさえ、男に間違われるのに……あれ、その子は誰ですか?」
ドラズさんは千代を肩車していました。
「この子がね、フラフラと歩いていたんだよ。で、見た目がジンブ人っぽかったから、声を掛けたら、ママを探しているって言うもんだからさ。まさかと思って連れてきたんだ」
ドラズさんに肩車されていた千代は地面に降りると私の元へ駆け寄ってきました。
そして、何も言わずに抱きつきます。
「ど、どうしたんですか?」
「起きたら、ママがいなかった……」
千代の声は寂しそうでした。
「ごめんなさいね、ちょっと友達が来ていたんです」
「友達?」
千代はディアス君を見ます。
ディアス君は目を丸くしていました。
「ほら、やっぱり、ハヤテさんと愛し合ったんじゃないんですか! それに子供まで!」
あ~~、話がめんどくさくなりますね。
「ディアス君、落ち着いてください。この子、見た目は何歳くらいに見えますか?」
「えっと、七歳くらい??」
「私とハヤテは出会ってから、半年くらいしか経ってないです。これで分かりますよね?」
「なるほど」と言ったので、ディアス君が理解してくれたと思いました。
「香さんはハヤテさんと出合う前に別の方とすでに子供を作っていたんですね!」
…………何も分かっていませんでした。
「私、子供が出来るようなことをまだ一度もしたことがないんですけど! ……千代、翼を出してもらえますか?」
説明するより、見てもらった方が早い気がします。
千代は「うん」と言い、金属の翼を展開しました。
それを見たドラズさんとディアス君は驚いていました。
「これは一体……魔法かい?」
「分かりません。実はですね……」
私は千代との出会いから天空都市を目指すことになった経緯までを説明しました。
「なるほどね。この子の存在が空中都市があることを証明している。だから、鳥人の協力が得られたんだね。それにしても……千代ちゃん、この金属の翼って壊れたら、元に戻らないのかい?」
「壊れることはほとんどない。でも、もし壊れても自動修復する」
「そうなのかい。なら、安心したよ」
と言い、ドラズさんは千代の翼に触れました。
前にアイラの角を折った時のことを思い出します。
「ちょっと、ドラズさん……」
止めようとしたら、ドラズさんは千代の翼から手を放しました。
「なんだい、この強度は?」
ドラズさんは驚いていました。
アイラの角を簡単に折るドラズさんの握力ですら、千代の翼は変形すらしません。
「なるほど、こんなに固いとは思わなかったよ。こりゃ、斧を使わないとビクともしなさそうだね」
それを聞いて、私は千代をギュッと抱えました。
「そんなことしたら、いくらドラズさんでも怒りますからね。というより、千代の翼を折ろうとした時点で私、結構、怒ってますから」
「悪かったね。珍しいものを見るとどうも調べたくなるのさ。もうしないよ。それにしても香ちゃん、本当の母親みたいだね」
「そんなつもりは……」
「香さん、母乳出たりしませんか?」
ディアス君がまた変なことを言い始めました。
「出るわけないでしょ!」
「確認しましたか?」
「してませんけど……」
「じゃあ、確認しましょう」
「はい!?」
ディアス君は私の着物に手を掛けました。
「や、やめてください! 本当に怒りますよ! ドラズさんも何か言ってください!」
「仲良くなったみたいで良かったよ。後は若い者同士でね」
そう言って、ドラズさんは立ち去ります。
どうやら、助けてくれないみたいです。
良いでしょう。
なら、戦います。
「うわっ!?」
私はディアス君を投げ飛ばしました。
「私、柔術も出来るんですよ。少しは頭が冷え……」
投げ飛ばしたはずのディアス君はすでに立ち上がっていました。
「僕も少しは格闘術を出来ますよ」
ディアス君は構えます。
「良いでしょう。二回戦は素手でやりますか?」
結局、私とディアス君は疲れるまで戦いました。
最近鈍っていた体にはいい刺激ですね。




