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機械の少女に千代と命名する

 私は、『私の子供の頃の姿をした』何かを連れて、巨人族の集落へ戻りました。


「お嬢ちゃん、何があったんだ!?」


 集落に戻ると巨人族の方々は外に出ていました。

 それだけあの衝撃が強かったのでしょう。


「私も詳しいことは分かりません。衝撃があった森の方へ行ったら、この子がいました」


 私はハグーさんに事情説明しました。


 するとハグーさんは考え込みます。


「伝承は本当だったのか…………」


「伝承? 何か知っているのですか?」


「古くからある天空都市の伝説さ。なんでもそこには失われた技術があるそうで、魔王さんもそれを探していたでさ」


 天空都市?

 失われた技術?

 そんなものが本当にあるのでしょうか?


 しかし、現にここには奇妙な生命体がいます。

 私の目の前で起きたことは、私の知らないことばかりでした。

 

「だとしても、天空都市っていうくらいですから、空にあるんですよね? そんな場所、どうやって…………」


「お嬢ちゃん、行くつもりか?」


 私が「はい」と答えると、


「それなら獣人族の鳥獣種を尋ねたらええ。奴らは魔王さんに言われて、天空都市を探しとったはずだ。それに空を飛ぶ船を持っとる」


「空を飛ぶ船? でも、人間の私たちに敵意を持っていませんか?」


「その辺は心配せんでいい。奴らだって魔王さんがいなくなって、自由になったと喜んどるはずだ」


「なら、良いんですけど……」


 ここにいても師匠は現れそうにありません。

 なら、新しい冒険を始めるのも良いかもしれません。




 私は次の日、巨人族の集落を出ることにしました。


「元気でな。お嬢ちゃん」


「はい、ハグーさんもありがとうございました」


「また今度、来るといい。その時にはお嬢ちゃんの仲間も紹介してくれ」


 私は機械の少女を連れて、獣人たちが住む西へ向かいます。


「そういえば、あなた、名前は何ですか?」


 それが無いと呼びづらいです。


「ないから、ママが付けて」


 またこの子は私のことをママって…………


「いいですか? 私は香です。あなたのママじゃありません」


「分かった、ママ」


「だから、ママじゃありません!」


 それ、分かってませんよね?

 にしても、名前ですか…………西方風の名前が良いでしょうか。

 それとも見た目が東方なので私のような名前の方が良いでしょうか?


「早くして…………」


 大体、この子は本当に子供なのでしょうか?

 幼そうに見えて、実は年上ってことだってあります。


 アイラという見た目詐欺の代表がいますし…………


「う~~ん、ちょっと待ってください」


「分かった、じゃあ、香でいいよ」


「それは私の名前です! 絶対にあげません! …………千代でどうですか?」


「分かった」


 少女は即答しました。

 多分、何でも良かったのだと思います。


「それじゃ、千代、あなたのいた場所を目指しますか」


 私は巨人族の領内で奇妙な出会いをし、そして、新しい冒険を始めました。



 もしかして、私が巨人族の集落にいたのはまた一人になるのが嫌だったからかもしれません。


 人と一緒にいることで安心する、それをハヤテたちに教えてもらいました。

 だとすると、この子との出会いは私が新しい行動を起こす為に必要だったのかも…………


「千代、そういえば、お腹は空かないのですか?」


「私の体内には永久機関がある。だから、食べなくても平気」


「…………」 


 新しい旅の友は、人間とは違うみたいですけどね。


「千代、エルバザールとはどういうところなんですか?」


 川の岸で休憩をしている時に聞いてみました。


 しかし、千代の答えは「行けば分かるよ」の一言だけでした。

 まぁ、それはそうでしょうけど…………


 この子は明らかに私の知識の外の存在です。

 ハヤテの知識を借りるとしたら、この子の存在は機巧人(エクスマキナ)のようです。


 あの金属の翼、後で背中を見ましたが何もありません。

 空間魔法に近い技術なのでしょうか?


 それに体もです。

 顔は私の子供の頃に似ていますけど、皮膚というよりは人形のような触り心地です。


 この子と接するほど人工物のような気がしてなりません。


 それと一つ分かったことがあります。


「…………食べますか?」


 私は川で取った魚を焼き、千代に渡しました。


「うん」


 栄養の補給は要らないと言っていましたが、食事は出来るようです。

 もしかしたら、私の真似をしているだけなのかもしれません。


 食事中、千代は嬉しそうです。

 ということは味覚のようなモノは存在しているのでしょうか?


 本当に不思議な存在です。

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