第7話 ステータス職業
「ステータス職業てのは決められた物に割り当てられるんだ、全部に当てはまるもんじゃないんだ」
ステータス職業について何一つ知らないカオルに俺は一から教え始めた。
「ステータス職業てのは所謂その人の特性なんだ、その人がいったいどういう人か、どういう事が得意なのか不得意なのか、それを見極めるためにある物なんだ」
カオルは「ほうほう」と軽く頷いて相づちを打つ。
「だから自分を見つめて、しっかりと考え、職業を選ぶんだ、自分の経歴を背負ったりするからな」
「------はい、わかりました!」
俺が釘刺すように強く言うとカオルはこれを強く受け止めてくれた。
説明を少ししたら店長が割り込むように別の事を説明した。
「職業に着いても実際に働く事になれば関係のない事にだってなるんだ」
「そうなんですか!?」
「そうだ、俺のステータス職業は錬成師だが今は町のどこにでもある料理屋の店主をやっている」
「店長の言う通り、ステータス職業はその人の特性で実際に働くのは別になるんだ、俺は魔術師だが今はパーティー業が生業だしな、あと誰でも着けるやつと資格や功績を得ないと付けれない職業があるんだ」
「そうなんですか!」
魔術師になるには学院に入り数年勉強して複数の資格を取らなければいけない。アリシアがなっている勇者は多くの人々を貢献した実績を幾度も行い、それを政府や王族に認められて着くことが出来るのだ。
俺はカオルに尋ねる。
「カオル、お前は何が得意なんだ?得意な方と合った職業を着けばレベルは上がりやすいからな」
「自分の、得意なことーーーーーー」
カオルは自分が何が得意で向いているのか、数秒間口を閉じ自問をするとハッキリと答えた。
「全然わかりません!!」
俺と店長は少し腰を抜かした!
「ま、まあ今日ここに来たばかりなんだからゆっくりすればいいんだ、店長もそう思うだろ?」
「そうだな、ゆっくり考えれば良いんだよ!急ぎは禁物だ!!」
こんなハッキリ言うやつ初めて見たぞ!カオルってもしかしてバカ?生粋のおバカさんですか!?
「それじゃあ私は当分無職ですね、でも稼ぎはどうしたらいいんですか!?」
「稼ぎか、まともな職に就こうとしたらそれこそステータス職業をちゃんと着けないと雇ってもらいにくいし、でも60万もあるんだから今すぐにでも稼がなきゃいけない訳でもないだろ?」
60万ポルドもあれば一泊5千ポルドの宿に泊っても2か月は余裕を持てる、その間にステータス職業を着けてどこかのパーティーか普通の仕事に就けばこの世界で安定した生活を送れることが出来る。
俺はカオルの事は知らないが彼女がこの世界で上手く溶け込むまで、それか独りで大丈夫、と言うまで俺はこいつの面倒は見るつもりだ。
俺がそう考えているとカオルは机にある自分のコーヒーを眺めて何か考えていた。
考え終わると目線をコーヒーから俺と店長に向けて宣言した。
「キリヤさん、店長さん、私、お店を開いて仕事をしたいです!」
「お店って何の?」
「料理です!私の実家は料理屋で昔から接客から仕込みまで、なんでも手伝いました!なのでこの世界で私が活かすスキルは料理なんです!!」
カオルは真剣な表情で語っている。これは本気だ、恐らく料理屋の下で生まれ育ったのは本当のことだろう。
この言葉に店長は疑問を顔に浮かべながらカオルに問いだした。
「店を開くってのは俺は反対しないが、店とか食材の仕入れとかそういう頭金は今からどうするんだ、60万だけじゃ開くのは難しいだろ?」
「はい確かに店長さんの言う通りまずは頭金の確保が優先です、今の私の発言は漠然としていて説得力なんて物はありません、でも私が持っている技術はそれしかないんです、------だから」
店長からの問いにカオルは顔色を変えずに真っすぐな瞳で答えた。これを受けた店長は。
「そうか、それなら全力で応援するよ、店を開くって言うんなら料理ぐらいはできるんだろうな?」
「もちろんできます!」
それを聞いた店長は席を立ち、カオルにある事を指示した。
「カオル、今からここで料理を一品を俺とキリヤに作って出してみろ、同業者としてお前の腕を今すぐにでも見てみたいからな」
「・・・・・・はい、わかりました!」
カオルは真剣な眼差しで店長からの指示をしっかりと受け答えた。
「よしそうとなりゃあ早速厨房に入るぞ!」
店長の言葉にカオルと俺は席から立ちあがり、厨房へと向かった。