第4話 飯処キンチョウ
カオルを昼飯を奢らすということで、預かり場から野菜を返してもらい彼女と役場から出て、目的の飯屋まで歩いていた。
俺は案内約ということもあり、カオルより少しだけ前に進んで歩いていたが彼女は俺が歩く姿に驚いて。
「キリヤさん凄い力持ちですね、野菜が入った袋と大きなカバンを楽々と持って歩けるなんて」
「まあ仕事がてら重い物を担いでよく歩いてたからな」
パーティーでいた頃はクエストで遠い村とか町に行くことになったら、金がないからこれぐらいの荷物を背負って歩いて行ったんだっけな。以来主たちの驚く顔が今でも目に浮かぶよ。
「キリヤさんて職業は何をやっているんですか?パーティー業て?家族とか親戚とかていたりするんですか?」
カオルはいろいろと質問して来る。俺は顔色を変えず彼女の質問を一つずつ答えた。
「職業は魔術氏でやることは魔術に関する開発や研究とか多岐にわたるけど俺の場合は歴史関連がメインだな、あとパーティー業はええと、まあなんでも屋みたいなもんだ、家族については今のところ答えれないぞ」
「そうなんですか、私まだ職業欄が無職なんですけどこれは?」
「無職?カオルはまだ職業は付いていないて事だ、まあ職業に関しては後で教えるから、何かになるかはゆっくり考えればいいさ」
「そうか・・・・・・今の私は無敵なのか」ボソッ
聞こえないよう小言で発してたがちゃんと聞こえてたぞ!なんだよ無敵って?今の日本じゃ最強の職業は無職なの?ヤバくねえか?
そうどうこうしていると目的の飯屋にあっという間にたどり着いた。店のドアの上には「キンチョウ」という看板が立てられており、建物は周りとは余り違いはないが飯屋っていうのは一目で判る。
カオルは看板を見るや驚きながら。
「え、キンチョウ?」
「日本じゃキンチョウて報徳の神様がいるんだろ?知らないの?」
「報徳、神様、アアッ金長たぬきの事!!」
どうやら意味が伝わったらしい、今はカオルに奢るし野菜も大量にあるから店長にこの野菜で料理を作ってもらって料金を値引いてもらお。
店のドアを開くとそれを合図にドアに付いてた金の鈴が店内に鳴り響く、だが鳴り響いても店長が声を掛けてくれるどころか気配も感じない、おかしいなもう営業の時間だって言うのに用で外にでも出ているのか?
「店長!俺だよキリヤだ!今日は店やってないの!?」
一応店長がいるかどうか大声で呼ぶが時間が経っても反応が返ってこない。
胸の中で不安が集りだした俺はそのまま店内へと足を踏み入る。客席の奥側まで入ったが気配はなく、カオルは怖れて中に入ろうとはしなかった。
「店長!いるんだったら返事をーーーーーー」
ガシャーーーンッ!!
突然店の奥にある厨房から大きな金属音がこちらまで届いた!
俺は咄嗟に厨房の方へ駆け寄った!カオルも一大事だと思い、店に入り俺の後に続いた!
厨房に入った俺とカオルが目にしたのは、床に散らばる調理道具を周りに、まるで土から這い出た幼虫のように身体を丸めながら横たわる店長だった!
「店長!!大丈夫か、身体は!?しっかりしろ!!!!」
「あの、救急車!救急車を呼びますから番号を!!」
「そんなのねえよ!とにかく俺たちで病院へ運ぶぞ!」
カオルは店長を揺さぶりながら呼び掛ける俺に救急車の番号を訊いたが、そんなものはない、と突っぱねる!
ショウヘイや他の日本人からそういうのは聞いたが、俺の世界でそれを実現するのはかなり困難だと言われた。
確か店長は持病持ちだったはず!この前は問題なんかねえよ、と胸を叩いて丈夫さをアピールしてたぐらいピンピンしてたのによ!
一刻の猶予もねえ!
「カオル!俺は荷車を出すから店長を任せたぞ!」
「分かりました!店長さん、返事をしてください」
店長をカオルに任せた俺は、急いで店の外の倉庫にある荷車を取りだそうと足を動かしたその時!
「あ、ああっ」
店長が声を途切れそうになりながらも返事をした。
「店長しっかりしろよ!今から病院に連れてってやるからな!!」
「店長さん踏ん張ってください!」
俺たちは店長の意識が消えないよう強く呼続けた。すると「う、うおああっ」と息苦しそうに悶ぎ始めた。かなり重症になっていやがる!
すると次の瞬間。
「ヴォべアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」ドボボボボボボボビチャビチャビャチャチャチャチャアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!
店長の口からダムの放水のように大量のゲロが盛大に吐き出してきた。
それも傍で介護していたカオルの顔面に目掛けて。
ゲロを吐き終えると厨房には静寂が走り、俺たち3人はゲロのせいで体が止まってしまった。
カオルの顔は目や口が判別できない程ゲロまみれで、それが滴り落ちて服にまで染み着いてきている。
うわクセッ!
「す、すまんなお嬢ちゃん」
「う、うわああああああああああああん!!!!」
静寂が走っていた厨房にカオルの喚き泣く声が響いた。