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僕と虎姫様とこれからの話


目が覚める。仄かに暖かい光が障子を通して部屋を照らしていた。


「あ……れ……」


ここは居間? なんで? 僕は確か砂浜で……っ!


「起きましたか?」


昨日の夜の事で頭を痛める僕に隣から聞いた事がある優しい声色で、気遣う言葉が投げ掛けられる。

僕は痛む頭を押さえて上半身だけ起き上がり隣を見る。

そこには目を覚ました時に見た女性が柔らかい笑顔で僕を見ていた。


「あ、あなたは虎姫様?」


「そうです。覚えていてくれたのですね、うれしいです。」


忘れる訳がない。というかこの島で虎姫様と竜姫様の事を知らない人間なんていないだろう。

竜姫様と虎姫様。

それはこの島の神様として崇められていた二人の女性であり、竜姫様は島民に与える力を虎姫様は島民から奪う力を持っていたと言われている。

それにより竜姫様は善き神、虎姫様は悪しき神として扱われていた。

だが、僕の先祖がなんとか虎姫様を島に封じ込めることに成功して、島には安寧と豊穣がもたらされた、と学校で教えられた。


「と、どうして虎姫様が……??」


「そのことについては後にお話します。今は朝食にしましょう。食欲はありますか?」


その問いに僕のお腹からくぅ、と小さな音がなった。あまりにも恥ずかしくて思わず顔が赤くなる。


「ふふふ、あるようですね♪ それではお持ち致しますので少々お待ち下さい」


そう言って虎姫様は部屋から出ていった。悪しき神様と教えられたのでとって食べられると思ったが、まるで優しいお姉さんのような感じで少しホッとした。

出ていって数分したらすぐに朝食を持って来てくれた。白いご飯に油揚げのお味噌汁、そして漬け物。少し寂しい感じの朝食だが、今の僕には丁度よい量の朝食だ。


「さて、どこからお話いたしましょうか……」


朝食を食べ終わりお茶も頂いた時にポツリと虎姫様が呟いた。


「まず私の、いや私達二人の生まれから説明いたしましょう」


「二人? というと竜姫様もですか?」


僕の問いにコクりと頷いて虎姫様は話を続ける。


「私達、竜姫と虎姫は知っての通り人ではありません。しかし、人とは全く違うという訳では無く人より幾つかの力が備わっている……まぁ分かりやすく言えば亜種の人間、亜人というのでしょう。ここまでは分かりますよね山名の子よ」


「はい。竜姫様は他人と交わる事なくある一定の周期が来ると新しい子を身籠り、出産すると同時に約六十年程の寿命になる。これは代々教えられてきたので、人では無いことは分かっています」


「よろしい。なら次は私、虎姫の事はなんと教えられましたか?」


「あ、えっと……」


悪しき神様だと言っていいのか?そう思うとおもわず言葉が淀む。


「……少し意地悪な質問でしたね。大丈夫です、私はこの島では悪しき疫病神として奉られていたのは知っています。でも、それは島民の勝手な思い込みによる過ち。私は竜姫と対になる、無くてはならない存在なのです」


「無くてはならない存在?」


「はい。どんな大地や生物も与えられれば今まで以上の力を発揮出来る。しかし、それも限度というものがあります。しかし竜姫の与える力は限度がない。求めれば崩壊するまで力を与える。そう言った危険な力なのです」


「え? いや、でもそんな事は一度も」


「当たり前です。私がそれを調整していたのですから封印された間欠かさず」


虎姫様の信じられない言葉の数々に開いた口が閉まらない。それからも虎姫様は次々と衝撃的な発言を繰り返す。


・まずいつでも封印、というか封印はされておらず島の地脈から竜姫の力を調整していたこと


・封印された(てい)にしていたのは僕の先祖である山名一族のある方が命をかけて虎姫様を封印をしていて、それを破るのが嫌だった為(その時、何故か顔を赤らめていた)


・それなら何故地上に出たのかというと、竜姫様が島から離れた時に自分の役割も終えた。それと死にかけていた僕達を助ける為、だそう。


「さて、ここまで何か質問はないでしょうか?」


「あの……どうして僕達を助けようと? 今までのようになさらなかったのはどうしてですか?」


「それは、竜姫が貴方達のお蔭で無事に島から出られたことと……貴方達の思いに惹かれたと言えばよいのでしょうか」


「思い?」


「はい、次元を越える程までに強い双方の思い……それは余りにも美しく素晴らしいものだと感じたのです」


虎姫様はまるで何処かの宗教に染まってしまった危ない人のような目に変わり、僕の両手を包むように無理矢理握って来た。


「素晴らしい、そう素晴らしすぎるのです!貴方達、矢岸隆也と山名功太と貴方の両親は命をかけてあの子達を逃がした! その自己犠牲と深い愛! 私は胸を打たれたのです!! 」


「あ、え、はい?」


「確かに過去に何度か貴方の先祖はあの子達を不憫に思い、なんとか話し合いという生温い方法で穏便にすませようとしていましたが、力と欲に溺れた馬鹿な島民が納得するはずがなく。そして、貴方の先祖もまた島民に村八分のような扱いにされるのが怖くてそれ以上のことはしてきませんでした」


「それを地脈から見ていた私は何度失望したものか……本当に私を封印した山名辰二郎(たつじろう)の血を受け継いでいるのか?と呆れたものです……」


「でも、ようやく!ようやく貴方が生まれて来てくれた山名功太!」


「ぼ、僕ですか?」


「そうです。辰二郎と同じ『繋ぐ力』を持ちそれを上手く利用して、更には両親を説得した貴方はまさに私が待ち望んでいた辰二郎の生まれ変わり! 後もう十年遅ければ私は辰二郎との約束を破り、怒りからこの島を滅ぼしてしまうところでした!」


え、やっぱりこの神様危なくない?島を滅ぼすって簡単に言ってるけど島長含めてここの島民の何人かは実力が桁違いなのにそれを分かって滅ぼすとか言えてるんだよね?


「そんな貴方が死にかけていているのにじっと見ていられる筈がありえません。だから私は辰二郎には申し訳ないですが、封印を破り貴方を助けました。貴方のご両親と矢岸隆也の力を借りて」


? さっきも話に出てきたけど矢岸隆也さんってもしかして「俺」さんのこと?その力を借りたってどういうこと?


「あ、あの! 力を借りたってどういうことですか?」


「……貴方の命は風前の灯。そして私は情けない事に力のほとんどが奪う事です。竜姫のように命を与える事なんて出来ません」


「だから私は貴方達……詳しく言えば貴方と貴方のご両親、そして山名功太の命その全てを奪いました」




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