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僕と誰かとその後

誰かと話をしていた気がする。

誰かは分からない。けど大事な人だったという事は覚えている。それで今の僕、山名(やまな)功太(こうた)の現状もうろ覚えだが分かっている。

確か“凄く大事な人達”を逃がす為に家族総出で長を含め百人を越える島民と相対して……なんとかその大事な人達は用意していた小舟で逃がした。

それですぐに追い付けないように島の船を全て壊してそれから……奮闘空しく僕達家族、父さんと母さんと僕は左腕と胸を突かれて……駄目だ。そこから記憶が曖昧で思い出せないけど、激痛と共に死を覚悟した“筈”なのだけど。


「あ……れ……?」


僕は島の砂浜で倒れていた。周りにはもう息はないだろうと思う父さんと母さん。それと遠くから島唯一の船着き場に長達の怒号が聞こえる。


「なんで……生きてる……?」


貫かれた左腕と胸を触ってみる。

左腕は肉だけでなんとか繋がっている状態だったが、噴水のように流れていた血は止まっている。胸も同じくぽっかりとした空洞があるだけで血は完全に止まっている。


「どうして……あっ」


何が自分に起きているのか分からないが、唯一薄れ行く意識の中で、“誰か”が僕の為に何かをしてくれていた。それは何が起こるか分からないのにその“誰か”は僕を……助けてくれようとしていた。その結果がこれなのだろうか?


「でも、今さら僕一人でどうにか出来るのかな……」


助けてくれたのはとても嬉しい。だけど、父さんと母さんと僕の三人がかりでも止められなかったあの暴走している島民と長を止められるのか?

いくら数を減らしてもたった八歳の子供が百人の大人に勝てる訳はない。いくらそれが宮名という島で唯一、 とても大事な人を守る為の一族で他人より少しばかし強かったとしても多勢に無勢。もう一度無駄死にするだけだ。


「……どうすればいいのかな……」


幸いな事に島民達は燃え盛る十数隻の漁船をどうにかしようと釘付けになっているようで、死んだと思っている僕達の方に向かってくる気配はない。

だけど、これも今日の夜の内だけだ。朝になれば燃え盛る漁船は鎮火し、本土から新しい漁船が来て“大事な人達”を血眼になって探し始めるだろう。


「つまり時間はそこまでない。だけど、僕にはそれをどうにか出来る力は……」


「有りますよ」


唐突に女性の声が聞こえた。僕の記憶にはない何処か不思議な声色で耳に響いた。

島民に気づかれないように視線をそちらに向けると美しい女性が真っ黒な、そう喪服のような黒さの着物を着てしゃがみこんで僕を見ていた。


「あ、あなたは……?」


「それは後から説明致します。それで今貴方は何をしたいですか?」


「えっ?」


優しい声色だが、しっかりとした口調で僕に質問を投げ掛ける女性。突然の質問に頭が追い付いていない僕に女性はもう一度同じ質問を繰り返す。


「貴方は今、何をどうして欲しいですか?」


そんなの……そうだ。決まっている。

僕の家族と“誰か”がここまでして手伝ってくれてこの様なのは納得出来ない。

だから、僕は女性に答えた。

助けたい、と。記憶には無いが心の底に残っている“大事な人達“が安全で安らかに暮らして欲しいと。

この忌まわしき島の風習に捕らわれる事のない人生を送って欲しい、と。


「ふふふっ、世界が変わってもやっぱり同じ人間だか優しいですね、貴方達は」


女性は満面の笑みを浮かべて僕の質問を聞いてくれた。そして頷いた。


「分かりました。その願いを叶えましょう。彼女達と貴方達が幸せになる未来を作り替えましょう」


女性はそう行って立ち上がり何かを唱えた。

すると、女性の体が強烈な光を発した。それは島全体を覆う程の光で僕は余りの眩しさと疲れからかもう一度、意識が闇へと落ちていった


ノベルバでも宜しくお願いします。

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