渡り廊下の俺と僕2
夢が覚めるまで「僕」の相談を聞いてそれに返答した結果分かった事が一つある。
ーー向こうの世界の俺って、やっぱり八歳児!
逃がす為の手段として変装させて日に二度の定期船に乗せるとか。
誰にもバレないように商店で二人分の衣類や数日分の食料を買っておくとか。
同じ仲間がいないか、密かに島民に聞いてみるとか。
もう全部アウト。思わず本当に命かけてるよな?って聞いたぐらい考え方が甘かった。
まず、逃がす為の衣類や食料よりも逃がした後の身寄り先を探すのが先決だ。もし失敗しても、死人が出るのはほぼ間違い無いので警察かその道の関係者に連絡を入れてくれる筈だ。
それを提案してみるとどうやら「僕」の母親の親戚にそう言った人を助ける事を職業にしている人がいるらしいので、まずその人に連絡を取りなさいと伝えた。勿論、電話とかは盗聴される可能性があるので「僕」が夢の中で繋いで話すように薦めた。世界を繋げれるのならやれるだろと煽ってみたら任せて!と力強い返答を頂いた。
次に逃げる為の船は定期船等ではなく、小さなボート、出来たら釣り船のような小さな物がよいと提案した。そこに毛布と乾パンを入れておけば最悪海上保安庁が見つけて保護してくれる。更に言えば保護された時にそ親戚の名前を伝えればよしとも言っておいた。
最後に逃げるまでのルートと時間稼ぎの方は向こうの親と年密に相談しろと念を押した。島の長がバカならいいが、「僕」の話を聞く限りそうではないらしいので特に注意しとけと言って夢から覚めた。
「大丈夫かな、あいつ」
寝惚けた目で昨夜の話した内容を思い出しながら洗面所で歯を磨く。
大丈夫ではないのはほぼ確定だろう。
島民か向こうの親か最悪「僕」が殺される可能性が多いにある。その場合、もうあの夢は見ないのだろうか?
同じ人間でも世界が違う。同じ人間の筈なのに少しだけ他人事のように感じている自分がいる。
「……最低だな、俺……」
「はいはい、おにいはいつも最低だからちょっと退いて」
自己嫌悪していると不意に後ろから声をかけられた。振り向くと我が家の妹である四葉が不満顔で俺を睨み付けていた。
「はいはい、すまんなっと」
少し急いでうがいと顔を洗い場所を譲ってやるとありがと、と素っ気ない返事をして入れ替わった。
四葉は双子でありながら俺と違い成績もそこそこに優秀で人当たりもよい。顔も母さんに似て美人というより可愛い部類に入る良くできた妹だ。
欠点があるとしたら若干俺に風当たりが強い事とその身長の低さだろう。だが、本人はあまり気にしておらず逆に長所として捉えているのか、学校では小さくて可愛いと人気者だ。
「? どうしたの、おにい?」
「いや、なんでもない。じゃあ先に着替えて行くわ」
「りょーかいー」
そう言って俺は学校の支度をするべく自分の部屋に戻った。
そうこれがいつもの俺の日常。
これはずっと……ではないかまぁ高校卒業するまでは続くんだなと、無意識に感じていた。
だが、そうでは無かった。
日常というのは時として簡単に崩れ去るものだとこの時の俺は知るよしも無かった。




