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捏造の王国

捏造の王国 その14 グンミョウジ春の地獄めぐりツアー・あれが私の死後なのか!byガース長官

作者: 天城冴

季節性鬱か気分のすぐれないガース長官。実は夢とも現実ともつかない”春の地獄めぐりツアー?”が原因で…

春半ば。暖かいのはよいが、頭の中も緩くなる人々が多くなる木の芽時。ここ官邸でも、そのような人間がちらほらでてきた。

「長官、あのう、お聞きになってます?」

「す、すまん、ちょっとぼうっとしてしまって」

ニシニシムラ副長官の言葉にかろうじて答えるガース長官。だが今一つ顔色が優れず、そばにいるタニタニダ副長官やシモシモダ副長官も怪訝な顔でガース長官のほうをみている。

「長官、そのしっかりしていただかないと、新年度でいろいろと仕事がたまっております。ここはお休みになられては。あとは私にまかせてください」

そういうニシニシムラ副長官。すると他の二人も

「いや、代理は私が」

「私がやりますよ」

次々と口を開く。我こそはガース長官の後継者と、意気込む三副長官。長官が休めば自分がアベノ総理に取り入る気満々である。少しでもスキをみせたら、とって代わられるかもしれないと思うと、おちおち休んでもいられない。

「いや、大丈夫だ、休んでなどいられん」

そういいつつ、気もそぞろもガース長官。ぼんやりと数日前のことを思い出していた。

(やはり、あれは、衝撃だったのか、まさかまさかとは思っているが)


「まあまあ、お飲みにならないというのは存じておりますが、ほんの少しだけ。コップ半分のビールぐらい、よろしいではないですか」

「いや、そのまた明日から公務がありますので」

「まあまあ、もう少しだけ」

「いえ、そのう。ちょっとトイレに、ちょっと外の空気を…」

赤ら顔の後援会会長の勧めをなんとか振りきりガース長官は宴席を離れた。川沿いの桜が満開となっていた今、後援会主催の演説会にかこつけた花見の飲み会が盛んにおこなわれている。政治資金規正法などの法の網の目を潜り抜け、いかに支援者に気持ちのよい思いをさせて票に結び付けるかも長官の腕の見せ所、なのだが。この日はさすがに疲労がたまっていた。

(新年度でバタバタをしているうえ、新元号発表だのなんだのと茶を飲む暇もないのに酒だけは飲まされるのか)

疲れた体に飲めないアルコールを強いられるという健康にまったくよくない状態でガース長官はフラフラと歩いていた。満開の桜が電気の提灯の明かりでほのかに照らされ、所々でシートを広げて缶ビールやらノンアルコール飲料を楽しむ人々で騒がしい。

 (少し静かに夜風にあたりたい)

ガース長官はゆるやかな階段をおりて道の下のオオンカワン川川沿い公園に降りた。水面に近い公園は、昼間は子供連れでにぎわっていたが、夜更けの今となっては危ないのか人影もない。近くにあるベンチに腰掛けガース長官は一休み…。

 

「起きたら~」

低いのか高いのかわからない怪しげな声に不意に長官は起こされた。

「は、ここは」

いつのまにか寝てしまったようだが、周りの景色は地元オオンカワ川川沿い公園ではない。やたら河原がひろく、そこら中に石が積まれており、うなだれた小さな人影が石を積んでは大きな赤い体の男たちに邪魔されている。

(ま、まさか、ここは)

「じ~ご~くへ、ようこそ!」

と白髪交じりの中年女がニタニタを笑いながら答えた。

 嫌な予感がドンピシャのガース長官。

(く、くう、生前の行いが悪いからなのか。グンミョウジ観音に寄付もしたのに、やはりお布施が足りなさ過ぎたか。もう少し猶予があればああ)

と金で来世を買う気満々のガース長官を女は頭のてっぺんから足の先までみわたして

「ありゃま、耳だけじゃないじゃないか、パーツ揃ってるし」

「へ?」

(パ、パーツ?なんのことだ)

女の言葉にとまどうガース長官。女は抱えていたカバンから書類を取り出し、眼鏡をかけて読み始める。

「あー時期違ってるわ。ちょいと早かったんだねえ。どうりで五体満足で来れたわけだ」

ウンウンと一人納得する女。

(つ、つまり私は早く地獄に来てしまったというわけか。しかし耳とかパーツとかってどういうことだろう、それに五体満足って)

ガース長官は女におそるおそる尋ねてみた。

「あのう、五体満足とはその」

「ああ、あんた、耳だけで発見される予定なんだよ。えーまあ、あの親分、アベノってのが、失脚つうか、捕まっちゃって。口のひん曲がったお友達も。で、あんたは逃げおおせたんだけとさ。怒り狂った群衆にとっつかまって、殴られ、蹴られ、踏まれてた挙句に体を串刺しにされ、ボコボコと叩かれ、刃物で生きたままバラバラにされて、それも踏みつけにされて、ちぎれた肉の塊の状態で発見されるんだよ。そしてその特徴のある耳のおかげでアンタの死体と判明して…」

世間話でもするような口調でガース長官の凄惨な死にざまを語る女。ガース長官は恐ろしさのあまり思わずチョビッと失禁してしまった。

「ああ、あの、私どうなるんでしょう」

ガタガタと震えながらかろうじて口を開くガース長官。女は呑気そうに答える。

「あ、そうだね。今回は予定外だから」

「ということは現世に戻していただけるんですか」

「一応記憶消して戻す予定だから安心して」

(やった。生き返ったら各地の神社仏閣に寄付だ。まだ数年猶予はある)

ホッとするガース長官。安心するとなにやら好奇心が湧き出てきた。

「あのう、ちょっとだけ中の様子をみせていただくことは」

「そうだねえ」

女はちょっと考え込んで

「あんたらのお仲間のせいで、こっちもいろいろ忙しいからねえ。だからこの手のミスをする奴も増えるし。ちょっとこっちに来る奴を減らすためにもショックを与えておいたほうが……」

ブツブツと独り言をひとしきりつぶやくとガース長官に向き直り

「少しだけ、私、奪衣婆の裁量でできる限りだよ。一応上にも許可とるから、ちょっと待ってな」

携帯電話のようなものを取り出してしゃべりだした。

「あー大王様につないでください。え、もうご存知?さすが大王様。は、見学歓迎?少し反省させ改心させとかないと超繁忙期がくる?そうなったら数百年、ひょっとしたら数千年は休みなし?それは嫌です~。それを防ぐためにちゃんと説明しておけ?わかりました、では遠慮なく」

女、いや奪衣婆はガース長官のほうに向きなおり、こう言った。

「じゃ、ちょっくら“春の地獄見学ツアー”を行うよ~」


「ぎゃあああああ、止めてくれええ、ゆ、ゆるして」

と叫ぶ男たちの声。

奪衣婆に連れられて、映画館の扉のようなところを開けると、細長い橋のような通路がかかっており、その下にまさに地獄の光景がひろがっていた。下をみると中年の男たちが若い男たちに囲まれ、何回も刺されている。悲鳴をあげる男たちに構わず、何十回も彼らを突き刺す若者たち。中年男たちの耳をつんざくような悲鳴に思わず耳を塞ぎたくなるガース長官。

「こ、ここはどういう地獄なんですか」

奪衣婆に尋ねると彼女は頭を掻きながら面倒くさそうに答えた。

「あー、最近、っていってもここ70~150年ぐらいで新設されたニホン専用エリア。どうせ見てもらうなら教訓もこめて知ってる奴等がいるところがいいと思ってさ」

「知ってる奴って」

「あー、ほらさ、トッコーての?あれ命令した奴等。命じた割にはおめおめと生き残って反省も後悔もしねえし、死んだ部下の遺族になんもしなかったからさ。ここでゆーっくり生前の行いの報いをうけてもらってんのよ」

「で、ではその旧ニホン軍の将校たちですか」

ガース長官が目を凝らすと、叫ぶ男たちは一様に軍服を着ていた。そして男たちを銃剣で何度も突き刺す若い兵士たち。おそらく特攻を命じられた若者だろ、無表情でブツブツ言いながら上官を何十回と突き刺している。“嘘つき”“無能”などと罵りながら何度も何度も繰り返し上官を突き刺す青年たち。爆音がして青年たちの列が途切れ、男たちの前の空間があいた。どこからか戦闘機が飛行してきて、上官たちの群れに突っ込んだ。

「ぐぶっ」

ドッカーン、爆発音がして上官たちの体が散り散りになったかと思うと再びくっついた。いつの間にか、また部下たちが彼らの体をブスブスと激しく突き刺し始める。延々と続く刺殺と爆死。

(ひいいい、現世で罪を逃れても、地獄ではああってホントだったのか)

「い、いつ終わるんです」

「そうだねえ、最低でも数千年ってとこか。なにしろ犠牲者が多いし。ほっとんど、なんの役にも立たない無能作戦だったし。そのうえ罪もつぐなってないし。きちんと裁判とかやって刑罰うけてもらってりゃあ、数百年ぐらいですんだのに。多い奴だと一億いくかもねえ」

「い、一億って」

「例えばー、ムコクダとかってインパールってのを指揮した奴。まあ延々と何度も飢え死にしながら無駄行進を一人でやって、目的地についたら兵士やら現地の人の亡霊に袋叩き。で、元来た道を戻ってついたらリンチ、その繰り返しを数兆回かな」

と、淡々と通路を進みながら説明する奪衣婆。

(な、なんてことだ。ニホンで現世を楽しんだとしてもそれはわずか数十年、その後に延々と無限ともいえる責め苦がまっているというのかあ)

恐怖におののくガース長官。

「そーいや、アンタの親分のじいちゃんだかも」

「え、アベノ総理のってギジダ首相も」

「あー、見たい?見たい?」

(何をされているというんだ、一体。あの方はいろいろとやっていたそうだし、私如きが知らない恐ろしいことも。ど、どんな罰をうけているというんだろう。見たいような見たくないような)

奪衣婆の問いに、しばらく逡巡していたが結局は猫をも殺す好奇心の方が勝った。

「見たい、です」

ガース長官が小さな声でいうと

「あっそう、それじゃあ、こっち~」

奪衣婆はすたすたと歩きだした。トッコー将校地獄と書かれた扉をでると真っ白な壁にかまれた廊下が続く。進んでいくと“銭ゲバ死の証人地獄”だの“慰安従事者詐欺師地獄”だのと書かれた扉がいくつもある。

(ニホン戦争エリア地獄ということか。ナチス・ヘルなどもあるのだろうか、いやそこらへんはキリスト教、ユダヤ教の領域か。やはり現世に対応していろいろあるのだろうな)

ガース長官が妙な想像を巡らせていると奪衣婆はある扉の前でとまった。奪衣婆に促されて、ガース長官はその扉をあけると

 「ひゃはははあ~」

といきなり奇声をあげた顔が大画面、いやモノホンの大きな顔がガース長官の目の前に飛び出してきた。目をむいて、大口を開けた顔。楽しいどころか苦しすぎて声を上げるしかないといった苦悶の表情、どことなく見覚えのある、その顔は。

「ギ、ギジダ首相?」

10メートルを超す大画面でアップされた顔だったため、すぐには確信がもてなかったが、よくみるとそれはアベノ総理の祖父、ギジダ首相その人であった。

「ああ、7311部隊の実験体責め苦か。比較的マイルドなアンポ闘争責め苦とかオキナワ他いじめ責め苦とかよりはインパクトあるけどねえ。もちっと派手な戦争犯罪責め苦、たとえばマンチューで置き去りにした市民やら虐殺された中国人に何度も何度も生き埋めにされるとか機関銃で穴だらけにされるとかでも」

「な、なんです、責め苦は一つじゃないんですか」

とガース長官が聞く間も

「グ、グルジイイイ、ぎゃああああああ」

ヨダレをたらしながら叫びまくるギジダ首相。飛び散る唾をよけながら、ガース長官はかろうじて言葉をつづけた。

「何故、ギジダ首相にはそんなに責め苦がいくつもあるんですか」

「あーそりゃ、やった悪事が半端ないからね。いまも被害続いてるし」

「被害?」

「7311部隊のまきちらした毒で苦しむ中国人はまだいるからねえ。ひどいよねえ。オキナワとかまだまだ下にみられてるしさ。第一子供や孫、とくにアンタの親分はさらに悪行をつづけてるしねえ。それから考えれば、これでも温情のほうだよ」

「お、温情?」

なんだからわからない劇薬の実験台にされて苦しみもがき続けるギジダ首相。しかも責め苦はこれだけではないというのだ。しかもまだまだ続くという。

(なんという恐ろしい。ギジダ首相は神仏に寄進とかしなかったのだろうか。ナカゾネ元首相があんなに熱心に仏像を拝んでいるというのはこれを逃れるためなのか。しかし、ギジダ首相は確か)

「その神社にまつられたから、温情ということですか」

「あー、ヤズクニだっけ。違うよ、娘っ子とか、少しは祈ってやる奴もいるから。ま、あそこで亡くなった兵士たちにド突かれたりしてるけどね、昼間は」

「ド突かれって、そんな馬鹿な」

「だってさ、ヤズクニって、帝国政府だかのゴリ押しのために死んでニホン恨んでいる人に、“どうか祟らないでください、神様に奉っときますから”っていうのが裏の意味なんだよ、確か。まあ宮司でも知らんバカはいるらしいけどさ、今は」

「ご、御霊神社だと」

「まーそうだね、ギジダとかナンタラ戦犯は~、つまりは生贄というか死んでるから死に贄か、死んだ兵士だの犠牲者に“こいつを好きにしていいから、ニホンの子孫たちは呪わないで”って捧げられたわけで」

「そんな意味があったとは」

「だから裏だってば。一般人はわかってないんじゃない。あ、今は似非神道がはやりすぎて、大元もいい加減らしいねえ。こっちは仏側で神道の乱れはメージイシン以来よくしらんのよ。昔仲良かったけど今は距離置いてるし」

「そのう、それでギジダ首相はどれぐらいの」

「まだ計算中だけど、軽く10億年、ひょっとして初の数千京年かな。休みにあっちの死の天使さんと飲んでたんだけど、ヘル・ナチのヒットトラーも超えるかもって話が」

「そんな馬鹿な!なぜ、ナチより酷いんです。だいたいトップではないのですよ、戦時中は」

「だから、現在進行中のものもあるからさ。ヒットトラーには直接の子孫いないし、悪はまき散らしたけど、今残ってるのもそんなないし。あのギジダってオッサン、自分が助かるためにニホンの人やら国土やら、実はいろいろ売ってるからねえ。しかも孫であるアンタの親分が祖父さんの威光を笠に着て、さらに罪を積み重ねてるっていったじゃん、嘘つき、誤魔化し、恫喝、違憲行為、文書偽造に依怙贔屓人事にetc。ま、アンタもだけど」

奪衣婆の冷たい視線に身も縮こまる思いのガース長官。意を決して、聞いてみた。

「あのう、どれぐらい積めば」

「は?ひょっとして金積めばいいと思ってる~、それで責め苦を逃れたいと~」

ひょうきんな声と表情の奪衣婆だが目は全く笑っていない。

「そーんなことして喜ぶのはガメツイ破戒坊主だけだよ~ん、ネトネトチーン。あ、アンタのとこの末端ネトキョクウどもの口調を真似したけど、それ逆効果だからね」

「そ、そんな、じゃあどうすれば」

「アンタに名前が似てる前の前の総理さん、カンカンさんだっけか。あの人みたいに仏様めぐりして煩悩を払って、民のために祈り続けるとか」

(にっくきミンミン党の総理だったカンカンの真似なんかしたくない)

激しく首を振るガース長官。その様子に奪衣婆は半ば呆れたように言う。

「それでもさ、アンタの場合、数年かねえ免除は」

「ほかに方法は、方法は」

「帰ったら全財産貧しい人たちに寄付して~、社会貢献に勤しむとか~。ちゃんと人に謝るとか~」

「謝るって、誰にですか」

「オキナワの人とか、記者さんとか~、山ほどいるでしょうよ、アンタにはさ」

(うう、タマギギ知事に、マンゲツ記者に謝れだと、そんな、そんな、みっともないこと~)

下をむくガース長官。

「はあ、まだ反省が足りないか。だけど、もう夜も明けるし、帰んなさい」

「え」

「とーくべつに記憶は残すから、余生をきっちり送るんだよ~、でないとグチャグチャの死体になって、責め苦が続くよー、アンタら全員酷い目に~」

掠れていく奪衣婆の声。


「ハックション!」

 と、不意に長官は目を覚ました。気が付くとそこは公園のベンチ。

「ね、寝入ってしまったのか。しかし何という夢だ。しかもなんという失態、誰もみていないだろうな」

幸か不幸か周りに人はいないようだ。だが

「誰も探しに来ていないのか、スマホの履歴は」

昨夜からの件数はゼロ。

「妻も息子たちも、私がどこにいるかはほとんど気にしていないのか、まあいつものことだが」

公務で家にも帰らず、こうして久しぶりに地元にきても支援者の顔出しに忙しい父親、夫などほぼどうでもいいのだろう。ガース長官自身家族にロクに構っていない。しかし

「心配する家族などいないも同然。職場でも、あいつらはどうせ出世だの金目当て。そしてたとえ総理になったとしても」

総理になっても、すでに60代後半のガース長官。長生きしても30年余り、そのあとはアレが

「いや、夢だ、夢に、ハッ」

激しく首を振りながら背広をみると、いくつも付いたシミ。そしてズボンの股間にも。

「これは正にギジダ首相の唾のあと、ズボンはあのとき漏らした…、いや、そんなまさか、きっと宴会でこぼした酒か何か」

と必死で否定するが、いつも食事マナー、飲み会マナーにも厳しい自分がそんなことをするわけはないと心の奥底ではわかっていた。

「まさか、まさか、いやもう時間だ、この話はあとで考えるんだ」

“記憶は残すからね~”

どこからともなく聞こえる女性の声。

「いや、空耳だ、空耳、クション!」

急いでその場を立ち去るガース長官。あとにはかすかな声と散りゆく桜が残された。


(春とはいえ、まだ寒い時期にあんなところで寝てしまったから妙な夢をみたのだ。きっとそうだ、しかし)

ガース長官はふと周囲を見渡す。出世のため、保身のために群がる部下たち。そういう自分自身もアベノ総理の阿保さ加減に利用し、私腹を肥やし、息子たちの会社を贔屓させている。他のものもそうだ。だが、それでいいのか、このままでは待っているのは続く地獄、そんな責め苦を負う見返りに手に入れた生活は

(茶の一杯も飲めず、心底心配してくれる家族、友人もいない。どこまでいってもつまらん宴会と会見と工作だけ、私の人生は…)

物思いにふけるガース長官。

「長官、記者会見が始まりますので」

タニタニダ副長官の声に我に返るガース長官。


「いや、質問はここまて、クション!」

と、いつものように半ば強引に切り上げて部屋をでるガース長官。それをマンゲツ記者が追ってきた。

「あの、長官」

また食い下がる気かと振り返った長官は

「な、なんだね、クシュン。マンゲツ君、質問はもう」

といつもとは違った神妙な顔のマンゲツ記者。

「いえ、そのお風邪ですか、ご自愛ください」

その言葉に思わず、

「ああ、ありがとう、き、君も気をつけて」

と返してしまうガース長官。

 一礼して去るマンゲツ記者の後姿を見送りながら、この間の夢?のことを思い出す。

(社交辞令とはいえ、私を気遣う言葉をかけてくれるのは、宿敵のマンゲツだけなんて。こ、こんな人生でいいのか。死後待っているのは、果てしなく長いあの苦痛かもしれないのに~)

そう考えると立ち尽くしてしまうガース長官だった。


象徴的な夢をみて人生の転機が訪れた、もしくは人生を再考、振り返るきっかけになったなどということは意外に多いらしいですが、ガース長官の場合はどうなりますことやら…

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[一言] 御霊神社…なるほどと思いました
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