夢の始まり
初めまして、せっかく小説を書くなら絶対に映像化出来ない、小説の概念をぶっ壊した小説にしか表現出来ない何か面白い物を作りたいと思い、仕事の合間に妄想しては失敗して呑んだくれて…泣き濡れて…はや10年仕事をクビになり、現実逃避した末、夢の中で考えた作品です、読んだ方の何かの糧になればいいなぁと怠惰な生活を送りながら、心にもない事を考えながら最後まで書けるかはモチベーション次第そんな壁の落書きレベルの作品です
白い世界にいた
何もない世界に男が1人立っている
男「何処だここ?いや…俺は誰?」
?「いやいや、そういうのいいから、別に誰も求めてないし」
唐突に声がした、何処からともなくやる気のない声が響く
男は辺りを見渡した
だが声の主の姿は見当たらない、声を聞く限りは女の子だろうか、そのかったるそうな声は天の声的に男に喋り掛けていた
?「じゃ、これから異世界冒険頑張って盛りあげてね~よろしく~」
男「異世界冒険!?何それ?てかここ何処だ?俺は誰?」
?「だ~か~ら~!誰もそんな記憶喪失設定求めてないんだよ!とっとと思い出せ!」
松麻柾「?!!左に名前が?いや思い出した俺の名前は松麻柾」
?「おいMM号!平和ボケしてどこにでもいる普通高校生の平凡陳腐のゴキブリみたいなお前に、作者からプレゼントだ…ほら伏線…」
?「まさか…この世界にたどり着く事の出来る人間がいるとは…!それとも過去の因果が関係しているのか?!貴様一体何者だ!」
声の主は急におどけるような1人芝居をしていい放った
MM号「誰がMM号だ!左の名前も変わってんじゃねーか!プレゼント?伏線?それに伏線にしては雑すぎだろ!?貴様一体何者だって?お前が何者だよ」
ティナ「私の名前はティナだよ…ほら左に書いてあるだろ?実は今考えたんだけど」
ティナ「以後、私の言葉は作者の言葉だと思って肝に銘じておけよ」
柾「作者?伏線とかプレゼントとか訳わかんねぇよ」
ティナ「まだわかんないの?この世界は小説の中、この世界において作者の言葉は神の言葉に等しい…せいぜい足掻いて楽しませてね、じゃないとすぐに飽きちゃうから…私が」
柾「お前がかよ!」
ティナ「お前じゃないよ?ティナ、次お前って言ったら…消すよ?」
急に声のトーンを下げティナは機嫌の悪さを全面に出し威圧した
柾「…ごめん…なさい」
ティナ「じゃあそろそろ行ってらっしゃーい」ニコッ
姿は見えないが笑顔が怖い
柾「えっ…ちょ…待って…!」
だんだんと柾の体が消えていき光の粒に変わっていく
ティナ「そうだ伝え忘れていたけど世界を作るのは君の仕事だからね」
柾「仕事?」
ティナ「そう、王道バトルでもファンタジーでもラブコメでもなんでもいいや、適当によろしくールールは…」
言い終わるより前に柾の体は消えて無くなっていた
ティナ「まぁいいっか、そのうち分かるでしょ、仕事も終わったしビールでも飲むか…」
やわらかな朝の光が頬に射すのを感じる
ぼんやりとした意識の中で今までの出来事が夢だった事を悟りホッとしたような非日常への憧れからか少し残念な気持ちにも駆られる
意識が夢の中から現実に戻るにつれ誰かの呼ぶ声がだんだんと聞こえてきた
(そうだ、俺には幼なじみの女の子がいたんだっけ…おせっかいにも毎朝起こしに来るんだ…)
幼なじみの女の子「……っと!そろそろ起きないと間に合わなくなっちゃうよ!」
柾は起きるより先に「今起きるよ」と口にして、気だるそうに、徐々に朝の光に慣れるようにゆっくり目を開いていく、そこには健康的な褐色の肌に茶髪のポニーテール…ぷっくりとした唇の身長2メートルはあろうかという、ゴリゴリマッチョの幼なじみの女の子?が仁王立ちして待っていた
柾「…あれ~?…こ、こんなマッチョの幼なじみいた…かな…まだ夢の中みたいだ…」
柾は再度布団に潜るとガタガタと震え出した
幼なじみの女の子「もう!また二度寝して!今日は王国の千年祭でしょ!一緒にお祭り見てまわる約束したじゃない!」
そう言いながら柾の布団をひっぺがし現実を突き付ける
柾「イヤだぁ~こんな幼なじみ欲しくないー!もっとおっとり系巨乳女子高生がいぃ~!さっきのやっぱり夢じゃなかったんだ…て言うかお前誰だよ!」
ハッサソ「柾ったら、左に書いてあるじゃない、寝ぼけてないで朝ごはん出来てるよ?」
柾「その紹介の仕方流行ってるの?ねぇ?…名前ハッサソはいろいろまずくない?」
その問に答えはなく、一階に降りていくハッサソ
柾もしぶしぶ一階に降りる事にした
一階に降りた柾は椅子に座りテーブルに用意されたプロテインをゴキュゴキュと喉を鳴らし飲み干した、摂取したプロテインが血肉に変わり自らの肉体を構築していくのを想像すると、笑みがこぼれるのを禁じ得ない、プロテインが五臓六腑に染み渡り眠っている身体にモーニングコールを告げた、それは儚くも壮大な昨夜飲んだ焼酎を彷彿とさせ、柾の脳内に快楽物質をドハドバと…
柾「勝手に俺の行動変えないでくれない?俺の脳内どうなってんのこれ?」
ハッサソ「もしかして、ティナに何も聞いてない?」
ハッサソはキョトンとした表情をこちらに向ける
柾「あいつの事知ってるのか!?」
ハッサソ「ティナは私の双子の姉、ここは小説の中なんだよ」
柾「双子…たしかに声は…似てる…気がする…」「そういえばあいつも小説がどうとかそんな事言ってたな…」
ハッサソ「お姉ちゃんはすごい美人なんだよ?色白でスタイルも良くて、私そっくり」自分の発言に慌てたようにハッサソは付け足した「お、お姉ちゃんが美人で、そっ、そっくりって言うのはお姉ちゃんであって私の事を言ったわけじゃなくて!いやよく似てるって言われるけど…」あたふた
目の前であたふたするのが、おっとり系不思議美少女ならいいのにと思うが、現実はガッチリ系筋肉生命体だと恐怖感すら湧いてくる、とりあえずティナの容姿については期待しないでおこう…
ハッサソは気を取り直して続けた
「今、柾の行動を改変したのは私」
柾「改変?」
ハッサソ「そう、この世界にはいくつかルールがあるの」
柾(ルール…確かにこの世界は変だ、喋ると左に名前が出るし、さっき飲む気も無いのに美味しそうにプロテインを飲み干してしまった…)
柾は真面目な顔で頷いた
ハッサソ「じゃあスパーリングしよっか?」
柾「うん…ほえっ?!」
あまりの脈絡のない会話に変な声が出ていた
ハッサソ「大丈夫、殺す気でヤるから」ニコッ
春の空が遠く高くそして青く包み込むように広がる
一陣の冷たい風が二人の間に流れる
何故こんな事になってしまったのか、何処で間違ってしまったのか…幼なじみの女の子とどこにでもいるツッコミしか取り柄のない男…二人の間で流れる時間は止まってしまったかのような錯覚すら覚える
柾「何でスパーリングなんて…しなくちゃならないんだよ…」
消え入りそうな彼の声が…運命が…宿命が…決して望んだ結果ではない事を物語る
ハッサソ「大丈夫だよ、私を信じて…」
彼女の芯の通った声が…瞳が…決して避ける事の出来ない想いを孕んでいた
先に動いたのはハッサソだった「ハァァ~!」と低く発せられた声
丹田に力を込め息を吐く
ゆっくりと彼女の周りの空気が動き始め、空間がビリビリと音を発し振動を伴う
目に見えて彼女に空気が集まり吸い込まれ肉体の周りにオーラを纏う
柾「なんだこの威圧感は…!」
柾には彼女の姿が何倍にも大きく見え、心を折る…刹那
ハッサソ「破ァァァーー!!」
オーラが彼女の手から光弾となり矢のように柾に真っ直ぐ、一直線に進み、胸に突き刺さりその瞬間、辺りは光に包まれ一瞬遅れて怒号にも似た地響きが轟き砂煙に包まれた
ハッサソ「ハァ…ハァ…殺ったか!?」
今の一撃に文字通り全身全霊の力を込めたのだろう、彼女は息も絶え絶えに呟いた
柾「…アレ?…俺生きてる?」
砂煙の中から現れた柾には傷ひとつ、血の一滴さえも流れていなかった
その姿を見たハッサソは膝から崩れ落ち、地面に倒れ己の身体を打ちつけた
柾があわてて近づき彼女の身体を抱き抱える
彼女の身体からは血が吹き出し目は虚ろに空を映している
柾「…どうして…」
ハッサソ「これが…この世界のルール…」ハァハァ
柾「もう喋らなくていい!」
柾の制止を無視して彼女は続けた
ハッサソ「…殺ったか?は…殺ってない…この世界のルール…その1だよ」ニコリ
笑う彼女の表情にはスパーリング中の剣は無くなり、そこにはただ幼なじみの男の腕の中…幸せそうに力無くほほえむ1人の女性の顔があった
ハッサソ「…私ってバカだなぁ…最後まで意地張って…本当に伝えたい事言えなかった…」
柾「………」
柾の頬に熱いものが伝い、ぽたり…ぽたり…と血と泥に汚れた彼女の顔に落ちる
ハッサソ「ねぇ…最後にお願い…聞いてくれる?」
柾は小さく頷いた
ハッサソ「私…に想いを伝える…勇気をください…」
そういうとゆっくりと目を閉じて柾の手を握り自らの頬に手を導く
静かに時間が流れ始めた
懐かしい匂い…懐かしい声…そして懐かしいぬくもりはだんだんと冷たくなっていた…気がつけば柾はハッサソに唇を重ね子供のように泣いていた…
柾「…まだハッサソの想い聞いてないよ…なぁ…返事してくれよ…あの頃みたいにバカにしてくれよ…!」
柾の言葉は空にのまれて消える…誰にも届かない…
柾「ハッサソォ~~!本当は俺のほうが…俺のほうが…!君を好きだったんだ…俺がハッサソから勇気を貰っていたんだ…!ごべんなぁ~」
ハッサソの身体が光に包まれ天へ昇っていく
柾「待ってくれ!まだ行かないでくれ!…俺を1人に…しないでくれよ…」
柾の願いはむなしく響き…誰にも届く事はなかった
でも確かに柾には聴こえていたハッサソの声が…想いが…
「やっと名前呼んでくれたね!私も大好きだよ柾…」
気がつけば雪が降っていた、季節外れの雪…それは地面に落ちては溶けて大地に染み込んでいく、積もる事はなかったそれに意味を求めてしまう自分…ハッサソの想いと重ね「俺の心にも届いているよ」と1人呟き柾は叫んだ
柾「これのどこがスパーリングだぁ~~~!!!!」
次回予告
幼なじみハッサソを倒した柾は愛故の罪悪感に苛まれる!脱力し虚無感に襲われながら無法の荒野を旅する柾は長い旅路の末ハッサソとの思い出の地にたどり着く!そこで柾を待っていた者はハッサソと瓜二つの女性だった!?柾の運命を握る彼女の正体とは?
この世の不条理にツッこめ!松麻柾!負けるな松麻柾!