③お風呂と幼馴染と和樹
後日になりますがキャラクターのプロフィールを投稿します。
恐らくイメージがつかめないと思うので・・・。
それでは3話ご覧ください!
一之瀬家のキッチンには夕飯を終えた後の食器を洗っている白髪の長い髪の美少女が立っていた。
雪葉えるみは片付け終えるとエプロンを外し、コップにお茶を入れてテーブルまで運んだ。
奏はお礼を言うと読んでいる途中の本を一回閉じてお茶を飲む。
えるみも一息つくように腰を落ち着けるとお茶を両手でもてあそぶように揺らしていた。
「奏ちゃん、そういえば学校祭の役割何になったの?」
「和樹たちに誘われてホームルーム企画をやることになった」
「いいなぁ、私も奏ちゃんと同じクラスだったら一緒に出し物の準備とか出来たのになあ」
「例えそうなったとしてもえるは生徒会のほうでの活動になるじゃないか」
「あはは、そうだよね」
えるみは両手で持っているコップをテーブルに置いた。
なにかを決心したように。
「あの、さ、学校祭の後夜祭なんだけど・・・」ピロロピロロ
その言葉を遮るように奏のポケットに入っていた携帯の着信が鳴りだした。
「ちょっと、ごめん」と断りを入れて携帯を取り出すとそこには本田和樹と表示されていたので2階に上りながら電話に出る。
なぜ二階まで行く必要があるのかというとえるみのことだ。
えるみがうちによく来てることなんて誰も知らないし、教えたら教えたで嫉妬で殺されそうだからだ。
信者に知られるなんてもってのほかだ、殺されるだけじゃすまない、拷問から始まるだろう。
親友になら教えてもいいと思ったが和樹に知られると何されるかわからないため恐らく親友のなかで一番知られてはいけない存在だ。
「もしもし」
『おう、奏、ばんわ~』
「で、どうしたんだよ和樹」
『それがよ、お前に借りてた官能小説あるだろ?それを返しに行こうかと思って』
「ああ構わないけどいつ返しに来るんだ?」
『いつって・・・今電話かけたんだから今日に決まってるだろ?』
「きょ、今日か!?」
『ああ、で今お前の家の前にいるわけだから開けてくれないか?』
まずい、まずい、まずい、面倒くさいことに巻き込まれそうだ。
とりあえずと小説を一瞬で受け取ってとんずらしてもらうのがベストだな、と考えた奏は了承することにした。
「わかった。いまから玄関に行くからまっててくれ」
『はいよ~』
一階に降りるとお風呂の明かりが着いていてリビングにはえるみの姿はない。
恐らく電話の合間にお風呂を済ませちゃおうという粋な計らいだろう。
好都合だ。
説明の手間が省けてよかったのが幸いだ。
玄関の扉を開けるとそこには和樹が右手にビニール袋をぶら下げて立っていた。
「おせえぞ、奏」
「ごめんごめん、じゃあ本を受け取るよ」
「お、そうだな」
和樹はビニール袋に手を突っ込むとあることに気づいた。
「わりぃ、忘れた」
「お前何しに来たんだよ!?」
さすがにツッコミを入れざる負えない奏はまさかの展開を考えた。
あのビニール袋が食べ物で家の中に入れてくれとか言われて和樹をリビングに入れると風呂から上がったえるみと鉢合わせという最悪なビジョンが見えた。
「それでこれおふくろが・・・」
「うん、ありがとう!」
ビニール袋をパッと取ると「それじゃあ」と笑いながら扉を閉めようとすると和樹は「おい」と言葉を発した。
(やばい、隠しごとがばれたか?)
冷や汗を掻く奏に和樹はそのビニール袋を指さした。
「それ限定品のウェルダーツのアイス3種だから味わって食えよ」
笑いながら教えてくれると和樹は手を振ってその場を去ろうとした。
その時だった・・・。
「奏ちゃーん、次お風呂いい・・・・・よ?」
「あ・・・」
「え?」
と浴室から出てきて玄関まで歩いてきたえるみは和樹を見て呆けたようにきょとんと口を半開きにしていた。
奏は顔に手を当てて終わった、ということが誰にでも知ることができるような表情をしていた。
「おい、奏」
「なんだよ」
リビングのソファーには奏と和樹が向かい合って座っていた。
キッチンにはコーヒーとお茶請けを用意しているえるみの姿が見えた。
「なんだよ、じゃねぇよ。なんでお前の家に雪葉さんがいるんだよ!」
「お前雪葉ちゃんって呼んでなかったか?」
「論点はそこじゃねえ!」
熱くなっている和樹を相手にするのが面倒くさく論点をずらそうとしているがずれる気配はない。
「はい、どうぞ」
えるみがコーヒーを和樹の前にあるテーブルに置くと「あ、どうも」と礼をいいカップを取り一口飲む。
奏の分もテーブルに置くとそのまま奏での隣に座った。
「ええっと、ちゃんと会うのは初めてですよね。」
「そうっすね」
えるみは和樹と喋ったことがないような口ぶりをしていた。
同じ学年のえるみにタメで話すのは少し照れくさく敬語気味になっている和樹を見るとこれはこれで面白いと感じる奏は心の中でだけ笑っておいた。
「ええっと、本田くんよね。よく奏ちゃんが本田くんのことを話してくれるからある程度は知ってるよ」
「お前、雪葉さんに何を喋ってるんだ?」
「お前の恥ずかしい話は全て話した」
「男同士の内緒話をてめえは」
いままで奏はえるみとの会話が途切れた時に空気が気まずくなるのを防ぐために仕方がなく和樹の話題でつないでいた。
そして和樹はため息をつき、カップに入っていたコーヒーを飲み干す。
そっとカップをテーブルに置くと手を組んで真剣な表情をあらわにした。
「で、お前らどこまでいってるんだ」
「は?」
こいつは何言ってるんだ。
どこまでとはなんのことだろうと思いえるみのほうに顔を向けるが頬を染めて下を向いているためアイコンタクトで問いを投げれない。
「さすがにここまでいってたら付き合ってることは隠せねえだろ」
「いや、付き合ってないんだけど」
・・・・・・・ 沈黙が続いた。
「は?まじで?」
「まじで」
・・・・・・・ 2度目の沈黙
「じゃあなんで雪葉さんがいるんだ?」
「幼馴染だし普通のことなんじゃないのか?まあほかに知られたら結構困るけど」
困るというのは自分の命が危ういという意味であって他意はない。
「で、なんで雪葉さんは寝間着姿なんだよ」
「それは泊まってるからだよ。普通だろ?」
なんとかこの場をしのごうとしている奏のゴリ押し発言には無理があったと思っていたが世の中は甘かったらしい。
「あー、幼馴染だったら普通なのか?普通なのか、そうか、悪いな俺が勘違いしてたっぽいわ」
彼の中でなんかまとまったっぽいし、一件落着。ではすまなかった。
「いや、だとしてもだぞ。夜にこんな超絶美少女が近くにいたら過ちが起きてもおかしくないんじゃねえか?」
過ちというのは彼の中では恐らく夜のスポーツのことだろう。
というより、なんとなくだがツッコミかたが違うような気がするし、
「ああ、そうだな。危ないな」
「奏ちゃんってヘタレちゃんだから大丈夫だよ」
「そうだな、奏がそんなことができるような男なわけがないからな。」
「おい」
和樹とえるみが二人して笑うと奏は自分が馬鹿にされたことを少しムッとしていた。
腰を上げる和樹は「そんじゃ俺はお暇するわ」と言い玄関まで歩いていく。
送るようにえるみと奏が着いていく。
「取りあえず今日のことはどうせ俺以外には知らないんだろう?黙っておいたほうがいいよな」
「助かるわ」
「まあなんていうかお前、、、やっぱ羨ましいわ。じゃあな奏、雪葉ちゃん」
最終的にさん付けはやめてちゃん付けにしたのかよ。よくわからない男だ。
「本田くん気を付けて帰ってね」
「おう、じゃあまた明日な」
「ありがとな和樹。また明日」
自分の家へと歩き出す和樹の後ろを見送った。
今回は何とか丸く収まり大事にはならなかったがこれからはこういうことがないように気を付けようと心に決めた奏だった。
自分の命のためにも。
「で、奏ちゃん。本田くんは何しに来たの?まさかアイスの差し入れってだけじゃないよね?」
「ああ、俺が貸していた小説を返しに来てくれたはずなんだけど忘れて来たらしい」
「なにそれ」
小さく笑っているえるみの顔を見ると自然と心が満ち足りた奏は今日初めての微笑みを見せた。
玄関に入ると先ほど電話が来る前のことを思い出した。えるみが何かを言いかけていたこと。
だけど大したことではないだろうと思い、聞かなかったことにした。
サブタイトルが適当