技
魔力を練れる様になったので、現状どんな武器を型どれるのか試してみた。
現状では一般的な剣や刀は作れるが質があまり良くない。
見た目は蒼色の刀身なのだが。
正確には普通の剣や刀よりは上なのだが名刀と呼ばれるような一品には及ばないのだ。
ダガーとかの小型武器はなんとか10本作れたのだがそれ以外は1本、ないし2本が限界だった。
「私の〘武器生成〙は一本一本の質はあまり気にしないのでどうしても質に関しては落ちてしまうみたいです。いつも使う時は大量生成して数で物をいわすので。」
とシーラは言っていた。
確かに数で押すにはいいのかも知れないがこちらは一刀を振るうのが主だ。
魔力がないから数が精製できないのが原因なのだが。
まぁ、数が作れてもどっかのマフラー付いた馬に乗ってる眼帯に青の陣羽織着てレッツパーリーとか言ってる武将みたいな事はしないけど。
六爪流って腕疲れるからやりたくないんだ。
シーラの戦術は、某赤い弓兵の攻撃や金ピカ王に近いんだけどね。
こちらは数に限度があるので質を上げたいのだがシーラのスキルが元とは言えこっちは質を上げるには魔力を必要とするので限界まで魔力を込めても現在の魔力では作れて業物。
良業物には僅かに届かない。
最上大業物なんて夢の夢。
この世界での武器のランクは
普通品、上位品、特上品、最上品、伝承品、神々の品と分かれている。
業物はこの世界での上位品に相当するらしい。
イデア・ファートゥムはランクとしては最上武器から伝承武器の堺に分けられているらしい。
伝承品には僅かに足らないらしい事をエルビスが嫌そうに言ってた。
どうして質を上げたがるかと聞かれればこう答えよう。
一定以上の担い手には一定以上の刀が必要なのだ、と。
どれだけ優れた腕前を持っていても、武器がなまくらならその腕前を存分に発揮できない。
そして、どれだけ優れた武器を持っていても腕前が足りなければ宝の持ち腐れとなる。
腕前と武器は比例するべきなのだ。
その理論で行くと全力の能力を使えないぽんこつマスターは自分なのだが。
これはすぐに改善されるし?
全然悲しくなんてないんだぞ?
よし、この話は終わりにしようそうしよう。
「な~に湿気た面してんですか?ご主人様。せっかく迷宮の残り階層が二つだけになったって言うのに。」
「いや、別に問題ない。この迷宮のボスはどんなのかと想像してただけだ。」
「そういう事にしておいてあげましょう。」
バレてるの?
何考えてたかバレてたの?
「そう言えばマスター。迷宮を出たら剣術を教えてもらえませんか?なにぶん剣を造ることは出来るのですが手段は飛ばす事が主なので接近されると弱いんです。」
「どの口がいうんですかねぇ?接近される前に基本片付けてた癖に。シーラちゃんはご主人様と一緒にいたいだけでしょ?ドキドキ修行作戦!ポロリもあるよ?」
「エルビス?」
「・・・おいたが過ぎました。ごめんなさい。」
仲がいいんだなぁ(現実逃避)。
「教えるのは良いけどどっちかって言うとシーラは剣より魔法とか弓とかでの戦闘の方がいいと思うぞ?なので俺に魔法を教えてくれ。」
こちらはてんでダメなんだよ。
魔法とか使いたいけど基礎を教えてもらわにゃ使えんらしいのだ。
独学でやるにも誰かから基本を学ばないけないとか面倒くさ・・・いや何でもないです。
「わ、わかりました。絶対ですよ!」
これで講師ゲットだぜ。
なんか後ろでエルビスがメッチャニヤニヤしてるけどスルー案件だな。
◇
「いやぁぁぁぁ!蜘蛛!蜘蛛ぉぉ!蜘蛛はいやぁ!ご、ごごごご主人様!さっさと!さっさと倒してください!」
「うるせぇ!この蜘蛛火吐くから近づきずらいんだよ!」
「シーラちゃん!シーラちゃんが遠距離からグサッと!」
「無理です!素早いので標準を定めにくいんです!」
今まで順調だった迷宮攻略は残す所あと二階と言うところで阿鼻叫喚と化していた。
何故ならフロアリーダーが馬鹿でかい蜘蛛だったのだ。
エルビスが喚き出し、実は大の蜘蛛嫌いということが発覚した。
そして、何よりこの蜘蛛めちゃくちゃ横に速く動くのだ。
更に蜘蛛の癖に火を吐く。
お前の弱点属性じゃねぇのかとツッコミたいがファンタジー故に致し方ないという結論に行きついた。
火を吐くから俺は近づきずらいし、めちゃくちゃ横に速く動くからシーラは剣を飛ばすことも弓で射る事も出来ない。
火さえ吐かなければ俺一人で行けるんだけど火が熱いので近寄れない言うわけだ。
・・・昔なら火を切るぐらい行けたんだけどなぁ?
腕鈍ったかな?
いや、この蜘蛛の火が普通と違うんだ。
おのれファンタジー生物め!
「シーラ!エルビスが宛にならないから取り敢えず魔法でアイツの動きを止めれるか試してみてくれ!」
「わかりました。」
こうなればファンタジーにはファンタジーで挑むのが一番だ。
俺が使えれば一番いいんだろうなと思うが無い物ねだりはいけないと思うんだ。
「《氷の壁鎖》」
シーラが唱えると蜘蛛を氷で出来た鎖が蜘蛛の脚に巻き付く。
さすが魔法。
「良し、一瞬でも動きが止れば!?」
巻き付いた氷の鎖は蜘蛛の動きを止めることなく砕かれた。
「えぇぇ?本気?」
「鎖で駄目なら!
《剣の檻!》」
今度は剣が降ってきて蜘蛛を囲む。
が、蜘蛛が火を吐くと飴細工の様に剣が溶けた。
「鋼が溶けるって何度あんだよ!あの火はさぁ!」
そもそも魔法で作られた剣は普通の剣と耐久同じなのか?
どうする?
・・・そうだ。
「シーラ、俺が蜘蛛の気をひいて動きを止めるからその隙にあいつの胴体に剣か何かを突き刺して貼り付けにしてやれ。出来るな?」
「はい、マスター。ご武運を。」
「はぁ!」
蜘蛛の死角に回り込み脚に作ったダガーを投げ込こむ。
狙うは関節。
刺さったのを確認したと同時に別の死角へ。
そして、ちくちくと関節にダガーを投擲。
ヘイトを稼ぐと同時に相手の動きを封じる。
と言ってもこの蜘蛛刺さったダガーを一切気にせず動き回るんですが。
「いやぁぁぁぁ!キモイ!めっちゃキモイ!なんであの蜘蛛脚にダガーナイフ刺さったまま動けるんですかぁ!?」
エルビス、うるさい。
「そして、その蜘蛛より速く動けるご主人様の身体能力の異常性!」
「喧しいわ!ほっとけよ!」
集中がきれるわ!
昔黒っぽい服着てたら祖父にゴキブリ並とか言われたトラウマが蘇るだろ!
あれ以来黒っぽい服着なくなったんだからな!
「えぇい!このトラウマが思い出されたのもお前のせいだ!」
八つ当たりにも程がある叫びを蜘蛛にぶつける。
と同時に蜘蛛の脚を2本程切断する。
八つ当たりパワーは時として限界を超えるのだ。
「今だやってしまえ、シーラ!」
「わかりました、マスター!
〘鋼の渦〙!」
螺旋を描く鋼は一本の槍となり蜘蛛を貫き縫い止める。
『KISYEEEEEEEE!』
蜘蛛は動くことが出来ずにただ藻掻くことしか出来ない。
「はぁぁぁぁぁあ!!」
日本刀に作り替え、鞘に収め構える。その構えは抜刀。
これで決めなければ死を意味する。
だというのに俺はこの状況で笑っていた。
もし、蜘蛛が火を吐いてきたら。
もし、何かが乱入してきたら。
そう思うとワクワクしてくる。
要は戦闘狂。
戦いを望み、争いのない世界を望む矛盾者。
それが俺なのだと。
「シロガネ流剣技、抜刀術六番。」
シロガネ流に型はない。
けれど、それに準ずるシロガネ流を収めた者が扱える技がある。
型に収めるには複雑だったり、普通は習得できない。
要は奥義だ。
その一つがこれ、
「〘彩花煉死奏〙」
彩鮮やかに花のように咲く煉獄の死の奏。
切られたものが聴く最後の音は煉獄でさえ安らぎに変える死の音。
目に映るは刀の線で描かれる銀色の花。
美しさと呪いを兼ね備える抜刀術。
フロアリーダーの大蜘蛛はこの瞬間絶命した。
リアルで色々あって少し遅れました。
あと4話くらいで1章が終わる予定。
おわるといいなぁ?