解放
世界に来てから彼此4日が過ぎたらしい。
俺は体内時計がめっちゃ狂ってる。
だって時計とかカレンダーなんてないしエイウィレナからは外の太陽なんて見えないからね。
日差しが恋しいのでさっさと迷宮攻略する為に今日も今日とて、レベルアップに励むとしよう。
因みに現在のレベルは36だ。
エルビスどころかシーラにも頭おかしいと言われた。
普通の人間は大人でもレベル10ないらしい。
あと、3日でレベル1から36まで上がるなんてまず無いらしい。
むしろ俺としてはもう少し闘いごたえのある敵に会いたいんだけど。
迷宮をしたに降りてく作業もあと12階層らしい。
「普通、この迷宮は攻略に少なくとも20日は必要なんですけどねぇ?」
「うるせぇ、そもそも俺だって苦戦するかと思ってたさ。でもどれもこれも師範代の祖父には敵わないんだよ。」
「ええい、このチートご主人様め。ならさっさと魔力使えるようになってください。1階にはボスでなんか強い奴いるらしいんですから。レベル40以上あるみたいですよ。」
なんで曖昧なんだよ。
お前、この迷宮中のモンスターのレベル分かるじゃん。
「くす。」
座ってお茶を飲んでいたシーラが小さく笑い声をあげる。
エルビスと二人でシーラの方を見る。
「すみません。二人共仲がいいなと思ったもので。」
「シーラちゃんも会話に加わっていいのよ?むしろカモン。」
「いえ、エルビスのテンションについていけないので遠慮しておきます。マスターとなら構いませんが。」
サラリと自分の別人格を否定されるシーラさん。
「エルビス、お前人望ないな。」
「やかましいですよ!て言うかどのテンションについていけないんですか!?」
「えっと・・・全部?」
「酷い!シーラちゃんなんてご主人様に抱き枕にされてニヨニヨしてるのをご主人様にバレればいいんだ!」
ニヨニヨしてのかシーラ。
てか、抱き枕になんていつした?
そう言えば昨日起きた時いい匂いがした気がしたような?
「あ、あれはご主人様を起こそうとしたらご主人様が寒いと申してたので暖めようと!」
「シーラちゃん、シーラちゃん。自爆、自爆してますよ。普通にご主人様に抱き込まれて抱き枕にされたと言えば良かったのに。」
「~!!」
顔を真っ赤にして走ってどっか行ってしまった。
「で?ご主人様としては?どうなんですか?嬉しいんですか?」
「・・・ノーコメント。」
嬉しいけど堂々とは言えないよね。
にしても、後で顔が合わしづらくなってしまった。
「さっさとくっつけば良いのに・・・。二人共奥手なんですかねぇ?」
「なんか言ったか?」
「いえ、なにも?・・・そうだ、今日からはシーラちゃんも連れて攻略しに行きましょう。そうすれば今日中に迷宮を出れます。」
そうしましょう、なんて言って自己完結してしまったエルビス。
「という訳でシーラちゃん呼んできてください、ご主人様。私だと怒られます。」
「原因はお前のテンションの無駄な高いせいだろ。まったく。」
この後シーラを説得するのにだいぶ時間を費やしたのは置いておこう。
◇
「剣製陣!!」
シーラが杖らしき棒を振るうと地面から大量の剣出現しモンスターをつらぬいていく。
「おお、すげぇ。」
「シーラちゃんはエクストラスキル〘武器生成〙を持っているのです!あらゆる武器を造れる物理最強の子なのですよ!杖は魔法と勘違いさせるための隠れ蓑です。実際に〘ワールドソード〙という空間魔法がありますしね。」
これ、俺いらないよね。
お荷物だよね。
「いえいえ、ご主人様が見てることによってシーラちゃんのスキルはさらに真価を発揮するのですよ。因みにイデア・ファートゥムの真の能力はあらゆる武器に形を変えるという物です。」
さらっと重要なことをこぼすなよ!
・・・しかし、あらゆる武器に形を変えるか。
あらゆる刃物を扱う才を持った者とあらゆる武器に形を変えられる武具。
運命ってあるのかもしれないな。
まだ、魔力無いから使えないんですがね・・・。
「ぶっちゃけるとシーラちゃんは弓などを使って遠距離支援が得意なのでご主人様、前衛頑張ってくださいね?」
「分かった。なら行ってくる。」
直剣片手に戦闘区域に突っ込む。
「シーラ!援護任せた!」
スキル〘シロガネ流剣技〙は常にONの状態なので迷わずフロアリーダーの魔物に切りかかる。
見た目は真っ黒い狼だ。
「ご主人様!フロアリーダーは《ダークウルフ》と言い肉体を闇と同化させて攻撃を回避します!気をつけてくださいね!」
「それ先に言っといてくれね!?」
思っいっきり空振ったんですけど!?
『GUAAAAAAAAAAAA!!!!』
闇と同化してたダークウルフが肉体を元に戻して爪で俺を引き裂こうとする。
「さて、困ったね!」
回避自体はギリギリで出来たが同化されると攻撃手段がない。
「シーラちゃん!弓で援護!」
「〘焔之矢〙!!」
シーラが放った矢は焔を纏いダークウルフの左前脚を射抜く。
「無属性がダメなのか?」
よく分からんが直剣を投げ捨ててイデア・ファートゥムを取り出す。
魔剣なんだし、属性あるだろという安直な考えである。
「ナイフで切れるかなっと。」
闇と同化したダークウルフに切りかかる。
今度は空振りせずにダークウルフの頭部を切り裂く。
すると断末魔をあげることなく倒れる。
――フロアリーダー・ダークウルフを倒した。
――倒したダークウルフから魔力を吸収し魔力へと循環します。
え?
そんなログが映ると同時に身体に激痛が走る。
「が、がぁあああ!」
「ご主人様!」
「マスター!」
エルビスとシーラが駆け寄ってくるが激痛によって声すら上げられない。
神経に針が通されるような異質な痛みが続き気を失いそうになる寸前
――回路を再構築。最適化により魔力量がゼロから千へと増加しました。
というログ共に痛みが消える。
「大丈夫ですか!マスター!」
「あ、ああ。なんとか。」
「・・・ご主人様の魔力が上がってますね。上限がゼロから千まで上がってます。」
「ああ、さっきログが出た。でもなんでだ?前まではこんな事無かったぞ?」
こんなログが出たのは初めてだ。
「・・・ご主人様。ちょっと《ステータス画面》を確認しますね?」
「ああ、menu。」
menuを開いた後に《ステータス画面》を開く。
すると、レアスキルの項目で
〘簒奪者〙B+
というスキルがあった。
「・・・どうやら簒奪者は倒したモンスターから魔力を吸収するスキルみたいですね。どうやって所得したのかは謎ですが。」
「取り敢えず俺は魔力が使えるようになったのか?」
「ええ、分からないことは置いといてイデア・ファートゥムを使えるようにしましょう。ご主人様、シーラちゃんと一緒にイデア・ファートゥムを持ってください。シーラちゃんはイデア・ファートゥムの制御を。私はご主人様の魔力制御を行います。ご主人様は使いたい武器をイメージしてください。出来るなら素材なども正確に。出来ないなら外形のイメージをより強く。」
「分かった。」
エルビスに言われた通りにイデア・ファートゥムをシーラと持ってイメージする。
「(イメージする武器は、使い慣れたあれだ。)」
「〘造れ〙イデア・ファートゥム。担い手の望むものを!!」
エルビスが呟くと目を開く事も出来ない光がイデア・ファートゥムから放たれる。
「な、なんだ!?」
驚きはしたがイメージは崩さない。
崩しては言えないとかんが告げていた。
「ふぅ、成功です。ご主人様が初めての形製でしたので補助をしましたが今度からはご主人様一人でも大丈夫でしょう。」
エルビスが何かを言っているが耳に入らない。
俺の目には透き通るような蒼色の刀身をした《日本刀》が映っていた。
「これが・・・。」
シーラが俺の上に乗せてた手を離し笑いながら言う。
「はい、イデア・ファートゥム。あらゆる武器を形取る武具です。」
「おめでとうなのです!これで迷宮から出るのも楽になりましたね。」
「ああ、そうだな。」
生返事になってしまったが構わない。
それ程に目を奪われたのだ。
この美しき刀身をした日本刀に。
――エクストラスキル〘イデア・ファートゥムの担い手〙が解放されました。
遂に魔剣を扱えるようなったイツカ君。
・・・本当はもう少し早く使えるようになってたなんて言えない。