戦闘
「ときに、ご主人様。レベリングをする際はスライム辺りから始めるといいですよ?レベリングの基本ですよね。」
と、エルビスに言われ最上階のエイウィレナを出たらいきなりスライムに遭遇した。
「検索結果を報告しますよ~?聞きたいですかぁ~?」
コイツはどうしていちいち人を煽るんだろうか?
「いいから話せ。」
因みにエルビスは俺とシーラと俺が心の底から認めた人じゃないと見えないらしい。
また、認めるの度合いも色々違って条件があるとか。
俺とシーラが見えているのは標準装備だそうだ。
本来の〘導きの羽根〙は羽根が行きたい道を示したり知りたい事を断片的に示すスキルらしいが、エルビスが持っていた〘統合〙と〘形を変える者〙というレアスキルにより今の状態になったらしい。
まぁ、エクストラスキルでしかもスキルレベルがEXじゃ無きゃ出来なかったらしいが。
因みに魔物に遭遇すると
──魔物に遭遇した。
というログが出る。
これもエクストラスキル《導きの羽根》EXの恩恵らしい。
他にもレベルアップしたりしてもログはでるらしい。
「了解しました~。《群個体スライム》種族は低級魔族ですね。群体の中でも突出したスライムで肉食。Lv.4ですね。」
「なぁ。」
「何ですかー?」
「お前、言ってたよなぁ?ここら辺はLv.1~2の魔物しか出てこないってさぁ?」
そう、コイツはこのフロアにはLv.1~2までの魔物しか居ないから安全だとか言っていた。
「いんじゃねーか!レベル4がさぁ!思いっきり!最初の遭遇でよお!」
「・・・てへ?あいたぁ!いくらご主人様とシーラちゃんにしか触れないし耐久値設定されてないとっても痛覚はあるんですよぉ!」
「やかましい。どういう事だよ!説明しろよ!」
少し考える姿勢をとった後笑顔で
「・・・時代は変わるみたいですねぇ、今ではこのスライムがこの迷宮最弱みたいです。」
殴るぞ。
あれか?
今の少しの間はマップでモンスターの位置とLvでも確認してたのか?
先にしとけよ。
3レベル上ってやりにくいだろ絶対。
「で、でもでもスライムですし?きっとイージーですよ?」
と、目の前のスライムに変化が起きる。
──おや?群個体スライムの様子が?
なんか不吉なログが視界の端に流れる。
──群個体スライムは周りにあったレイブン・ウルフの死体を捕食し《フロアリーダー・レイブンスライム》になった!
ウルフどこいったし。
見た目がスライムから鴉みたいな見た目の羽根の生えたスライムになった。
キメェ、キメェよ。
「キモイですね。」
「同意するけど、あいつレベルいくつよ?」
「え~とですねぇ、なになに?《レイブンスライム》種族、低級悪魔。レベル10・・・10ですって、逃げます?」
「面倒くさそうだからそりゃ逃げるさ。」
というわけですぐ様方向転換してダッシュしようとする。
──しかし、回り込まれた。
無慈悲なログが視界に映る。
ログ通り方向転換した先にレイブンスライムがいた。
更に方向転換。
──しかし、回り込まれた。
これもログ通り目の前にいた。
これを5回くらい繰り返したあと無駄だと悟り腰から直剣を抜く。
この直剣はイデア・ファートゥムでは無く普通の直剣である。
まぁ、まだ魔力無いからイデア・ファートゥムはナイフなんだよね。
「なんで回り込まれるんだ?エルビス解るか?」
エルビスは溜息をつくと
「レイブンウルフにはスキルの先回りというスキルを持っているタイプが多いらしいですよ。捕食した事によりスキルを継承したのでしょう。ついてないですねぇ。」
うるせぇ。
「取り敢えず様子見だ。こんなんならさっさと魔力使えるようになって魔剣を形作れるようになってから来ればよかったぜ。」
「直剣で勝てるといいですね。」
さて、どうするかね。
「そう言えばスキルってどう使うんだ?」
「スキルですか?メニュー開いて使いたいスキルを有効にすると使えますよ。メニューでON/OFF切り替えができますね。私がやっときましょうか?」
「ああ、シロガネ流剣技を使えるようにしてくれ。」
「ほいほい、了解しました~。」
さて異世界最初の戦闘を始めようか。
◇
「レイブンスライムは羽根を飛ばしてくるのと体当たり、あとは丸呑みが主な攻撃ですよ~。体当たりと丸呑みは翼を得たため速度が上がってるので注意です。」
「わかった。なら、対処は簡単だな。様子見の必要がなくなった。」
「どうするんです?」
「覚えておけ、エルビス。速度が重要な敵に対しての対処法は・・・。」
翼を使い速度を上げ体当たりしてくるレイブンスライムを躱す。
即座にその翼を切断する。
「機動力を削ぐ、だ。」
『GUGYAAAAAAAAAA!!!』
翼をもがれたレイブンスライム、いやスライムは似つかわしくもない悲鳴らしき奇声をあげる。
「どこに声帯あんだよこいつ。スライムだろ。・・・ああ、レイブンウルフを喰ったから声帯を得たのか。生命の神秘を感じるな。」
身体を拡げて捕食しようと飛びかかってきたスライムを瞬時に《両断》する。
再生しようとしたので動かなくなるまでバラバラにした。
──レイブンスライムを倒した。
というログが出たので一安心。
「案外簡単に終わったな。つまらん?レベル10ってたいしたこと無いな。どうした?エルビス。そんな鳩が豆鉄砲食らったような顔して。」
ポカンと口を広げたまま放心してたエルビスに語りかける。
「いやいや、普通はかないませんよ!何ですか!ご主人様の動き。恐ろしく速い一閃で羽根を切った思ったら捕食しようとしてきたスライムを両断するとか。」
「いや、だってこの位出来なきゃ白銀流は使えないし。」
「どういう流派なんですか?シロガネ流剣技って?」
あれ?
こいつ俺の記憶を見たとか言ってたしね?
「残念ながらご主人様の記憶にはセーフティがかかっててランクEまでしか見れてないですよ。そしてランクEはご主人様の見てたアニメとか言うのとかの情報しかありませんでした。ご主人様についてと言えばシーラちゃんがご主人様の好みど真ん中って分かった位です。向こうの世界の一般的な知識は全部わかりましたが。」
好みがバレてる!
やめろ恥ずい!
「シーラちゃんには内緒にしますからさっさと教えてくださいよぉ!ご主人様?」
話されたら立ち直れないだろうから仕方ない。
「白銀流剣技ってのは有りと有らゆる刃物、剣を扱う流派だ。剣の申し子、剣の悪魔、刃の化身とか言われて昔は恐れられてたんだ。スキルのシロガネ流剣技はそれが由縁だろう。ま、時代と共に剣も廃れてったんだが、うちの流派は現代になっても剣を捨てなかった馬鹿な一族でな。」
非常に頭のおかしいことに国からもちょくちょく表にだせない依頼をされていたりした。
「一族の中で唯一まともだったのは師範代、俺の祖父白銀 躊鴆だけだった。それ以外は皆剣が全てみたいなのとか剣技が扱えない白銀のものはいらない、って考えが酷くてな。」
「こっちなら普通、とはいえないかもしれませんが居ますね。そういう輩は。」
「ああ、でも俺は才能がなかった。正確には剣を扱う才はあったんだが剣技の才がなくてな。白銀家に相応しくないって、そりゃ口にするのもはばかれることをされたものさ。型なんて教えてもらえてすらいなかった。そんな中一族の何人かで試合をする事になったんだ。試合形式は剣を使って勝てばいい。剣の型を見ないないただ剣の腕を競う試合だ。」
「ルール無用のデスマッチですね。」
楽しそうに笑うエルビスを見てると重い雰囲気にならなくて済む。
「そうなるな。で、その試合に出された俺はそのまま全試合勝っちまったんだよ。」
あの時の親族の顔は笑えた。
弱者と、才無き者と笑ってきた十四にも満たない子供に大人すら負けたのだ。
信じられないって顔を一人を除いて全員がしていた。
その一人が祖父だった。
「祖父は俺の前に来てこういったんだ。
『白銀流の型を学ぶか?
それとも白銀流の本質を、あらゆる刃物を扱う術を学ぶか?
それとも、剣を捨て普通に生きていくか?』
ってな。んで、俺はその問に対して
『あらゆる刃物を扱う才を教えてください。』
って頭を下げた。」
「おお、それで?どうなったんですか?」
「祖父につきっきりで教え込まれたさ。
白銀流の型は一通りマスターした。まぁ、実戦に使うにはあれな腕前だけどな。全ての刃物を扱う才の方はあっちの世界にあった全ての刃物を扱えるようになったさ。」
普通に学生生活を送りながらだったから地味に辛かった。
まあ、陰でゲームとかアニメ見たりしながら習ってたんだけどさ。
バレた時は怒られるかと思ったけど祖父は趣味は自由、やる事やってればいいって認めてくれた。
ちなみに祖父の趣味は刃物集めだった。
「だからスキルのシロガネ流剣技はどういう効果かと思ったんだが、効果としてはアシストみたいだった。」
「アシストですか?まぁ、剣術とかのスキルは鍛えてもらったことにより習得できる証みたいなものですからね。剣技のサポートなら納得です。」
「いや、アシストとしては剣技の方じゃねぇんだよ。どっちかって言うと身体強化の方だな。本来の白銀流に準じたものみたいだ。あらゆる刃物を扱うには身体能力は高いほうがいいからな。」
本来の白銀流には型は存在しない。
それを14代目白銀当主が型を作り優越に浸ったのが原因で白銀流は型を得てしまった。
型を得たと言うことは扱える武器に限りが出るという事だ。ダガーと日本刀なら、当然扱い方は異なる。
そのため型はどちらかに適すればどちらかを使えない。
あらゆる刃物を扱えるが故に型をもなぬ無形の技は対処することを許さぬ臨機応変に変化出来る恐ろしき物だ。
「何があれって手刀すら扱える刃物にはいるからな。切れれば白銀流の対象になる。」
「剣技とは一体・・・。」
「基本刃物は、剣や刀が主流だからだよ。細かいことは気にするな。」
「転生する前からチートでしたか。そりゃ抜けますよね、イデア・ファートゥムを。あらゆる刃物を扱う才を持ってるなら魔剣も使えるはずです。何よりもご主人様は刃物に愛される体質でしょうし。」
エルビスは苦笑いをしながら
「にしても、ご主人様。結構ハードな人生を歩んでたんですね。これならこの先も余程のことが起きなければ大丈夫ですね。じゃあ、もう少しレベリングしましょう。今日中に何レベあげます?」
「10レベはあげたいよな、そう言えばスキルってどうやって新たに習得するんだ?」
「条件はその時々微妙に異なるらしいので不明ですが何かしら満たせばいいのは確かです。要は運ですね。」
まじか、ランダムなのか?
それとも、違いは理由があるのか?
これがわかるとわからないではスキル習得の傾向が大きく変わるだろうに。
まあ、こいつの知識封印される前の可能性高いけど。
迷宮でたら調べてみるとしよう。
こうして1日レベリングに励んでLv.19、迷宮全三十階層中最上階から下に向けて五階層目まで攻略した。
何でしたに行くにつれて魔物のレベル上がるのかは不思議。
シーラやエルビスに聞いても
「仕様です。」
とか
「魔剣で蹂躙するために決まってますよ!」
とか言われた。
どっちがどっちかは言うまでもない。
多分魔剣を手に入れた者の腕試しみたいなんだろうな。
一階層は何レベなんですかねぇ?
早く魔力使えるようになりたいものだ。
今回は戦闘?回でした。
全然進まんストーリー。
一章は色々進みが遅いかもしれませんが仕様だと思ってください。
主人公はチートじゃないかと思いきや転生前からチートでした。