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えすけいぷ

作者: 北の住人

私はとあるソフトウェア会社に勤めていた。

大手電気メーカーの下の下の下くらいではあるが、一応グループ企業に属している。

実は転職を繰り返していて、その会社で3社目である。

ソフトウェア一本でここまで来た。

しかし、もう嫌だ!!

こんな会社。

上司に恵まれないと、これまでやる気が無くなるものか!

絶対に辞めてやる!!



私はあるプロジェクトのリーダーをしている。

リーダーなので管理もしているが、結局、人がいないのでプログラム開発もやらなければならない。

管理だけでも大変なのに、滅茶苦茶忙しい!!

納期が近づいてきているので休みも無い。


住んでいる家が会社から離れていて通勤時間が1時間30分はかかる。

田舎なもので2つ手前の駅までは会社近くの駅を24時発の終電があるが、家の最寄駅まで行くには22時が最終だ。

しかし、その最寄駅の終電にも間に合わない日が続いている。

どうやって家に帰っているかというと、妻に2つ前の駅まで車で迎えに来てもらっている。

毎晩、毎晩25時くらいに迎えに来てもらっている。

よく妻も文句を言わないものだ。

私が逆の立場であったら、文句を言って迎えに行かないだろう・・・


そんな日が続いているので、私は家に帰らず会社に泊まった事がある。

つまり、通勤の時間が勿体ないのだ。

2日1度、家に帰ろうと決めて実行した。

すると、上司は

「会社に泊まるな!」

と、すごい勢いで怒ってきた。

その時、上司の机の前の椅子に座って怒られていたが、急に耳鳴りがしてきて、目の前が真っ暗になった。

「ひょっとして倒れるかも・・・」

と思ったが椅子に座っていたので何とかもちこたえた。

当然、その間も上司はひたすら怒っていた。


「もう、文句言うくらいなら、あんたが仕事を手伝えよ!」

「忙しいのはわかっているだろう」

「1人で早く帰りゃがって」

「どんなに忙しくても、絶対家に帰ってやる」

と心の中で叫んだ。


こんな事が続いていたので会社を辞める決心をした。

妻も了解済みだ。

毎晩遅いが寝る間を惜しんでインターネットで職探しを始めた。

もう、ソフトウェア開発の仕事はやらないつもりで探し始めたがいい職が無い!

歳をとっているので未経験者可というもの自体ないのだ。

あったとしても給料がとても安い。

それでも毎晩探していた。


もう、サラリーマンは嫌だ!!

勤め先が無いのであれば雇われないで出来る仕事はないかと考えた。

結局、フランチャイズ経営というものを探す事にした。

フランチャイズにもいろいろあり、

コンビニ、飲食関係、DPE、何でも屋、リサイクルショップ、ガラス工芸、etc

とりあえず、大きな資金が必要なものはダメだ。

また、妻の意見で飲食関係はダメとなった。

めぼしい所に資料請求をして資料が来るのを待った。



カメラが好きだった私はDPEショップを開きたいと思った。

開業資金も小さな店なら払えない額では無いと判断した。

そこでフランチャイズ店の担当営業と実際に会って話を聞いた。

「最近はデジカメが主流じゃないですか」

「フィルムカメラの時代じゃないでしょう?」

「フィルムカメラも無くならないんですよ」

「建築確認とかデジカメでは加工ができるので駄目なものもあります」

「大丈夫ですよ!」

うーん。無くならないかも知れないが量がしれている。

それでは続けられないだろう・・・

そこでDPEショップは辞退する事にした。



次に目をつけたのがガラス工芸でガラスにエッチング処理を施して売るというものである。

砂をガラスに吹きつけて傷をつけて模様をつけるというものであった。

大阪にフランチャイズの本部があり話を聞きに行った。

資料を元に説明を受けた。

さすがに初心者では難しいので何日か研修があるとの事で見学に行った。

簡単に言えばマスク(細かな穴があいている)というものに模様を書く。

それをガラスに貼り付けて砂を吹きつけるというものである。

サンドブラストマシーンは安いもので150万くらいでその他の物をいれると200万くらいの初期投資であった。

その場は見積り書をもらって帰った。

「サンドブラストマシーンはうるさかったね」

「家に置くとしたらどうしよう・・・」

「作ったものを売るためには、どうすればいいのだろう・・・」

等、悩みは尽きず結局、辞退した。



自営業を始めるにしても乗り越えなければいけない壁が別にあった。

夫婦間では納得していたが、お互いの親が猛反発した。

サラリーマンとは違って安定した収入がある訳ではないので、親としては当然のことであろう。


とはいえ、会社には

「自営業を始めるので辞めます」

と言っていた。

ただ漠然と辞めるというのでは辞めさせてもらえなかった。

次にやりたいことがあるという事で辞める事を納得してもらった。



そうして何も進展がない日が続き、いよいよ退職する日が近づいてきた頃に

「うちの会社に来てくれませんか?」

と話があった。


以前、システムを開発した時のお客さんからだった。

それでもどうするべきか悩んだ。

結局、その会社のお世話になる事にした。


そこで自営業は消えていった。

しかし、サラリーマンには定年がある。

安定した収入にも終わりがある。

年金もあてにできない。

「いつかは自営業」の夢をおいかけなければ・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] ごくごく近い将来の、生活に関わる決断についての思考が軽妙に書かれている文章は好きでした。 ガラス工芸については、この特殊な職業に転職するにはこんな事がネックになるのかと、よく調べられている感…
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