第18話 不敗の証明
「序列戦」が全て終了し、その結果によって「十三使徒」の序列が入れ替わっている。
セトが念願の第二席となり、リリスリアは第四席に。
その二人と入れ替わる形でシリスが第三席、ヴァサリスが第五席だ。
後の二組は上位者が勝利したので入れ替わりは無い。
序列が上がったセトやリリスリアが喜んでいるのは当然と言えるが、第三席に下がったシリスがどこか吹っ切れたような笑顔を浮かべ、第五席に下がったヴァサリスは未だ興奮状態というのは少し珍しいかもしれない。
教皇から直接掛けられた第二席を示すストラを、嬉しそうに師匠に見せているセト。
その顔には「序列戦」の最後にシリスに見せた妖艶さは微塵も浮かんで居らず、無邪気な一番弟子が敬愛する師匠にじゃれ付いているようにしか見えない。
ツカサの方は若干の動揺がみれらるが、シリスでなければ気付けまい。
いやクリスティナは、「夫がなぜか動揺している」事には気付いているかもしれないが。
流石にその理由まではわからないだろう。わからないはずだ。そうであって欲しい。
「十三使徒」はジアス教が世界に誇る最強魔法遣い集団である。
そこに入っているだけで充分名誉であり、元々ジアス教に所属する「魔法遣い」は、下手に冒険者などをすることなど思いもしないほどの高待遇を受けている。
故に「十三使徒」の序列は名誉職のようなものであって、待遇にそんな違いは無いだろうと思っていたツカサだったが、セトの話によるとそうでは無いらしい。
「第二席になったからね。かなり収入は増えるし、特権も拡大されるんだ。普通だったら僕の立場って物凄く魅力的なはずなんだけど、師匠には意味ないからなあ……」
「……へ、へえ。序列によってそんなに差があるのか」
上目遣いで呟くセトの台詞に、ツカサがたじろぐ。
セトが第二席となりティスが第一席とあれば、二人合わせての経済力や特権はヴェインのような大国の大貴族であっても、そうそう比肩しうるものではない。
愛する嫁と息子の恋路の為に、より上を目指したオーズ・オルレインの「第十三席」であっても大国の伯爵位くらいの力を持っているのだ。
だがセトの言うとおり、ツカサがその気になれば世俗の、いわゆる「金で買えるもの」で手に入らないものはすでに無いのが現状だ。
金ではどうにもならない「空中都市」をぽんと贈り物にしてしまえるツカサが「金で買えるもの」を求めたら、それを持つものが我先にと献上に馳せ参じるだろう。
――それが物であっても、人であっても。
出発前にセトが言っていた通り、金で買えないものほど、金を持つ者は欲するのだ。
ツカサの「アイテムボックス」には101回のやり直しで累積した金貨や魔物がまだ山ほど収納されているが、それを本来の価値として使う機会はもう無いのかもしれない。
「金」の価値を支えるのは国家や流通システムと言ったいわば世界そのものであり、それをひっくり返せる存在にとっては、あってもなくても同じものに過ぎなくなる。
あらゆる種類の「力」を、みんながわかりやすい形に兌換したものが「金」なのだ。
システムに組み込まれて生きるものには実感し辛いが、「金」自体が力を持っているわけではない。
どのような種類でも、世界を圧倒する力を持った者を金で縛ることは不可能なのだ。
「で、どうする? 本当に模擬戦やるのか? セト」
「観客にはまだ知らされて無いけど、お偉いさん方はかなり楽しみにしてるからね。止めても文句は言わないとは思うけれど、がっかりはすると思うよ?」
話を変えたかったのか、ツカサがふった話題にセトが答える。
「勇者」と認められたジャンと、実質「十三使徒」の筆頭となったセトという弟子コンビが師匠であるツカサに挑むと言うのは、確かに一番楽しみなカードではあろう。
先の「勇者認定戦」と「序列戦」を見たあとであれば尚更か。
「そうか……妹さんの件は後でいいのか? シリスさんに勝ったからにはすぐでもいいんだろ?」
「四年間が後半日くらい延びても変わらないよ」
それよりも今は全力でツカサに挑んでみたいのであろう、セトが笑う。
ツカサもずっと見ているだけだったので、やりたいと思っているのが正直なところだ。
「じゃあやるか。――黒竜!」
『――呼んだか我等が盟主殿』
大声で呼んだ訳も無いのにかかわらず、即座に黒竜の大音声が錬魔場に響く。
声に一拍遅れて、その城の如き巨躯が上空に現れた。
観客席からざわめきは起こるが、この数日で八大竜王達を人類の味方と認識できたジアス教徒たちはパニックに陥ったりはしない。
「お前の巣を借りていいか?」
『もとより盟主殿に用意してもらった浮遊島よ。すきにせよ。――そこの人間らを我が巣に運べばよいのか?』
「ああ、観客席の人たちを頼む。俺達は「空中都市」に自分で行く」
『承知した』
その声と同時に、観客数千人が一瞬で消える。
個体で「大規模転移」を使える竜王たちにとって、数千の人間を一斉に「転移」させることなど造作も無い。
「なんか師匠と話してるの聞いてたら忘れそうになるけれど、竜王たちってほんとにすごいんだね。師匠抜きで逢った時は、正直ちょっと怖かったよ」
「十三使徒」の中でも圧倒的な魔力量を誇るセトをもってしても、冗談としか思えないような目の前で起こった事実にため息をつく。
これからする「模擬戦」は、本当に勝負ではないなあと、改めて思うセトである。
「竜人化」が出来るようになるために、ツカサに言われてタマと共に黒竜の所に行っていた時のことを言っているのだろう。
確かに竜王たちはツカサが居る時と居ないときでの空気が違う。
別に態度を変えているわけではなく、いないとつまらなさそうなのだ。
それがセトほどの「魔法遣い」にとっても怖く感じられる。
「そうかあ? あの爺さん達結構気分屋だから、その辺かなあ?」
能天気なツカサである。
ツカサは八大竜王の数匹が、実は婆さんである事をまだ知らない。
そういう空気は、その原因である本人に判れと言うほうが無理なのかもしれないと、セトはため息を深くする。
己の師匠の規格外ぶりは、今に始まった事ではない。
一応「悲劇」のつもりであった僕と私の話ですら、勢いで解決してしまいそうな相手なのだ。
――師匠がこのタイミングで笑ってるってことは、師匠にとっては解決済みって事だものなあ。
強制的に異能を解除する以外の、どんな解決策をツカサが用意しているのか興味はある。
あるのだが、セトはもう考えるのを止めた。
こうなったら信じるしかない相手が師匠なのだ。
――僕が「悲劇」と思っていたことも、師匠にとっては何てこと無いことなのかもね。そりゃ師匠に取っちゃ当たり前の能力が暴走しているのを制御するくらい、クリスティナ様に勝つだけじゃなくて惚れさせる奇跡に比べればなあ。
「ツカサ殿。その「模擬戦」に我々「十三使徒」も参加させてもらってよろしいか? お弟子さんたちの前座でも構わぬ、御身と手合わせする機会を是非与えて欲しい」
突然、「十三使徒」第五席となったヴァサリスがツカサに願い出る。
その態度と言い、話し方といい、セトが思わずぽかんとするくらい最上級に丁寧なものだ。
ヴァサリスのそういう態度を、セトはほとんど見たことがなかった。
「俺はべ、えー、私は別に構いませんが、セトとジャンはどうだ?」
素で答えそうになり、相手の丁寧さに気圧されて言いなおすツカサ。
「僕は別にいいよ。万全の師匠に挑んで勝ちたいんだ! とか思い上がってるわけじゃないから」
「ツカサさんがいいのであれば、俺は何も」
それで「十三使徒」の参戦が決まった。
ヴァサリスが勝手に言い出したことではあったが、傑出した「魔法遣い」としては一度戦ってみたいという思いは共通だったのだろう。
誰も不参加を言い出すものはいなかった。
「いっそのこと「勇者と三聖女」プラス「十三使徒」にでもしますか? この世界の最大戦力と我が主のどちらが強いのか、はっきりさせておくのもこの際いいかもしれません」
「お、おお? それ俺死なないか? 大丈夫か?」
「ツカサさんなら平気っスよ」
タマの大胆な提案に、流石にたじろぐツカサと、なぜか自慢げなジャンである。
「大いなる災厄」に対峙する本来の力と、その際には間違いなく補佐に動く「十三使徒」
それとツカサがぶつかるとなれば、確かに盛り上がりはするだろう。
「そういうことじゃなくてね、師匠、ジャン兄……」
「ジャン君、それは……」
何かを察知したのか、セトとネイが慌てる。
――どうして男の人って、そういうところが鈍感なんだろう。
――クリスティナ様が、お遊びとはいえ師匠の敵に回るなんてするわけ無いじゃないか。
「私は二度と旦那様に向かって、「姫巫女」の力は振るいません」
「「「はい」」」
冷やかな空気でばっさりと切り捨てられた提案に、ツカサとタマとジャンが声を揃えて即答した。
タマは恐怖のせいか、すこし毛が逆立っている。
ジャンはネイのフォローが必要なほどに萎れる。
「あ、アリアさんはいけるよね?」
話題をさっさとかえたいセトが、「盾の聖女」に突然話を振る。
「ええ?! 私ですの?」
「ほら聖女としては一度手合わせしておくべきだと思うし。基本的に師匠は受けだから、突然薙ぎ払われたりはしないよ。ガンガン攻めちゃって平気だから、大丈夫。アリアさんの絶対防御結界で全周覆ってぷちっと潰すあのえげつないやつ、師匠がどうやって躱すのか見たい!」
「何か酷いこといわれていませんの?! 私」
勢いに巻き込まれて「盾の聖女」の参加も決まった。
それならば旦那様の補佐を、と言い出したクリスティナをセト、ジャン、ネイ、タマが全力で止めることに苦労する事になったのは想定外だったが。
参加して欲しそうだったツカサには悪いが、冗談では無いと思う三人と一匹である。
クリスティナに攻撃をしかけた人間の安全は、誰が保障してくれると言うのか。
ツカサはもうちょっと、自分がいかにクリスティナに対して盲目的かを自覚するべきだと思う三人と一匹であった。
結局、ツカサ vs 「勇者と二聖女」プラス「十三使徒」で行われた「模擬戦」はツカサの「絶対不敗」の「通名」を決定的なものにした。
「空中都市」の周りを囲むように浮かぶ竜王たちから力を受け、竜化したツカサが「十三使徒」が放つあらゆる「魔法」を消し飛ばし、同じ魔法でそれぞれを無力化する様子は、浮遊島の観客達が歓声をあげることも忘れるくらい圧倒的なものだった。
密かに己の「魔眼」と「魔法崩し」であればツカサの通常魔法には対抗できるかと思っていたシリスであったが、ツカサが自身の周りに常に高密度な魔力領域を展開し、全ての「魔法」をその範囲で起動させられてはどうしようもなかった。
セトとの一瞬と言っていい短い戦闘を見ただけでシリスの異能を完全に掌握し、直後の戦いで既に対策をしていたツカサに、心の底からシリスは感服した。
一度見せた技は、「絶対不敗」には二度と通用しないのだと。
当然分析、対策を行ったのは能力管制担当であるのだが、シリスにはそんなことを知る術は無い。
ツカサはノリノリで「十三使徒」の放つ多彩な魔法を弾き、躱していただけだ。
「序列戦」から「模擬戦」を経て、この時からツカサは強化・弱体系の魔法に強い興味を持つようになる。
もともと「魔法近接戦闘」の基礎となった各種ブースト魔法に着眼していたツカサは、これより一層その完成度を高めていく事に夢中になった。
特に第十二席「人形遣い」ニコラス・レンフィールドには後に教えを請い、世界を驚かせるカラクリをつくる事になる。
十一人の「十三使徒」が蹴散らされた後、「魔女」と「盾の聖女」という二人の「聖女」の力を受けた「勇者」と、「十三使徒筆頭」となったセト、師匠vs弟子二人という、本来この模擬戦の目的であった戦闘が開始された。
一対二での「魔法近接戦闘」、それも「聖女」二人による圧倒的とも言える援護を加えたものであったにも関わらず、ツカサは二人を圧倒する。
離れた浮遊島からの観戦であったからこそ、その神速の戦闘を観衆は捉える事ができた。
それでよく理解した。
「勇者」と「十三使徒筆頭」が師匠として仕える理由を。
何がどうなって決着がついたのか観客達にはわからなかったが、結局「絶対不敗」は最後まで楽しそうに三人の弟子と「盾の聖女」を翻弄して見せた。
かなりの距離を置いてでも捉えきれないような神速の「勇者」と「十三使徒筆頭」を手玉にとり、当たれば山脈でも消し飛ばしそうなネイの第五階梯魔法を消し飛ばし、「空中都市」ごと潰しそうなアリアの結界圧縮陣を割り砕く。
浮遊島からでも確認できる純白の光がツカサから生まれるたび、決定的だと思われた「魔法」や「攻撃」が全て無効化される。
あれはこの世界の理を超えた力だ。
見たものすべてがそう思うにたる「模擬戦」であったのだ。
「――あるいは、ツカサ殿こそが「大いなる災厄」なのかもしれませんな」
浮遊島で「模擬戦」を観戦していた教皇がポツリと呟く。
その言葉に周りの枢機卿らがぎょっとする。
「教皇猊下、滅多な事は……」
今や教皇側近となっているクルト・コッホ枢機卿が慌てふためく。
この場には共に観戦しているヴェイン王国の第二王女であり、来年にはツカサの第二夫人になると言われているサラと、既にツカサの側室であると目されているセシルがいるのだ。
教皇は何を言い出すのかと、クルト・コッホは要らぬ汗を噴き出させるハメになった。
「おや、そうは思いませんか? 今見たとおり、ツカサ殿にはこの世界最強の力をもってしてもまるで相手にならない。ツカサ殿がその気になったら、世界は終わりです」
教皇が何をいわんとしているのかを見極めるまでは、不用意な事を言う訳には行かない。
サラもセシルも、ツカサの仲間であると同時にヴェイン王国の正式な使節団代表とその側近なのだ。
だが我知らず、視線が強くなることは抑えられない。
「おや、これは言葉足らずでしたな。――女性のそういう視線はやはり怖いものですね」
そういって朗らかに笑う教皇に、サラとセシルは赤面することになった。
反射的に敵意を向けてしまったが、教皇がこの状況で敵対的なことを言う訳が無いのだ。
サラもセシルも、常であればすぐにわかることに思い至らずカッとしたのは、それがツカサに纏わる話であったからに他ならない。
教皇はサラとセシルの視線を、ヴェインの使節団代表としてではなく女性のそういう視線――好きな男を悪く言われた時のものだといったのだ。
それを言い当てられては、二人は赤面するしかない。
「伝承に曰く、「勇者と三聖女」でなければ如何ともし難い「大いなる災厄」――「世界の終わり。ツカサ殿はそうするだけの「力」をお持ちだ。だが世界は終わらず、それどころかツカサ殿の力で発展しようとしている」
悪戯っぽい表情を消し、真面目な顔で教皇が語る。
枢機卿達も、教皇が何を言わんとしているかを理解したようだ。
「神の力に正邪なく、それを受ける人にこそある――「旧神書」の一節ですか」
最近では教徒でも知らぬ者が多い「旧神書」の一節を、教皇が語っている事をサラは理解した。
力を是とするからこそ、力に纏わる考察はそれこそ星の数ほど存在するジアス教である。
「その通り。サラ王女殿下はよく勉強しておられる。おっとこれは失礼を」
知らなければ熱心な先生としか思えない笑顔を思わず浮かべ、己と大国の第二王女という相手の立場を思い出して、咳払いをする教皇である。
「そう、ツカサ殿の力はまさに神の力といってよい。それを世界の為に使ってくれているのはサラ王女殿下と出逢いクリスティナ王女殿下に恋をし、勇者殿や他の聖女達との出逢いを経てこの世界を好きになってくださったからでしょう。その意味では「勇者と三聖女」は正しく「大いなる災厄」を防いでいると言える。――その場合、サラ王女殿下の姉上が一番の貢献者ですな」
「力」はどんな形をしていても「力」。
物理的な攻撃力や「魔法」といった形では手も足も出なくても、魅力という形でその力を振るうもの凌駕することは可能。
「勇者と三聖女」をはじめとした、ツカサと関わる者達の在り方がそれに近いと、教皇は言っているのだ。
そういう意味ではツカサの心を奪ったクリスティナ――「姫巫女」が一番手柄だと、冗談めかして言う。
「最初に出逢う機会を得ていながら不甲斐ない事ですわ、私もセシルも。ね?」
それを理解したサラが、冗談として言葉を返す。
巻き込まれたセシルとしては赤面を強くするしかない。
「いやいや。サラ王女とセシルさんのおかげで、ツカサ殿がヴェイン王国に訪れたと言うのは聞いておりますよ。まあ女性としては、忸怩たるものがおありなのかな?」
「正直に申し上げれば、無いとは申せませんね」
「これはツカサ殿が羨ましい。だが……」
澄ました顔で応えるサラに、教皇は笑い――
「覆る可能性はまだある」
厳しい表情で言う教皇の言葉をサラとセシルだけではなく、周りの枢機卿達も首肯する。
今はいい。
だがこれからもそうだとは限らない。
ツカサ自身を害することは、今の「模擬戦」を見れば不可能であることは一目瞭然である。
今ツカサの仲間と看做されている面々も、そう簡単に手を出せる相手ではないのもまた事実だろう。
だがこれから時間が経過し、ツカサと関わるものが増え、ツカサが仲良くなる者が増えていけばその限りではない。
ツカサは自分の仲間を傷つけた相手を、決して許さないだろう。
そしてその力は、絶対に相手を殲滅する事を可能なさしめる。
世界は、ツカサに向けた己の悪意で滅ぶ可能性を孕んでいるのだ。
「我らジアス教の全力を挙げて、ツカサ殿が仲間と看做す者達を守護せよ。そして我欲を捨ててこの世界がより良い、ツカサ殿に愛想を付かされぬものになるよう尽力する事を誓います、サラ使節団代表殿」
「我々も同じ思いですわ、教皇猊下」
少々大袈裟ね、と思わなくも無いサラである。
だが確かにツカサがこの世界に絶望すれば、滅ぼすことは可能なのだ。
一緒に見た「世界の終わり」を、サラは覚えている。
ツカサができることを知っている。
いやある意味、101回もの数を滅ぼされているとも言えるのだ。
――たった一人の女性……クリスティナ姉さまのためだけに。
そういう意味では、クリスティナさえ幸せそうにツカサと共に在れば大丈夫なんじゃないのかと思ってしまうサラである。
――いえ、ツカサ様は侮れない。
自分の頭を一度はすっ飛ばしたジャンとネイのために、やり直しをしているのだ。
――まあクリスティナ姉さまは一度どころではありませんけれど。
もしもツカサがこの世界を「やり直す価値も無い」と思ってしまった時は、本当に「大いなる災厄」になり得るのだという事は忘れないほうがいいだろう、とサラは思う。
そんなことは無いだろうけど、と。
とにかく一連の「やるべき事」は完了したのだ。
――自分に出来る事はなにも無いけれど、後はセト君の妹さんを何とかするだけね。
――ところでこの浮遊島からどうやって帰ればいいのかしら? 「白の獣」と「黒の獣」呼んでいいのかしら?
はやくツカサ達と合流したいと思うサラとセシルであった。
次話 眠れる美女の起こし方
1/24投稿予定です。
可能であれば最終話も同日もしくは日付変更後すぐ投稿予定です。
もう少しお付き合いくだされば嬉しいです。




