第41話 1周目-50周目 【タマの記録―変化】
――First day
「滅日」および「創世」の行使確認。
対象Sumeruとbuddhakṣetraとの乖離強制解消。
対象Sumeruが「滅日」から「創世」される間、該当buddhakṣetra「sahā」における他のSumeruは時間停止処置。
座標「sahā・銀河系宇宙太陽系・第三惑星・地球・日本」
――間違いない。
――やっと見つけた。
行使個体名「八神 司」「男性」
「日本人・十六歳・高校一年生・彼女なし・童貞・オタク気質・――お人好し」
――相も変わらず……
「滅日」および「創世」の行使理由。
同級生の死の回避と推測。
同級生個体名「祝 凜」「女性」
異性としての認識は「綺麗な娘」 恋愛感情認められず。
因果律への干渉認められず。「滅日」および「創世」の行使は無意識によるものと推測。
二回目行使。
因果律への干渉認められず。
結果収束。
三回目行使。
因果律への干渉認められず。
結果収束。
四回目行使。
因果律への干渉認められず。
結果収束。
――やはり死によって自動的に「滅日」と「創世」を行使しているだけか。
――これは介入しなければ永遠に繰り返しかねませんね。
三十八回目行使。
因果律への干渉認められず。
行使原因に変化あり。
個体名「祝 凜」
「魂」に「八神 司」の存在が干渉。亜神化の可能性0.00000879%。
――しょうがありませんね、介入します。
1st round
権能起動成功数5。
原因:素体レベル不足。
全権能起動には素体のレベルを大幅に引き上げる必要有と認ム。
確定。
転移対象Sumeru 「ラ・ヴァルカナン」
「ツクヨミ」を素体の左目及び左手用手袋として付与。
「第一使徒:thanatos materia」陪従。
早期段階で「姫巫女」による「滅日」および「創世」発動。
決まり手「首チョンパ」
――一撃とは驚いた。痛みはほとんどなかった模様。
2nd round
「姫巫女」の撃破及び問題解決の意志確定。
「第一使徒:thanatos materia」発言許可。
新たな名は「タマ」らしい。
不本意だがやむなし。
限定した相手に「死に戻り」の情報開示。
効果的な素体強化の情報確保成功(セト少年より)。「ケトル峡谷」攻略完了。
レベルアップにより「思考加速」はじめ各種ブースト系魔法を獲得。
「思考加速」及び各種ブースト系魔法を多重展開することによる「魔法近接戦闘」を提唱、承認。
「魔法近接戦闘」構築開始。
「姫巫女」との再戦敗北による「滅日」および「創世」発動。
決まり手「四肢切断の後、頭割られる」
――この上なく痛そうだった。ちょっと泣いていた。
3rd round
周回に多少慣れた様子なれども、前回の負け方が軽くトラウマになっている模様。
とはいえ何とかしようという意志は折れてはいない。相変わらずそういうところは強い。
癒しを求めてなのか、現実逃避なのかサラ王女殿下とセシル女史への甘える時間増加。
セシル女史の弱点はほぼ完全に把握した模様。ズルだあれは。楽しそうだが。
「ツクヨミ」がいらついていたが無視する。
セト少年との打ち合わせは真剣味を増している。セト少年の発想は得難いものだと改めて認識。
「アヴァルティア平原」攻略完了。
第三段階の「魔法」習得。
「魔法近接戦闘」の完成度上昇、かなりの自信を見せる。
「姫巫女」との再戦敗北による「滅日」および「創世」発動。
決まり手「自動展開する防御系炎術で燃される」
――あれ最後まで意識あったら、心が折れるんじゃないだろうか。
4th round
ものすごく熱かったらしい。それはそうだろう。
立ち直るのに結構かかり、序盤の展開が多少変わったが大きな影響はなし。
それでも折れないのは立派だ。
このままだとサラ王女殿下とセシル女史に溺れかねない。
勝てないまでもある程度戦いになる力を付ける必要を認ム。
このまま続けてもいずれはたどり着けるだろうが、心が折れかねない。
あとセシル女史がもはやツカサなしでは生きていけないんじゃないかレベル。
危険。
セト少年の助言に従い、「獣人化」の力を得る方向へ。
攻撃力よりも防御力が必要だとの判断らしい。正しいと思われる。
「サルタバラ湿地」攻略完了。
「獣化」の可能性がある魔物の肉を摂取するも兆候なし。
要経過観察。
素手で大型魔物を殴り殺せるほどに基礎ステータス上昇。
それでも自信は持てない模様。宜なるかな。
「姫巫女」との再戦敗北による「滅日」および「創世」発動。
決まり手「自動展開する防御系炎術で燃される」
――今のままだとどれだけ速く動いてもあれを突破できそうにない。
5th round
開き直った模様。
炎には氷だとの理屈から、氷系魔法を極めることを決意。
周回に関わる人間との会話に厭いた様子は見受けられない。
心も折れてはいない。
何故そうまで前向きなのか理解しかねるが、変わらないともいえる。
セト少年によれば「ナザレ浮遊峡谷の黒竜」に勝てるのではないかとの意見。
双方ともに攻撃が通らない結果に。
「人語を解する魔獣」でもある「黒竜」と取引、「獣人化」は無理だったが、黒竜の血による「竜人化」に成功。
戦闘時に「竜人化」することによって、圧倒的な防御力、特に火炎耐性と痛覚鈍化が可能に。
セト少年が大興奮、ツカサも大興奮。
どうやら痛みを消せることが嬉しいらしい。
「これであと何回でも戦える」との談。
よほど痛かったのだろう。それはそうだ、見ているだけでも痛かった。
「姫巫女」との再戦敗北による「滅日」および「創世」発動。
「竜人化」と第五段階氷魔法で善戦するも、召喚された大太刀の一閃で躰縦割りで敗北。
決まり手「一刀両断による開き」
――正直ちょっと笑ってしまった。えぐい。
6th round~49th round
ひたすら強化と、試行錯誤。
「姫巫女」の目を切る、視界から消えることを最優先として強化を重ねる。
「ツカサの死にかた大百科」を作れそうなほどいろいろな負け方を重ねる。
もはやツカサ自身が次の自分の死に方を楽しみにしている域になっている。
この状況下で遊び心を持てるのはやはり強い。
でも真剣だ。
「竜人化」で痛みをほぼなくせたことが大きいのだろう。
世界中の魔物領域はすでに一度解放完了している。
今は最強の魔物が巣食う「サイハテ」の一掃を繰り返している状況。
「聖女」――「姫巫女」を除いてツカサに勝てる存在は無いと思われる。
「勇者」でさえも「聖女」抜きなら一撃だろう。
それとツカサとの繰り返しの接触を重ねる事によって、サラ王女殿下をはじめ「仲間」のみなに影響が出始めている。
亜神化はほぼ無視していいレベルとはいえ、ツカサに対する好感度が最初から振り切れてきている。
客観的に見て、同じ短い時間でもより深い信頼を築けるようになっている感じだ。
ツカサはどこか嬉しそう。
記憶の継続は認められないが、繰り返す中で魂に想いは積みあがっていくのだろうか。
それは逆方向でも同じなのだろうか。
50th round
驚いたことに、「姫巫女」に今までない変化が現れた。
「恥じらい」と「混乱」だ。
ここまで毎回敵対しておきながら、どういう思考回路を経てそうなるのかは理解に苦しむ。
あれはサラ王女殿下はじめ、「仲間」の反応と根を同じにしているとしか思えない。
クリスティナ・アーヴ・ヴェインはマゾなのだろうか。
それも生粋の。
いやあれだけ多種多様な決まり手を放っておいてこうなるという事はサドか。
それも生粋の。
どちらにしてもやはり女性というのは恐ろしい。
正直理解の埒外に存在する。
ツカサも慌てたのだろう、久しぶりに「竜人化」せずに燃されて敗北した。
ただ「姫巫女」も混乱していたのか、今までで最大の「技」を出してきた。
決まり手「無数の刀に切り刻まれたうえで灰にされる」
――よくも捨て台詞が言えたものだと感心する。ツカサも変化が嬉しかったのか。
「滅日」が完了するまで、「姫巫女」を観察してみる。
おぼろげながら記憶すら継続しているような様子を見せる。
面白い。
どういう思考回路でそこまでツカサに執着するようになったのかは不明だが、いかな「姫巫女」とはいえ、ツカサの「滅日」と「創世」を越えて記憶を繋ぐというのは面白い。
悠久の中、終ぞ現れなかった「伴侶」たり得る存在かもしれない。
いかん、思わず口に出ていた。
「姫巫女」ではなく、クリスティナ・アーヴ・ヴェインが私を恐怖の表情で見つめている。
しまった怖がらせたか。
しかしこれは本当に面白い。
今の所、完全に思惑通り事が進んでいるが、やはりここは積極的に介入するべきだ。
「復活」だけでなく、「伴侶」も得られるとなれば望外の展開だ。
次周のツカサはなんというだろうか。
なんとなく想像はつくが、それを見るのがちょっと楽しみだ。
ツカサがどう言おうが、クリスティナ・アーヴ・ヴェインへの干渉は行うつもりだが。
次話 51周目【執着】
11/17 23:00頃投稿予定です。
この章が終わればプロローグへ繋がります。
次話からはまたツカサ視点となります。
完結済短編「異世界娼館の支配人」も出来ましたらよろしくお願いします。
http://ncode.syosetu.com/n4448cy/
同じく完結済中篇「三位一体!?」も出来ましたらよろしくお願いします。
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