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悪党アクト   作者: 和銅修一
8/9

ルール

「ではまず委員長と副委員長を決めたいと思います。やりたい人は挙手してください」

 そんな人いねーよと思いながら外を眺めていると後ろからざわつき始めた。

「平山 早苗(さなえ)です。どうぞよろしくお願いします」

 面倒な仕事を率先して引き受けるなんてどんな変わり者だと視線をその声がする方を向くと眼鏡をかけた女子が立っていた。

 しかも眼鏡だけではない。白色のカチューシャがあり、ツインテールと特徴だらけの彼女は眼鏡のお陰で清楚真面目な雰囲気がするが慎太的には積極性のある女子に見えたが特に興味はない。

 それよりも昨日のことについてだ。あれから零夏さんに何か知らないかと尋ねてみたが収穫はなかった。

 残るは美未だけだが朝は先に学校に行ってしまっていたので帰ったら聞くしかない。

 幸い今日も大したことはしない。委員長なんかを決めているのがいい証拠だ。これらが決まった後は多分席替えだろう。

 ここは眺めがいいのでお気に入りだっので少し残念だ。今の内に目に焼き付けておこう。

「では次は副委員長を決めましょうか。やりたい人がいないなら委員長になった平山さんが指名してもいいですよ」

 良くあるパターンだ。こういう時は大抵仲のいい友達を選んだりする。なら、俺は関係ないな。

「斑鳩 慎太くんで」

「は?」

「はい。じゃあ、副委員長は斑鳩くんに決定ね」

 いや、何で俺なんだ!

 そう叫びたいのを押し殺して指名してきた眼鏡っ娘に目をやるとこちらを見つめて…というより睨んできている。

「一体俺は何をしたんだよ」

 風紀委員とか色んなものが決まっていき、その全てが決定する時まではとりあえず外を眺めて心を落ち着かせた。




 さて席替えだ。

 気に入った席からのこれは萎える。できれば同じようなところにと願いながらくじを引くと黒板に書かれた番号の中で最後のものを引いた。

 クラス全員が引き終わるとくじの番号と黒板に書かれた図に従って移動する。

 机は動かさずにカバンを持ってだ。

「あ!」

 座って間も無くそんな情けない声を出してしまったのは委員長になり、俺を副委員長に指名してきた眼鏡女子が目の前に座ったからで廊下側の一番後ろが嫌だったということではない。

「よろしくお願いしますね。斑鳩くん」

「お、おお…」

 なんかこういうタイプは嫌いだ。何をしてくるか分かったもんじゃない。

 今の慎太とってはもっとも関わりたくない相手だ。

 しかし、副委員長に指定され目の前にその指定してきた女子になった後は何事もなく進み、やっと帰る時間となった。

「斑鳩くん。先輩が呼んでるよ」

 俺のいる扉ではなく黒板側の方に座っていた女子がこちらを向いて手を振ってきた。

 斑鳩なんていう名前だからすぐ覚えてくれたらしい。中学の時もそうだった。

 それにしても知り合いに先輩なんていたっけか?まさかあれか?怖い先輩からの呼び出しとかか?

 恐る恐るその扉の前に立っている人を確認するとそこには白髪の少女がこちらを睨んでいた。

「遅い…。慎太、帰るぞ」

「み、美未さん。先輩だったんだ」

「二年B組。十五番」

 どうやら俺はとんでもない勘違いをしていたようだ。

 彼女は背が小さいだけで一歳年上の先輩だったらしい。何も言ってくれなかったし、先輩面とかしなかっので同い年と思っていた。

「美未先輩と呼ばなくちゃいけませんね」

「いい…。美未で。仲間なんだから」

「分かりました。でもどうしたんですか?」

「私も終わったから一緒に帰ろうかと…」

 お! ということは?

「またヒーローに会ったら危険だし…」

 ですよねー! 別に期待なんてしてませんよ。つい最近会ったばっかだし、あの時はいいカッコ見せられず助けられただけに終わったんだから。

「そ、そうなんですか。でもまだ早いですしどうします?」

「私について来て…聞きたいことある」

「はあ、まあ美未さんの質問なら何でも答えますから行きましょうか」

「慎太、焦ってる?」

「べ、別にそんなことないですよ。美未さんの質問を早く聞きたいだけですから」

 後ろから感じられる視線が痛いからだとら言えない。

 しかしそんな中でそれらとは全く違う雰囲気で委員長になった早苗がこちらを睨んできている。

「やっぱ何処かで聞いたことあるんだよな」

 平山 早苗。

 気になるがいつか思い出すだろ。

 俺は美未さんの背中を押してそそくさと教室を出て視線の雨から逃げた。




「ここですか」

 連れて来られたのは零夏さんと会った喫茶店。前は争也さんと来た時は無理やりだったので店の名前は見られなかった今度はちゃんと見ることができた。

 NEUTRAL(ニュートラル)

 なんとも俺好みの店だ。内装は綺麗だし雰囲気もいい。それにメニューも豊富でとても喫茶店とは思えない。

「それで何から聞きたいですか?」

 二人の前にコーヒーが置かれたと同時に話は始まった。

「慎太、ヤンキーだったって本当?」

「っ! げほっげほっ!」

 不意をついた質問に慎太は口にしたコーヒーでむせた。

「な、なんでそれを?」

「団長から聞いた…。昔やんちゃしてたって」

 やっぱりそうか。親父と長い付き合いだっというのだからそれぐらいは知ってて当然か。

「まあ、昔はね。でもやめたよ。今後こととかの事を考えると喧嘩なんてしてても意味ないし」

「リーゼントも?」

「いや、最初からリーゼントじゃないから。染めてたけど普通の髪型でしから」

 これは争也の入れ知恵ではなく美未の天然だろう。顔がそんな顔をしている。

「え? そうなの…」

「そう。だからこの話はやめにしない?あんま昔のことは思い出したくないからさ〜」

 実験で死にかけた体験の数々は忘れられないが、こういった恥ずかしい過去は抹消できるのでここで潰しておきたい。

「ダメなの?」

「ダメというかあんまり昔の俺は好きじゃないんだよ。何の意味もない喧嘩して無駄に傷ついてほんと馬鹿だったから」

「でもその時の慎太も慎太。それは変わらない……よね?」

 確かにそうだ。やんちゃをしていた俺もアクト団に入った俺も変わりはない。

 美未なりの励まし方なのだろうか?お陰て少しだけ気が軽くなった。

「そうだな。ありがとう美未さん」

「美未…でいい。仲間なんだから」

「分かった。美未、ありがとな」

「別に感謝されるほどのこと…してない」

「美未にとってはそうかもだけど俺には大事はことなんだ。本当にありがとな」

 これで昔のことは気にせずに毎日が過ごせる。こうもあっさり解決してしまう問題だとは思っていなかったから嬉しさがありまり、美未に出来るだけ感謝する。

「う、うん……」

 感謝されるのに慣れていないのか美未はさらに声を小さくしてうつむいてしまった。

「それじゃあ質問は終わり?」

「いや…まだある。その…力について」

「と言われてもな〜、俺も良く分かんないんだよ。使ったっていう感じもなかったし争也さんも知らないみたいだから教えたくても教えられないんだ。ごめん美未」

 これからハッキリさせていきたいところだが、それも上手く行くかどうか?

 まあ最終的には時間が解決してくれるはずだ。

 そう信じるしかない。

「ううん、慎太…は悪くない。質問はこれで終わり…。慎太…何か聞きたいこと…とかある?」

「ん〜、そうだな。やっぱりヒーローのことかな。ガーディアンなんたらの他にもああいうのいたりするの?」

 慎太が会ったヒーローはガーディアングリーンとレッドだけ。それ以外のヒーローは全く知らないのだがそれでは警戒しようにもできない。

 情報が欲しい。顔写真があればそれを頼りに逃げれることができる。

「沢山…いる。悪党も同じくらいいる…けどそんなに心配しなくてもいい…と思うよ」

「でも俺は顔がバレてるかもしれかいし……」

 勝手にネットにあげられていた写真はすぐに削除させたがネットだ。

 その写真がまだ存在してヒーローの誰か、特にガーディアンなんたら達に見られたら標的にされるのは目に見えている。

「大丈夫…。ヒーローにも暗黙のルール…ある」

「暗黙のルール?」

 コクリと頷いて続きを話してくれる。

「一般市民を巻き込まない。これ…絶対。だから人が多いところ行けば安全」

「へぇー、そんなのあるんだ。なら大丈夫そうだな。でもそれなら悪党にも暗黙のルールとかあるのか?」

 ないと不平等に思えてしまうからあるのだろう。

「人は殺さない…」

「なるほど、俺にとってはありがたいな。人が死ぬなんてのはゴメンだし、それが俺たち側の人間がやったとなると気分悪いし」

「……慎太、ルール絶対…だからね」

「大丈夫。そんなこと頼まれてもしませんから。それじゃあ聞きたいことは聞けたしアパートに帰りますか。争也さんうるさそーだし」

「そう……だね。それと敬語も禁止…だから」

「わ、分かった」

 お代はもちろん俺が全部払って喫茶店を出た。

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