はじめてのキス
はじめてのキスは、涙の味がした。
ほのかにしょっぱくて、少しだけ、甘い味。
唇に触れると、直に熱が伝わってくる。やけどしてしまう、思わず、そう思ってしまうほどに。
つややかに輝く白い身と、そこからたちのぼる湯気を眺めながら、もう少し、もう少しと欲してしまう。一度味わえば最後、止まらない唇。
しかし、触れればやけどしそうな熱も、徐々に冷めていく。だが、それでもまだ必死にむさぼってしまう。この欲求は、もう少し収まりそうに無い。
一瞬、舌の裏あたりに刺激が走る。だが、そんなものはお構いなし。その刺激の元を取り除き、再びその味を確かめる。鉄の味が少ししたが、どうだっていい。
まるで何かに身を焦がしたキスの味。それは、少し切ない大人の味だった。
そのような妄想をしていると、玄関のドアを開ける音がした。恐らく、彼女が買い物から帰ってきたのだろう。
彼女とは付き合ってまだ三ヶ月。今日は手料理を作ってくれるそうだ。
「お帰り。どうだった?」
「まったく、急に魚が食べたいとか言うもんだから、スーパー三件も回ったわよ!」
はじめてのキスが楽しみだ。
まあ、誰でも思いつきそうなネタですが……。すみません、にやにやしながら書いてしまいました。
もう少し長くなるかなぁ、と思ったらあっけないほどに短くなってしまいました。うーん、もう少しボキャブラリーがあれば……。
意味が分かって読み直すと、なんだか主人公が間抜けに見えてくるのです。
まあしかし、これだけ魚好きの彼であれば、きっと魚も喜んでいることでしょう。
お目汚し、失礼しました。