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Romancier votre monde~異世界の作家~  作者: 狂里 李鈴
第1章 元作家と元魔法使い
7/7

第七話 帝国の問題

第7話 冒険者ギルドと傭兵ギルド






知らない天井だ。



「ふっ、私としたことが初日にこれを忘れていたとは」


「おう、起きたか、茉莉。

腕が痺れて動かないんだが」


うわっ

クリス君近いよ!

あー、腕枕で寝てたのね。うん最高に幸せな朝。


「にやにやしてないで起きるんだ」


「うーん、あと500年…」


「単位がおかしよな、それ」


「うへへ、いーじゃん、いーじゃん。

どうせのんびりしてたら100万年は生きれるんだし。

500年くらいあっと言う間さー」


「その前に俺の腕が死ねるわ。


よっこらせっと。

うおー、朝日が眩しいぜ」


あー、腕枕がー。

ちぇ、でも昨夜侵入できたって事はこれから毎日同じベッドで寝れるかも!

うへへ、そうなればいくら鈍感なクリス君でも私の気持ちに気付いてくれる筈…!

再びニヤニヤしてると、クリス君がなにかイヤなものを見たような目でこちらを見ていた。


「今日の予定はなんだっけ?」


「昼に騎士団と合流して、モロク候にゴメンナサイ草原燃やしちゃったテヘ…だな。」


「えぇー、めんどくさー。

今日はここで一日中ごろごろいちゃいちゃしようよー」


あぁ哀しいかな、長年の引きこもり生活の性か。


「ばっきゃろ、亜人王国アムルタートの観光に行くんだろ」


そうなのだ。

わたしの妄想通りならアムルタートは亜人が最も多い国。

エルフやドワーフはもちろんの事、狼男や猫娘まで…まさにファンタジー!な国アムルタート。


次に亜人が多いのは我らが魔法帝国マギ=エンシアだったりする。

とは言っても生まれつき魔力が高い種族、魔人が多いだけであって見た目は人間と変わらないので見てて面白い訳ではないのだ。


「分かってる、分かってるって。

じゃー昼までごろごろしよ?あ、朝ご飯は部屋に持ってきてくださいなって言いに行かなきゃね」


「おう。じゃあ俺が行ってくるから待ってろ」


「ううん、一緒に行くさー」


こういう小さなアピールの積み重ねが大事だと友人に聞いた事がある。

まあ好きって言っちゃえば楽なんだけど、やっぱ向こうから言わせたいっしょ!




昼ご飯も宿で食べ、騎士団との約束の時間になってから宿を出る。

出た瞬間、騎士10名が屯所の前でズラーッと整列していたので若干引いた。


「やあ、アレッシオさん、こんにちは。


昨夜はよく眠れたかな?

私は今日は朝から腰が痛くて…クリス君ったら激しいんだもの」


そう言って私のブラックリストに入った女騎士を見るとションボリした顔になっていたので、ざまあみろっと思った。


「おいこら、出鱈目言うな」


ざわざわ


あの子がほんとに内親王殿下なのか?

なんて愛らしいんだ。

いやそれより団長閣下とそういう関係なのか?

団長閣下はロリコンだったのか。



あぁ、そっか。昨日は六人しかいなかったから、初めて見る人もいるんだ。


クリス君をチラッと見ると、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「あー、オホン!

初めに言っておくが、俺はロリコンではない!


内親王殿下とは古い友人ではあるが、そういう関係では断じてない」


「なによー、あんなに愛してくれたのに…


まあ、とりあえずモロクさん家にお邪魔しようか。案内よろしく」


「えぇ、本来ならライエリクソン卿から殿下の元へ出向くべきなのですが…

殿下と団長閣下がこの町に来ていると聞いくと、是非ウチに招待したい!と大はしゃぎで館の飾り付けを始めてしまいまして…」


モロク=ライエリクソン

アムルタート王国に、最も近い島を領土に持つ侯爵。軍階級は中将で帝国十二神将の一角。

そして彼の息子の一人は傭兵ギルド《黒威の翼》の一員だったかな。

もうアレを使うべきか。ううん、まだダメよ。


「まー草原燃やしちゃったのは私達だし、仕方ないよ。じゃあ案内よろしくね。


その前に…《召喚-伝書鳩》」


あらかじめ用意しておいた手紙を召喚獣に送らせる。


「茉莉、今のは?」


「まだ、内緒」


きっと三日くらいで冒険者ギルド《白亜の翼》へと届く筈だ。



黒威の翼とは

かつてメルシュを筆頭に最強の傭兵ギルドと呼ばれ、魔法帝国マギ=エンシアの建国に最も貢献した生粋の武闘派(バトルマニア)集団である。

結成から約千年後の現在、四聖諦は既に脱退し当時のメンバーは全員戦死または寿命で亡くなっているが、十五の支部を持つ帝国最大の傭兵ギルドとして有名。



白亜の翼とは

2年前に発見された無限ダンジョン-《魔王の遺産》の攻略を名目に、マリーをマスターとして結成された冒険者ギルドである。

種族を問わず能力重視で募集しているので常に入団希望者が絶えないのだが…

マスター・マリーは結成直後から姿を見せていないので実際に顔を見た事があるのは最古参の3名のみ。

現在はマスター代理のシャルロットが運営している。



「馬車を用意してあります。隣町なのですぐ着きますよ」


「クリス君、知り合いだから上手くやるのよ」


「りょーかい」



どうやら班長と副班長がついて来るみたいだ。




ミ★ミ★ミ★




ライエリクソン邸前



馬車の乗り心地はイマイチだったので本当に腰か痛くなってしまった。


「ようこそ、マリー様、クリストファー様。」


門の前で待っていたのは初老の男性、モロク=ライエリクソン侯爵本人だった。


「こんにちは。モロクさん。

突然押しかけてごめんなさいね。


ふふ、まさかその姿で出迎えてくれるとは思ってなかったけど」


「うむ。あと草原を少し燃やしてしまった。申し訳ない」


とりあえず謝っとこう作戦である。

ちなみに彼が着ているのは、最初クリス君が着ていた黒い軽鎧だった。


「いえいえ!とんでもない。聞くところによるとガルムを退治して下さったとか…。


立ち話もなんですし、どうぞ中へ」


「うん、じゃあ遠慮なく上がらせてもらおうかな。

ちなみに美味しい紅茶とケーキは出てくるのかしら?」


「って茉莉、少しは遠慮しとけよ!」


とりあえず中へ案内されたので入ってみると、家族全員でお出迎えされた。

モロクとモロク夫妻、息子×2、娘1は私が入った瞬間平伏。


「ちょ、立って下さい。

そんな事されたら困るよ」


「そうそう、こんな小娘に畏まる必要なんてないんだぜ」


「小娘ってなに!このオッサン!」


「わはは、お二人共、お変わりないようで安心いたしましたぞ。

と言っても少し前にお会いしましたね。」


大はしゃぎして飾り付けたと言うには、割とシンプルな客室に通され、ソファに座る。

すぐに紅茶とケーキが運ばれて来たのでなんだか申し訳ない気持ちになった。


「そうね、半年前の千年祭の時、帝国城のパーティーで会った記憶があるわ」


「えぇ、その通りです。


「いや、彼は入るだけの実力を持っていたからな」


お、上手くやった。


「そうそう、魔人の魔力だけじゃなく、元々黒威の翼初期メンバーだったライエリクソン卿、そして十二神将である君の血を引いているんだし実力が無いわけないじゃない?」


「それはそれは…有り難き御言葉。

私は初代様の事をとても誇りに思っています。


この軽鎧も、四聖諦の方々と共に戦った初代様の物なんです」


四聖諦。

メルシュ、マリー、マステマ、クリストファーの四人をまとめてこう呼ばれる。

千年以上の時を生きる、帝国では神に等しき存在だが、他国では存在そのものを疑われていたり、魔王などと蔑称されることもある。


十二神将。

帝国軍の上位階級の内、大将2名、中将4名、少将6名を指す。



「なあライエリクソン卿、ふと思ったんだが…

あの程度のガルムなんぞ、あんたなら楽に倒せたんじゃないのか?」


「ふむ、そうですな…。

確かに50匹程度なら私でもなんとかなるかと。


しかし、クリストファー公なら当然ご存知の事と思われますが現在、魔印騎士団は実戦不足のため、戦力の低下が深刻な問題です。


魔印騎士団の仕事は基本的には帝都や王都の守護なのですが…

今まで千年間、帝都や王都が戦争に巻き込まれた事があるでしょうか?」


「そ、そうか、それで騎士団を地方に向かわせて魔獣退治って事か。

せっかくの実戦の機会を奪ってしまったな…すまない、実はマリーに殴られて記憶が一部飛んでるんだ」


「えー、なによその言い訳。自分の記憶力が悪いだけでしょー」


まぁ、あの量の設定を覚えるのは土台無理な話なのだけど。

魔印騎士のレベルは隊長クラスで200程度。

副隊長だと150くらいで、班長は100、平隊員は50以下が殆どだ。

剣の国ピュリファーなどには騎士団の能力は負け

ている。


その代わり、帝国には魔導師団というものが存在する。

帝国の大地は魔王のギフトの影響で魔力が満ちている。その結果魔力量が多い魔人が生まれやすく、他国に比べて魔導士の数は5倍以上だと言われている。


帝国軍、騎士団、魔導師団

それと多数の傭兵ギルドが加わり、帝国の軍事力は最強最大と言われているのだ。



「では説明いたしましょう。

この島には…いや、五侯爵が治めるそれぞれの島には、魔獣が非常に多く存在しているのが現実なのです。なんせ元は魔王の領地でしたから。


ヘルライナ領、ニドヘグ領、ライエリソン領、ゼクシード領、ミリオーネ領…我々五侯爵家はマギ大陸周囲の島を開発し発展させる事が仕事なのですが、魔獣が多すぎて逆に騎士団が足りない位でして」


「ならば帝国軍を動かすか?」


「いえ、会議の結果、クリストファー公ご本人が、軍を動かす必要はない、騎士団の実力を上げるいい機会だと…」


「あ、あぁ…そう言われてみれば、そんな事言ったような?

しかし魔印騎士団は1800人…帝都、王都の守護でギリな人数だよなぁ。

それに対して帝国軍は陸軍10万と海軍5万、それに空軍1500だったか。」


「帝国軍自体、数が足りてないのよ。

各都市の駐留部隊、国境警備部隊それと派遣部隊でかなり取られてるし…ガルム50頭が相手だと纏まった数が必要になるでしょ」


「その通りです。最近では傭兵ギルドや冒険者ギルドに依頼して退治してもらう事も多いのですが」


「《黒威の翼》は当然として、《宵闇の死地》《アーヴィン旅団》とかは人数多いし依頼が入ってるでしょうね」


「結構金がかかりますし、私としても騎士団に頑張って頂きたいですな。


クリストファー公…

いえ、四聖諦が一人、剣聖クリストファー=アッカーソン殿」


「ん?なんだ?」


「これは初代様の日記に書かれていた事なんですが…《裁きの聖剣》というものを一度だけ、見てみたいのです。」


…その剣は天より降り注ぎ、魔を尽く散らし大地を貫く…

クリス君のギフトの一つだ。

使う魔力量によって威力が変わってくる。


「こんな町中に落としたら大変な事になるぜ?」


そりゃあそうだろう。

いきなり東京タワーサイズの剣が落ちてきたら大パニックだ。


「クリス君、使用魔力を最小限に抑えれば普通に人間にでも使えるサイズの剣になるはずよ」


「お、ならやってみるか!実は使ってみたかったんだよな」




★彡★彡★彡




再びライエリクソン邸前


ライエリクソン一家、馬車の見張り番してた騎士、そして私が見守る中、クリス君が呟く。


「ふう、やるぞ。


…《裁きの剣》!!」


空の遙か彼方に魔法陣が浮かぶ。

眩い光を放ちながら落ちてくる一本の大剣。


ドスッ


「おぉ~、さすが元魔法使い。丁度いいサイズじゃん」


まぁ私から見たら大きすぎて使えないレベルだけど、クリス君くらい身長があれば普通に振れるサイズだった。


「おぉ、これが裁きの剣!

本当に裁きの丘にある物と同じ形をしている…素晴らしい」


マギ大陸侵攻時に魔獣の群れに向かって撃った最初の一手《裁きの聖剣》

千年経っても、まさに東京タワーサイズの剣が今も尚、大地に突き刺さったままだ。

苔がモッサリでかなり風化してはいるが、帝国観光の名所の一つである。



「気に入ったならやるよ。

かなり重いと思うが、それが振れるようになれば普通の剣を持ったときのスピードは段違いだろう。ま、剣術の練習用にでも使ってくれ」


「ほ、本当ですか!?ではこの剣も家宝に…いや、剣術の練習用に、でしたな。息子に振らせてみます」


「あらあら、気前がいいのね。

私にもなんかちょうだい?ちなみに薬指のサイズは…」


「そんなもんねぇよ」



……クリス君のケチ




仕事が忙しい…

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