第三話 そして物語の中へ
第3話 マギ=エンシア帝国
グラン=マルーシェ
私の小説の舞台となる、剣と魔法の異世界…
もう十数年も妄想して創りあげてきた私の世界。
時はグラン暦4665年…魔王ルシファーが封印されてから約千年後の世界。
北の大陸、魔帝国マギ=エンシア中央の魔瀧湖の南側に接する王都クインメルシャタルの大豪邸の一室。
豪奢な天蓋付のベッド
ふかふか絨毯
きらきら宝石箱
湖と王都の絵画
二代目魔王メルシュ=メイリエッタ=エンシア=セカンド
その姉マリー=メイリエッタ=エンシアの部屋だ。
古代血統名は《千変万化の錬金術師》ギフト名は《完全変化》そして《万物創造》の二つだ。
《完全変化》
自身の身体を、自由自在に変化できる。
魔獣にだって王子様にだってなれるのだ。
《万物創造》
魂を持たない物質を自在に操り、その性質、物量さえも改変させる唯一無二のスキル。
石ころから巨大な金塊を作ったりもうなんでもあり。
「ふふ、ふふ、く、く、あはははははははは!!!ついに!ついに来たの!グラン=マルーシェ!!!!」
部屋の壁は艶やかな石のような素材で造られている。
これは超希少鉱石オリハルコンと金属の王様、純金を配合させて造った世界最高の硬度を持つオリハル黒金だ。
ちなみに絨毯を捲れば同じ超希少鉱石ミスリルと純銀を配合させたミスリル銀の床が見える事だろう。
「しかし、ここまでイメージ通りとはさすが666年の魔導書…ね」
机の上には魔導書グラン=マルーシェとライトノベルが12冊置いてあった。
私はこの世界に来たばかり。
でもこの世界の事ならなんでも知っている。
ただし過去だけ。
これからのことは魔導書には書いてない。
未来なんか分かったらつまらないじゃない?
私は宝石箱から腕輪、指輪、首飾り、髪飾りを取り出し身に付けた。
これはそれぞれ曰わくのある装飾品で、設定では私とクリス、あと皇帝メルシュ、大公爵マステマの四人で協力して造った物だ。
★彡★彡★彡
この世界には所謂、特殊固有、つまり世界でその人しか持ってないジョブ、また使えないスキルが存在する。
それが古代血統とギフトだ。
まあ分かりやすく言うと
古代血統=オリジナルジョブ
ギフト=オリジナルスキルって感じだろう。
マギ=エンシア帝国建国前にその特殊固有能力を持った四人を筆頭にした傭兵団があった。
彼らは少数だが最強の傭兵団として有名だったが、裏では異能狩り…所謂魔女狩りという行為をしていた。
最初に狩られたのは封印された初代魔王、そして満身創痍の勇者アキラだ。
魔王の古代血統《光と闇を齎す者》
勇者の古代血統《異世界の勇者》
その二人をメルシュのギフト《魔魂操作》にて使い魔、実験体にする。
その後の研究によってギフトの発動条件を解明。
例えば宝箱を想像してみよう。
その中にはオリジナルスキルという至高の宝が、しかし鍵がかかっている。
研究の結果、その鍵の正体は血と魔力と古代呪文。
人はそれぞれ特有の魔力を持っている。
それはまさに十人十色で赤い魔力もあれば黄色い魔力もある。
古代呪文とはその名の通り、古代語で唱える呪文の事だ。
つまり、ギフトとは古代血統を持つ者の魔力を使用して発動する古代魔法である
そうと分かれば話は早い。
1、最初にクリス君が古代血統を持つ者《古代種》狩って研究所に持ってくる。
2、実験体の血を採取し、私が魔力を多く宿す事ができるミスリル銀と配合。これをミスリル血銀とする。
2、その後メルシュが実験体の魂から古代呪文を読み取り、魔力を多少抜き、ミスリル血銀の中に移す。
3、次にマステマが古代呪文を解析、短縮化する。
4、最後に私がミスリル血銀を装飾品の形に形成し、マステマが作った古代呪文を掘って完成だ。
もっとも実際に古代種本人が使うギフトよりは効果が弱まってしまうのは仕方ないだろう。
例えば魔王の《天界門》と《魔界門》なんてほとんど使えなず、実際に呼べる天使軍と魔王軍は100人程度だった。まあそれでも十分強かったけど。
あと勇者の《千貫矛》と《無傷盾》は発動時間3分とかどこのウルト○マンだよって感じだ。
それでもこれを100年続け、使える形に残したギフトは72種。
古代種は世界からほとんど消え、代わりにアーティファクトとなった。
ーーもっとも、実験体としてはまだ研究所に残っているのだが…
そしてついにマギ大陸侵略。
アーティファクトによって最強無敵、不老不死のスキルを得た四人によって並み居る魔獣を蹴散らし、強力な魔獣はその場で使い魔にし、あっという間にその全土を占領した。
マギ大陸聖域の一つ、魔瀧湖の中央に黒水晶の城を建て南側に王都を造る。
その後1000年かけて周辺の島国を支配し、マギ=エンシア帝国の今がある、という訳だ。
団長のメルシュは皇帝に
参謀長のマステマは大公爵に
剣聖クリスは騎士団長兼帝国軍元帥に
そして私マリーはというと…
皇帝の姉として内親王の地位に就き、王都クインメルシャタルの領主となった。
★彡★彡★彡
「さぁて、まずはクリス君のとこにご挨拶っと。
シエラ!入ってきて!」
魔導書を開き、この屋敷の使用人のリストからこの部屋の前で主人が出てくるのを待つ、1人の執事を呼ぶ。
「マリー殿下、お呼びでしょうか」
おお、設定通り、黒髪黒眼の燕尾服に身を包んだ悪魔で執事が現れた。
ちなみに設定していない人名はランダムで設定されているはずだ。
街などの外観は中世ヨーロッパと設定したので魔導書が判断して創っているのだろう。
ちなみにマギ=エンシアに限っては自分で細部まで設定している。
あとこの世界の歴史とか魔法とかジョブ、スキル等は細かく設定した。
「うん、ちょーっとクリス君のとこ行ってくるから屋敷の事は任せたよ。何か私に用があったらそこの水晶を使って」
部屋の中央にあるテーブルの真ん中に飾ってある水晶、これもアーティファクトの一つである。
どんなに遠く離れた場所にいる人にも声が届くというギフトをアーティファクト化した物だ。
もっとも、これにもやはり制限があり、マギ大陸内にしか届かないのだが。
「畏まりました。それでは朝食の準備が出来ておりますので…」
「あぁ、部屋まで運んできて。ちょっと準備するし」
「畏まりました。ではすぐにお持ち致します」
さぁて着替えよう。
ふと鏡を見ると自分の外見が多少若返っている事に気付く。
ニヤニヤ
「私は永遠の17歳。クリス君びっくりしてくれるかな?うへへ」
ちなみにマリーの能力もチートです。
マリー《千変万化の錬金術師》
クリス《天下無双の聖剣騎士》
メルシュ《魂魄妖魔の葬繰者》
マステマ《空間剥離の魔術師》






