第5章:スライム商会 VS 貴族連合 ~ぷるぷる戦争、勃発!~
「ティアナ様! 王都から“やべーの”が来ました!」
「やべーのって何!? 具体的に言ってノエル!」
「美女ッス!」
「なるほど分からんッ!!」
──そんなやりとりをしていたら、
スライム工房に、音もなく馬車が滑り込んだ。
ドアが開き、現れたのはひとりの令嬢。
深紅のドレス。しなやかな動き。鋭い眼差し。
そして顔面偏差値がティアナとタメ張るレベルの美人。
「初めまして。私、シャルロッテ・カミリア・フラメルと申します。王都で『魔法香水商会』を営んでおります」
「あっ、これは完全に──」
『ライバル令嬢ですね』
「はい、そのとおりです!!」
◆ ◆ ◆
聞けば、彼女はティアナが王都で断罪された際に“ヒロイン陣営の親戚枠”として陰ながら関わっていたらしい。
「私、あのとき、貴女の目が忘れられなかったの。王子を見下ろす、あのスッとした目線。最高だったわ!」
「え、なに、敵? 味方? ファン?」
『3つめの可能性が一番濃厚ですね』
そんなシャルロッテがわざわざ来た理由──それは、
「貴女の“スライムジェル”製品が、私の香水市場を食い荒らしてるのよ!」
「やっぱりライバルじゃん!」
「でも私は、敵対しに来たわけじゃないの。……提案しに来たの。共同ブランドを立ち上げましょう」
「……あれ!? 速くない!? 仲良くなるの速くない!?」
『ティアナ様、令嬢属性持ちは大体そうです。敵→仲間→親友→同居は基本ルートです』
「それ百合の香りがしない!? 大丈夫!?」
◆ ◆ ◆
だが、そこへ割って入る影がひとつ。
「──くだらない。スライムだの香水だの、貴族市場には不要だ」
来た。
「出たよ、テンプレ貴族商会の嫌なヤツ枠!!」
彼の名はギルバート・フォン・ラミレス。
王都で最大手の商会“ラミレス商会”の御曹司。あらゆる商流を牛耳るエリート中のエリート。
「貴女方の製品には確かに新奇性がある。だがそれは“遊び”だ。
市場に必要なのは安定性と格式。スライムなど、底辺の象徴にすぎない」
「……あんた、スライムに謝れよ」
『許しません。処します』
「うちのぷるぷる触ってから言い直してもらおうかァ?」
ティアナの目がギラッと光る。
令嬢モード──完全起動!!
◆ ◆ ◆
かくして、
スライム商会 × 魔法香水商会 × 貴族連合による三つ巴商戦バトルが勃発!
・スライム香水「すべ肌ぷにっとフローラ」
・香水爆弾「恋する桃の香り(スライム付き)」
・ギルバート商会の名ばかり高級品(中身は水)
そして──決戦の場は**王都展示会「第十回 魔導商品コレクション」**へ!!
「勝ったほうが、次の時代の主役ってことでいいわね?」
「いいけど! スライムが主役って、どういう異世界!?」
『我々が、次の香りの波を創るのです』
「なんか格好良いこと言ってるけどスライムだよね!?」
――ついに、
ティアナの“スライム革命”、本格的に世界を巻き込んでいく!!
⸻
【次回予告】
王都展示会、いざ開幕!
貴族たちの目がスライムに奪われ、シャルロッテの香水が爆発し、スリィが堂々とマスコットに!
そして、ティアナ、まさかのファッションショー強制参加!?
次回、「スライムとランウェイ、歩いてみた」――お楽しみに☆