幕間:ヌルっと混浴!? 慰安のスライム温泉大騒動!
「ご褒美が……ほしい……!!」
私は叫んだ。叫ばずにいられなかった。
連日のスライム魔道具開発。
スライム量産体制の整備。
スライムジェルの手詰め、クッションの綿詰め、保湿ローションの瓶詰め。
ぷにぷにぷにぷに詰めて詰めて詰め続けて――私の精神、すでに限界!!
「そんなわけで、今日は全員で慰安旅行ですッ!!」
『予告なしに始まる突発イベント、嫌いじゃないです』
ということでやってきました、村のはずれの秘湯温泉「ユラヌの湯」。
誰もいない天然かけ流し。泉質はスライム肌にも優しい弱アルカリ性。もちろん混浴。(!?)
「えっ、混浴って聞いてない!?」
「俺も聞いてない……!」(ライオネル)
「聞いた気がしますけど、今は黙っておきますね」(ノエル)
「…………任せろ、タオルは二重にした」(メガネ)
『私はすでに入っています』
「おまえの参戦が一番まずいよ!!」
◆ ◆ ◆
──とはいえ、せっかく来たからには入るしかない。
脱衣所でタオルを抱きしめながら、私は覚悟を決めた。
(だ、大丈夫。私、令嬢だったし! 羞恥心? 社交界で捨ててきたし! たぶん!)
そして湯けむりの向こう──
「やっべー美人来た」
「てか肌白ッ!? っていうか出てるッ!!」
「尊ッ!!」
「ちょっと!? みんな見るな!? その目線をなんとかしろッ!!」
『ティアナ様、バスタオルのズレ、片方落ちています』
「いやああああああああああああああああああ!!!」
湯けむり大乱戦。スライムが泡風呂に変化。ノエルが鼻血。メガネがメガネ割れた。ライオネルが無言で沈んでいった。
そして私は気づく──これ、慰安じゃなくて戦場だった。
◆ ◆ ◆
その後、風呂上がりの牛乳(スライム農場産)で一息ついた一同は、縁側でくつろぎタイム。
「……でも、楽しかったな」
『皆さん、笑顔でしたね』
「うん、まあ……変な意味で絆も深まったし……」
……ただ、誰かが小声でこう言った気がする。
「次はぜひ、“二人きり”で来たいな……」
「……だれぇぇぇ!? 言ったの誰!? 手ぇ挙げなさぁい!!」
そして私は、ふと思う。
(あれ……? 私、もしかしてハーレム展開に乗ってないか?)
その横でスリィがドヤ顔(※表情はないが)で言った。
『次回、スライム温泉旅館開業。ティアナ様、女将へ転職です』
「転職しないよ!!」
──こうして、“悪役令嬢とスライムと仲間たちの温泉大騒動”は、
ひとまず無事(?)に終了したのであった。