第2章:イケメン鍛冶師と爆発魔道具!
──それは、洞窟生活に慣れてきたころのこと。
「そろそろ生活圏を広げようと思います」
『ついに外界進出ですか』
「うん、食材のストックも限界だし、そろそろ村に挨拶しておきたいし……なにより──」
私は満面の笑みで、胸を張った。
「魔道具、売りたい!!」
『やはりそれが本音でしたか』
だって! できちゃったんだもん!
ぷるぷる素材のあったか湯たんぽ! ぬめぬめ保湿ジェル! 洗っても崩れないスライムクッション!
これはもう売るしかない。
元・悪役令嬢? 追放? 知ったこっちゃない! 私はいま、“商売人”として目覚めた!
──というわけで、村へ初訪問。
◆ ◆ ◆
「…………」
うわー、見てる見てる……!
明らかに「元・追放されたお嬢様が何しに来た?」って目で見てるー!!
でも負けない。私は堂々とした態度で言った。
「スライム商品、試してみませんか?」
……5秒後。
「なにこのクッションぷにっぷに!?」
「腰痛が治った!? 気のせい!? いやこれ治ってるぞ!?」
「これ、魔道道具じゃなくて癒し道具じゃん!!」
村の婆さまたちに大ウケ。
ティアナ、まさかのシルバーマーケティングで初陣勝利!
『村での販売網、いけそうですね』
「よし、これで次は生産ラインを……あ」
――問題発生。
私、魔道具の素材はあっても「金属加工」ができない。
「鍛冶屋さん……探そっか」
◆ ◆ ◆
そして翌日、出会った。
「鍛冶屋ってあんたか……予想より……」
「でかい……無骨……声が低い……怖っ!」
「……女か?」
「うん! よろしくね! すごいビビってるけど仲良くして!」
彼の名前はライオネル・ストローム。
村一番の腕を持つ鍛冶師で、ちょっと無愛想なツンデレ系(後に判明)。
「これを加工してほしいの。スライム素材を内部に仕込んで、熱伝導率を高めた──」
「……変なやつ」
「褒め言葉と受け取っておく!」
しばらく試作に付き合ってもらったのだが。
「よし、完成したぞ。試運転いくか」
「スイッチオン!!」
──ドカン。
『爆発しました』
「なんで!? これただの湯たんぽなのに!? スライムの何が引火したの!?」
「魔力の流れ、逆だったな」
「ごめん! 私の設計だった!!」
『もはや日常です』
そう、これが“爆発型スライム湯たんぽ(試作品A)”。
後に「魔法災害レベル0.5(かわいい部類)」として記録される逸品である。
◆ ◆ ◆
それから数日。私は鍛冶屋と何度も試作を重ねた。
スライム保冷バッグ(冷えすぎて凍傷)
スライム圧縮ボール(跳ねすぎて民家破壊)
スライムマッサージ器(気持ちよすぎて昇天しかけた)
……まあ、トラブルはあったけど、なぜかライオネルはだんだん無口ながらもニヤけるようになってきた。
そしてある日、彼がぽつりとつぶやいた。
「……おまえ、面白いな」
「それって……惚れた?」
「うるせえ」
『これはフラグですね』
「スリィうるさい」
こうして、鍛冶屋×スライム×元悪役令嬢による、
ときどき爆発系・ぷるぷる魔道具開発チームが誕生したのであった──。