第1章:スライムと作る、はじめての魔道具生活
「ここが私の棲み処です。どうぞ、ご自由におくつろぎください」
……洞窟だった。
なんていうか、思った以上に洞窟だった。湿ってるし、暗いし、スライムの巣って感じが全面に出てる。
「……スリィ、ここに寝てるの?」
『はい、快適ですよ。湿度も温度も一定で、魔力の流れも安定してます』
「……あー、うん、確かにスライム的にはそうかもだけど……人間にはちょっと厳しいかな☆」
私は草をどけてスペースを確保し、ローブを敷いて座り込んだ。
はあ……まさか、貴族の羽根布団から、洞窟の床生活にまでランクダウンするとはね。
『お腹、減ってませんか? キノコくらいなら生えていますが』
「キノコ……ああ、もう、お願いだから変な色してないやつにして……」
その日から、私はスリィと一緒にサバイバル(+ぷるぷる)生活を始めた。
◆ ◆ ◆
──2日目。
「寒い……! 冷気が地面からじわじわくる……!」
夜の洞窟、寒すぎる。ローブだけじゃ耐えきれない!
「スリィ! なんかこう、あったかい素材ないの? ぷるぷるで発熱するやつとか!」
『私の粘膜には保温効果があります。覆って差し上げましょうか?』
「いやそれもう寝袋じゃなくてスライム袋だからッ!」
とはいえ、他に手段もない。仕方なく、スリィに覆われて寝る。
……あったかい……むしろ快適……ぷるぷるして気持ちいい……
なにこのスライム、最高の抱き枕じゃん。
「……やばい、これクセになりそう……」
『癖になってください』
「何この圧!?」
◆ ◆ ◆
──3日目。
スリィとの生活は順調(?)だったが、問題がひとつ。
「暇……! めちゃくちゃ暇……!!」
魔法もロクに使えない。畑もない。やることがない。
「そうだ、魔道具、作ろう!」
前世の趣味、DIYとガジェットいじり。そしてこの世界の魔導知識。組み合わせればきっと何かが生まれるはず!
「まずは、快適スローライフ第一歩──“魔導湯たんぽ”!」
『素材はどうします?』
「スリィのぷるぷる!」
『使い方によっては変態ですね』
「いまさら!? 最初からずっとだよ!?」
そんなこんなで、
ぷるぷる素材の魔導布をベースにした暖房具「スライムヒートパック」が完成。
思いのほか温かく、そしてちょっとヌルヌルした。最高。
◆ ◆ ◆
──数日後。
私は洞窟を拠点に、小規模な「魔道具工房」を立ち上げた。
といっても、道具といえばスリィと、前世の知識と、拾ってきた木材と石ころ。
でも、なんだろう。
「……けっこう楽しいかも、これ」
失ったものはたくさんある。でも、得たものもある。
スライムと暮らして、魔道具作って、スローライフっぽいことして。
「……これ、案外、人生の勝ち組ルートなんじゃない?」
『私は最初から、そう思っていましたよ』
「スリィ、あんたほんと優秀だね……でも、しゃべるたびに面白いからずるいよ!」
こうして、悪役令嬢ティアナの洞窟DIYライフ with スライムは始まった。
──後に世界を揺るがす「スライム産業革命」の幕開けとも知らずに!




